スパイスカレーを牽引する「スパイスカフェ」の新店「ホッパーズ」ではランチで人気のスリランカ定食“ライス&カレー”を販売。モダンスリランカの華麗な世界をご堪能あれ!
お弁当箱の蓋を開ければ色とりどりの“おかず”がずらり。「dancyu祭」に出店するカレー陣のなかで、ビジュアルでも胃袋を掴むのが兜町にある「ホッパーズ」だ。
昨年12月にオープンしたこの店は、押上の名店「スパイスカフェ」の2号店。押上の店は南インド料理をベースにしたカレーで人気を博すが、「ホッパーズ」ではスリランカ料理をテーマに掲げている。
「スリランカ料理は使うスパイスも調理法もシンプル。食材とスパイスを鍋に入れて煮込むだけという料理も多いんです。そのシンプルさのなかでさまざまな味が生み出せるのが面白さ。インド料理とはまた違う魅力がありますね」
こう話すのはオーナーシェフの伊藤一城さん。鰹節に似たモルディブフィッシュをだしに使うなど日本の食文化と共通点もあり、スパイスカレーファンのなかでも人気上昇中だ。
dancyu祭で繰り出されるのは、ランチで人気のスリランカ定食“ライス&カレー”。伊藤さんによれば、ライス&カレーはスリランカの人たちが日常的に口にする、日本でいえば一汁三菜のようなもの。現地では結婚式などハレの日もライス&カレー一辺倒なのだとか。
今回、主役のカレーにはベーシックなチキンをチョイス。シナモン、カルダモン、クローブという甘い香りのスパイスを中心にロースト・トゥナパハ(スリランカのカレーパウダー)で深みを出し、仕上げにはパンダンリーフをフレッシュカレーリーフとともにテンパリングして加えて現地の味と香りが表現されている。
一方、お弁当箱にはスリランカを代表するレンズ豆のカレー"パリップ"、ココナッツ風味のビーツカレー、春菊を使ったサンボル(和え物)、ココナッツでつくるふりかけ"ポルサンボル"、そして豆の揚げ煎餅"パパダン"が盛り込まれる。洗練されていながらも温かみがあり、どこか懐かしさを感じるおいしさは伊藤さんならでは。カレーをかけながら混ぜて食べると味わいが膨らみ、混ぜ方で一口ごとに印象が変わるのも楽しい。現地の人たちがライス&カレーを愛する気持ちがきっとわかるはずだ。
「ホッパーズ」の魅力はライス&カレーだけにとどまらない。ディナーではフレンチの技法も織り交ぜた“モダンスリランカ”がコースで登場。旬の食材を取り入れて、日本の四季もエレガントかつスパイシーに表現されている。
聞けば、伊藤さんは他ジャンルのシェフとも親交を持ち、調理場で研修させてもらうこともしばしば。そこで得た知識や技術を自らの料理に自在に取り入れている。その柔軟性の根底にあるのは、20代で体験した世界一周の旅。3年半で48ヶ国を踏破し、世界各地にスパイスを使った料理があることを知り、「日本には日本のスパイス料理があっていい」と実感したそうだ。
「ホッパーズ」と「スパイスカフェ」の両店で供されるのは、日本人である伊藤さんのフィルターを通したスパイス料理の数々。だからこそ、誰もが魅了されるのだろう。
※当日は内容や盛り付けが変更になる場合もあります。
文:上島寿子 写真:伊藤菜々子、海老原俊之