2017年dancyu8月号「美味東京」特集に掲載された鮨屋「後楽寿司 やす秀(やすみつ)」が店を出すのは、B1の料理ブース。いま東京で最も勢いのある鮨屋のばらちらしが味わえます!
路地裏にひっそり佇む隠れ家的な一軒。腕をふるうのは、父の店を継ぎ、町の鮨屋から本格的な江戸前の鮨屋へと昇華させた二代目の綿貫安秀さん。2017年に店を移転してから、ますます力量をあげたと評判の高い、いまノリにのった鮨職人だ。
綿貫さんの口グセは「常に挑戦」。移転後は、炊き加減の調整が難しい羽釜に変え、試行錯誤の末、理想的な米を炊き上げることに成功。酢飯の味をあげた。
素材選びにも労を惜しまない。近頃は産地開拓を積極的に行い、日本一の鮨ダネを求めて、各地を訪問。青森県は大間のまぐろ、鳥取県の松葉ガニ、富山県のホタルイカ。佐賀県有明海では海苔漁にも同行し、船上でつみたての生海苔を味わったことも。
おまかせは、刺身からはじまり、つまみ、握り、〆めの巻き物まで25~30品。タネの存在感が引き立つよう海苔ではさんだウニ、口のなかに鮪の大群が押し寄せてくるような鉄火巻きなど、ここでしか楽しめない力作揃いだ。冷たいつまみのあとには温かいもの、脂っぽいタネのあとはさっぱりとした握りを。味の緩急をつけながら提供してくれるので、最後のひと口まで大いに満足できる。粋な鮨店だ。
「値段以上のものを提供したい」という綿貫さんが全身全霊を注いでつくるばらちらしは、豪華絢爛。丸ごと一尾の車海老を筆頭に、爽やかな香りのづけ鮪、ふっくら煮上げた肉厚の穴子に、酢〆の小肌。江戸前の仕事を施した、驚くほど多彩なタネが盛り込まれている。甘辛くてやわらかなかんぴょう、シャキッと小気味よい酢蓮の存在も脇役とは思えぬ存在感を放ち、ひと口ごとに「うまいっ!」と叫ばずにはいられない。
dancyu祭で「やす秀」渾身のばらちらしを、ぜひ味わっていただきたい。
文:安井洋子 写真:木村心保