肉はトロトロくずれるやわらかさ。ひと手間の積み重ねで、極上の深い味になるんです!料理研究家の坂田阿希子さんに、つくってワクワクするド迫力のビーフカレーを教えてもらいました。
「やっぱり、牛が一番好き!」と目をきらきら輝かせて力強く語るのは、料理研究家の坂田阿希子さん。自他ともに認める肉好きで、特に牛肉料理にはひとかたならぬ愛と情熱を傾けてきた。牛肉の魅力は、それぞれに特性をもつ部位の豊富さと華やかでダイナミックなごちそう感、そして、食べた後の満足感。坂田さんご自慢の四大ビーフカレーにはその魅力が満開だ。
なかでも「一押し!」というのが、すね肉を使った王道のビーフカレー。すね肉は焼きつけず、しっかりゆでてからカレーソースで煮てなじませる。焼かないので、食感はホロホロのトロトロ。ごろっとした塊なのに、口に入れるととことんやわらかい。すね肉の濃厚なゆで汁とラードで玉ねぎをアメ色までじっくり炒めてつくるカレーベースが、旨味の大黒柱。仕上げに加えるカラメルが風味を深める。時間と手間は少々かかるが、なんのその。完成したとき、食べたときの充足感は格別だ!
「牛肉のカレーは欧風がぴったり。ちょっとよそ行きで、昭和の洋食屋さんのイメージですね」と坂田さん。シルキーなカレーソースで、サクサクの揚げ衣とレア状態のやわらかなヒレ肉が堪能できるビフカツカレー、すじ肉ならではの濃厚な旨味ととろける食感がデミ風カレーソースと好相性の牛すじカレー、牛脂のミルキーな風味が凝縮したドライカレーと、ほかの三種もいずれ劣らぬ迫力満点のごちそうカレー。ビーフカレーをつくる歓びと食べる幸福感をしっかりお楽しみあれ!
焼かずに煮た牛肉はトロトロにやわらかく、カレーソースとのなじみが抜群。カラメルで香ばしさとおいしい色を演出。お好みで福神漬けなどを添えてどうぞ。
牛すね肉 | 1kg(煮込み用) |
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水 | 2L |
★ カレーベース | |
・ 玉ねぎ | 2個 |
・ にんにく | 2片 |
・ 生姜 | 1片(大) |
・ ラード | 80g |
りんご | 1/2個 |
にんじん | 1本 |
トマト | 1個 |
マッシュルーム | 10〜12個 |
赤唐辛子 | 2本 |
カレー粉 | 大さじ4 |
小麦粉 | 30g(大さじ3弱) |
すね肉のゆで汁 | 約5カップ |
バター | 大さじ1 |
★ カラメル | |
・ グラニュー糖 | 40g(大さじ3強) |
・ 水 | 少々 |
塩 | 小さじ2〜大さじ1 |
黒胡椒 | 少々 |
ご飯 | 適量(温かいもの) |
牛すね肉は塊のまま、分量の水とともに圧力鍋に入れ、蓋をして強火にかける。煮立ったら弱火で20分間加圧して火を止め、自然放置で冷ます。普通の鍋を使う場合は、牛肉と2.5~3Lの水を入れて煮立ったら、アクを取りながら弱火で1時間半ほど煮る。途中煮詰まってきたらそのつど肉がかぶるくらいまで水を足す。
玉ねぎは薄切りにする。にんにく、生姜はみじん切りにする。赤唐辛子はへたを除いて半分にちぎる。りんごは皮をむいてすりおろす。にんじんはすりおろす。トマトは湯むきして種を除き、乱切りにする。マッシュルームは汚れがついていたら刷毛などではらい、幅5mmの薄切りにする。
別鍋にラードを入れ、中火にかけて溶かし、にんにくと生姜を加えて揚げるように炒める。
にんにくと生姜が薄く色づいて香りが立ってきたら、玉ねぎを加えて強火にし、じっくりと濃いアメ色になるまで20~30分炒める。
中火にし、赤唐辛子、カレー粉、小麦粉を順に加え、底からよく混ぜながら炒める。
粉っぽさがなくなり、香りが立ってきたら、①のすね肉のゆで汁5カップを少しずつ加えながら⑤を溶きのばす。
りんご、にんじん、トマトを加え、トマトが煮くずれてなじむまで約10分煮る。
①のすね肉をバットにとり、手で大きめにほぐす。
⑦に⑧のすね肉を加え、蓋をして約30分煮込む。焦げつきやすいので、ときどき鍋底から混ぜ、煮詰まりすぎたら、すね肉のゆで汁を適宜加える。塩、黒胡椒を味をみながら加える。
フライパンを中火にかけてバターを溶かし、マッシュルームをサッと炒め、⑨に加える。
鍋かフライパンにグラニュー糖と水を入れて中火にかける。鍋を揺すりながらカラメル状になるまで焦がし、⑩に加え、溶かし込みながら混ぜる。再度煮立ったら、塩で味をととのえる。
食べる際はご飯を器に盛り、⑪をかける。
フランス菓子店やフランス料理店での経験を重ねたのち、料理研究家として独立。2019年に東京・代官山に「洋食KUCHIBUE」をオープンし、オーナーシェフとして厨房で腕をふるう。同店で開催する料理教室も人気。『温かいからおいしいお菓子』『おやつ教本』などお菓子部門の著書も多数。
※この記事は『技あり!dancyu カレー』に掲載したものです。
文:遠藤綾子 写真:原 ヒデトシ