米をつくるということ。
大自然の中で稲刈り&芸術鑑賞!

大自然の中で稲刈り&芸術鑑賞!

10月5日(土)、6日(日)に開催した「みんなで稲刈り!!!」。

食欲の秋、収穫の秋、芸術の秋。dancyuのwebで結成した稲刈り隊が米処の魚沼へ。稲刈り&芸術鑑賞&秋の味覚&豪華トークショー。内容てんこ盛りだった稲刈りツアー1日目の様子をレポートします。

しっかり、実っているだろうか。

2019年10月5日。dancyuのwebが結成した稲刈り隊は新潟県十日町市へと向かいます。5月に植えたコシヒカリの苗が穂を実らせる時季となり、待ちに待った収穫のときがきたのです!

稲刈り隊には、田植えに参加した顔ぶれもちらほら。心を込めて植えた苗が成長した姿に、期待で胸が高鳴ります。

新潟県十日町市は自然と芸術と温泉の町。3年に一度「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が開催されます。次回は2021年!

当日、新潟に直撃すると思われた台風18号「ミートク」の進行が早まり、天気は台風一過の稲刈り日和。
絶好のコンディションではあるものの、棚田の稲は、前日の強烈な雨風に晒されたそう。果たして稲穂は無事なのだろうか。台風によってすべて攫われてしまっていないだろうか。
ハラハラドキドキ。心持ちは、子を旅に出した親のよう。

すでに収穫を終えている畑を眺めながら、想いを馳せていると、あっという間に我らの棚田がある十日町市に到着!
大地の芸術祭の拠点でもある「農舞台」で稲刈り隊を出迎えたのは、現地スタッフの淺井忠博さん。
「みなさん、遠路はるばるお疲れ様でした。棚田の稲は元気に育っていますよ。昨日の台風で畑がぬかるんではいますが、予定通り米を収穫しましょう!」

棚田と芸術作品が一望できる「農舞台」で淺井さんの説明を受けます。
腹が減っては稲刈りはできぬ!十日町の食材を使った腕利きシェフの料理に、まずは舌鼓。
天気は絶好の稲刈り日和!飯を食った後は体を動かすぞ!
レッツ稲刈り!勇足で田んぼに向かいます!

稲刈りの前に「越後まつだい里山食堂」のビュッフェでエネルギーチャージした面々は、大いに気を吐きながら、棚田へ向かいます!
坂道を登り棚田がある方角を見下ろすと、風に揺られる稲が一面に咲き誇り、黄金色に輝く田んぼが目に入ります。
あぁ。よかった。淺井さんの言葉通り、稲は力強く元気に育ってくれていたようです。

米づくり名人の小林昇二さん。藤原智美さんのルポルタージュ「米をつくるということ」の読者たちからは「実際に会えた!」と感嘆の声が。

棚田で稲刈り隊を待っていたのは、苗が育つまでの過程を藤原智美さんが綴った「米をつくるということ。」でお馴染み、米づくり名人の小林昇二さんと現地スタッフの方々。
稲の刈り方と、縛り方を実演して見せてくれます。
「鎌は稲の根本に当てて、力強く手前に引く」
「刈り取ってまとめたら、乾燥させた藁で根本を縛る」
「しっかり縛らないと、脱穀するときに米の量が減ってしまうので、結び目は硬くしましょう」
名人たちの流れるような稲捌きに、稲刈り隊は目を丸くします。
「稲を結ぶ動きが流れるようだ!」

「無駄がなくてかっこいい!!」
「むずかしそう、できるかしら」
一抹の不安を抱きながらも、名人やスタッフに手順を教わった人から、ひとり、またひとりと田んぼに足を踏み入れて行きます。いよいよ稲刈りのスタートです!

刈り取ったものを縛るための藁を腰に差し、いざ稲刈り!
田植えから稲刈りまで、実際に米づくりを体験した芥川賞作家の藤原智美さん。
流れるようにはいかないけれど、徐々にコツを得てきた稲刈り隊。
おいしい米になることを祈りながら、せっせと運びます。
名人たちの知恵を借りて、さらにスピードアップ!
稲を逆さに干して乾かしたら、脱穀して米のでき上がりです!
二日目を控えていますが、上々の滑り出しに上機嫌!はい、チーズ!

刈り始めこそ鎌や稲の扱いに手こずっていた稲刈り隊でしたが、慣れてきた人が隣の人にコツを伝えては、じわじわと稲刈りのスピードを上げてゆきました。
あっという間に初日分の稲刈りを終え、気持ちの良い疲労感と達成感を味わいます。大粒の汗を垂らしながら清々しい笑顔でガッツポーズ!

まだまだ続く十日町の旅。

メインイベントである稲刈りを終えた後は、バスで15分ほど走った松之山にある天然温泉「ナステビュウ」で、汗と土にまみれた体を癒します。
道中、林や畑の中にある農夫を模したパネルや鉄骨でつくられた現代アートのモニュメントを鑑賞。新潟県十日町市は自然の中に現代アートが点在する「大地の芸術祭」の舞台でもあるのです。
中でも稲刈り隊の期待が寄せられていたのは、今回の稲刈りツアーのために特別に公開してもらったクリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマンの「最後の教室」。廃校になった小学校をつくり変えたアート作品です。
バスが「最後の教室」に近づくにつれて、不思議とあたりが薄暗くなってきました。

「最後の教室」に入ると、体育館の床一面に敷かれた牧草と無数の扇風機が……。
ボルタンスキーの作品は“人間の不在”がテーマ。
同じ建物内にある「影の劇場―愉快なゆうれい達―」も鑑賞。

たくさんの芸術作品を鑑賞した一行は、今晩の宿になる「三省ハウス」にやってきました。
荷物を運び込もうとして、玄関で目にしたのは「三省小学校」という看板。そう。今晩の宿も「最後の教室」と同じく、もとは廃校だったアート作品なのです。

「最後の教室」を鑑賞して、心がざわついている一行はドキドキしながら宿へと入ってゆきます。

昔ながらの木でつくられた看板。廃校と聞くと、ちょっぴり腰が引けます。
予想とは裏腹に、清潔感に溢れ明るい印象の内装。小学校の雰囲気が残り、放課後の記憶が蘇ります。
待ちきれず、晩ごはんの前に新潟限定のビールで乾杯!
昼食に続き、地元の食材を使った献立。新米です!
「三省小学校」の卒業生でもある相澤俊子さんが腕をふるってくれました。
土曜日の午前中は学校だった子どもたちも合流。明日の稲刈りが楽しみです!
最後は藤原智美さんと小林昇二さんのトークショー。実は同い年のふたりが大放談。

「最後の教室」とは違い、明るく見通しの良い「三省ハウス」の雰囲気に胸を撫で下ろしながら、明日の稲刈りへの想いを胸に、眠りについたのでした。


――つづく。

写真:阪本勇