料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。今回のお題も、すぐに鮮度が落ちる“もやし”。沖縄料理のチャンプルーにすれば、あっという間に完食!
安くておいしいのに、どうしても傷みやすさがネックになってしまう“もやし”。前回は、そんなもやしを日もちさせるために、「買ってきたらすぐ袋から出して、水に浸して冷蔵保存する」というワザを教えてくれた尾身さん。実はもうひとつ、おいしく食べきるために心がけていることがあるのだという。
「時間に余裕があるときは、もやしからひょろっと伸びているひげ根をあらかじめ取っておいて、いつでも使えるように水に浸して保存するのがおすすめです。中国料理ではひげ根を取ったもやしは”銀芽”と呼ばれ、ひと手間かけることで価値が倍増するんですよ!」
そのままでも食べられないわけではないけれど、ひげ根をそのままにしておくと口あたりが悪く、ややくさみも感じられる。また、ひげ根には水分がつきやすいので、取っておくことで炒め物が水っぽくなるのを防ぐのだという。
実は、尾身さんがひげ根にこだわる理由は、まだほかにも。
「私が小学生だったころにお手伝いをしていると、母からよく言われたんですよ。『もやしの根っこを旦那さんに食べさせるようじゃ、いいお嫁さんにはなれないよ』って。そういう時代だったんですね。いいお嫁さんになれたかどうかはわからないけど……(苦笑)」
そんな懐かしい思い出について話しながら、尾身さんが今回つくってくれたのは、沖縄料理の“マーミナーチャンプルー”だ。はて、マーミナーとは……!?
沖縄好きならすぐにピンときたであろうこの料理名。“マーミナー”とは、沖縄の言葉で“もやし”のこと。すなわち、“マーミナーチャンプルー”とは、もやしのチャンプルーなのだ。
おなじみの“ゴーヤーチャンプルー”のように、豆腐が入るのがポイント。尾身さんは、沖縄ならではの水分が少ない島豆腐のかわりに、今回は厚揚げを使うことで、水っぽくならないように仕上げる。そして、なんといっても、もやしのシャキシャキ感こそが要。実は冷蔵庫に保存するときに、もやしを水に浸しておく効果も大きいのだという。
「水に浸しておくと、もやしがピンとして元気でしょう?鮮度を保つだけでなく、炒めてもシャキシャキ。食感もよく仕上がるんです」
できあがったチャンプルーを食べてみると、厚揚げはカリッとこうばしく、もやしはシャキシャキ、卵はふんわりの三重奏!おかずになるのはもちろん、お酒に合わせてもいい。またしても、もやし1袋がすぐになくなってしまいそうだ。
「もやしが真価を発揮する“マーミナーチャンプルー”。ぜひ、定番にしてくださいね!」
もやし | 1袋(200g) |
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ベーコン | 30g(5~6mm幅の細切り) |
厚揚げ | 1/2丁 |
溶き卵 | 2個分 |
長ねぎ | 50g(斜め薄切り) |
かつお節 | 適量 |
塩 | 2つまみ |
黒胡椒 | 2つまみ |
醤油 | 小さじ1/2 |
にんにく | 大さじ1/2(粗みじん切り) |
サラダ油 | 小さじ1と大さじ1 |
厚揚げはザルにのせて熱湯をかけ、油抜きしてから8等分する。フライパンにサラダ油小さじ1をひいて中火にかけ、厚揚げを並べる。色づくまで返しながら焼いたら、いったん取り出しておく。
同じフライパンにサラダ油大さじ1をひいて再び中火にかけ、にんにくを入れて炒める。香りが出たらベーコンを入れて炒め、脂が出たところに長ねぎを加えて炒める。
長ねぎに油がまわったら、もやしを加えて炒める。もやしにも油がまわったら、塩、黒胡椒をふってサッと炒める。さらに、厚揚げを戻し入れて炒め合わせ、醤油をまわし入れる。
溶き卵を加えて、大きく混ぜながら炒める。卵に火が通ったら、器に盛り、かつお節をのせて出来上がり。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之