
暑いからこそ、パンチの利いたものが食べたくなる! 発売中の「dancyu」夏号では、旨くて辛くて香りがよくて、思わずお腹が鳴るような肉たっぷりの中華を特集しています。今回はその中から、マンゴーやベリーがゴロゴロ入った、フレッシュな甘酸っぱさが弾ける酢豚のレシピを紹介します。
夏こそ肉を食べて元気になりたい。ジューシーで、食べごたえがあって、暑くても食欲をかき立てるような肉がいい。そんな願いを叶えてくれるのが、神田「旬彩china 口水(こうすい)」の酢豚だ。
箸が進む秘訣は、ベリーの爽やかな香り。湯気とともに華やかな香気がふわっと立ち上がり、一気に心を掴まれる。酢豚とベリー。一見、意外な組み合わせだが、ブルーベリー、ラズベリー、いちごといった果物のフレッシュな甘酢っぱさと、芳醇な中国黒酢のまろやかな酸味が見事に重なる。そこへマンゴーの甘味と黒糖のふくよかさが加わると、酸っぱさがぐっと上品にまとまるのだ。
カリッと揚げた大ぶりの豚肉は、中はしっとりと柔らか。しかも、油で揚げているのに、不思議と重くない。
店主の堤晃さんにつくり方を聞くと、材料も工程もシンプルながら、実はとても緻密においしさを設計していた。「豚肉の部位はロースを使い、さっぱりさせます。また、胡麻油は豚肉の下味としてほんの少し入れるだけ。揚げるときも高温でさっと仕上げることで、油っこさを抑えています」とのこと。揚げ時間が短くてもこんがりときつね色に仕上がるのは、豚肉の下味に醤油を使っているからだ。

酢豚にベリーを使い始めたのは、「パイナップルよりももっと合う果物があるのでは?」と思ったから。一度冷凍させることでしんなりするので、ソースと一体化し、豚肉によくからむ。
そして、もう一つのポイントはソースにカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインを使うこと。「ボディがしっかりとしたカベルネは、風味が豊かな中国黒酢と相性がいい。他のぶどう品種では酸がきれいに出ずに、中国黒酢に負けてしまうのです」
実は堤さんは大のワイン好き。この酢豚も、白米ではなくワインとの相性を意識してレシピを考えた。「合わせる酒は、もちろんカベルネ・ソーヴィニヨンの赤ワインが一番お薦めですが、暑い日はロゼのスパークリングもいいですね」
そんな堤さんが営む「旬彩china 口水」は本格中華をカジュアルに楽しめる酒場。店の雰囲気も、価格帯も親しみやすさがありながら、味は一流だ。というのも、堤さんは生まれも育ちも横浜中華街。祖母、父ともに料理人で、自身も「ホテルオークラ」で26年勤めた経歴を持つ。中華料理の伝統を踏まえつつ、上品さと軽やかさを兼ね備えているのが魅力なのだ。
| 豚ロース肉 | 100g(とんかつ用) |
|---|---|
| ブルーベリー、ラズベリー、いちご、マンゴーなどの果物 | 80g(ブルーベリーとラズベリーはそのまま冷凍する。いちごはブルーベリーと同程度の大きさに、マンゴーは一口大に切って、それぞれ冷凍しておく) |
| 片栗粉 | 適量 |
| 水溶き片栗粉 | 大さじ1(水3、片栗粉1) |
| 揚げ油 | 適量(サラダ油) |
| A | |
| ・ 溶き卵 | 小さじ1 |
| ・ 醤油 | 小さじ1/3 |
| ・ 胡麻油 | 小さじ1/4 |
| B | |
| ・ 中国黒酢 | 40g |
| ・ 赤ワイン | 30g(カベルネ・ソーヴィニヨン) |
| ・ 黒糖 | 30g(粉末) |
| ・ 醤油 | 5g |
解凍に時間のかかるマンゴーは冷凍庫から出しておく。Aをボウルに入れてよく混ぜ、一口大に切った豚肉を加えてもみ込む。全体になじんだら片栗粉を入れ、満遍なくまぶす。


Bを耐熱容器に入れてよく混ぜ、電子レンジ(500W)で1分30秒加熱する。ふつふつと沸いてから10秒くらい煮詰めるイメージで、加熱時間は適宜調整する。

200℃に熱した揚げ油に豚肉を入れ、くっつかないように菜箸などで動かしながら、強火で1分30秒ほど揚げる。表面が色づきカリッとしたら取り出す。


鍋に2を入れて強火にかけて沸かす。ベリー系の果物を冷凍庫から出し、マンゴーとともに鍋に入れ、全体が混ぜ合わさったら中火にし、鍋を揺すりながら水溶き片栗粉を少量ずつ加える(ベリー系の果物は火にかけるとすぐに溶けてしまうので、使う直前に冷凍庫から出す)。


4に豚肉を入れ、ソースをからめながら煮詰め、とろみが出て好みの硬さになったら火を止めて器に盛る。


1976年、神奈川県生まれ。高校卒業後、「ホテルオークラ」に就職。27歳で「ホテルオークラ新潟」副料理長、40歳で「オークラアクトシティホテル浜松」料理長に就任。2022年、独立。

文:吉田彩乃 撮影:福尾美雪