カメラマンの岡本 寿さんのひと皿は、お母さんがつくってくれた“白菜の煮物”です。特別なときに食べるハレの料理でもなく、いつもの普段の食事でもなく、ただ美味しいとか、好きだとか、ということでもなく、常に身近にあって食べ続けたいもの。人生や思い出と、いつも、いつでも結びついている。そんな、一生食べ続けたい「ひと皿」を食いしん坊に聞きました。
うちの母は、大阪天満の天神橋商店街の生まれで関東炊き屋やレストランといった水商売の中育ちました。そんな母のつくる料理はいつも美味しかったのを憶えています。
子供の頃、時折出てくるハンバーグやスパゲティーのような洋食がやはり大好きでしたが、それは特別な時、普段は魚とひじきやおからなどの一品と味噌汁といった具合で、味はいいのですが出てくると少し「がっかり」したものです。
しかし、そんな和食の中でも例外的に好きだったのが白菜の煮物でした。
薄味で優しくパンチはないのですが、それだけは別格でした。
大人になり自ら料理をするようになってからのある日、白菜の煮物をつくってみました。
母は白菜とうす揚げでつくっていたかと思いますが、私は若干アレンジして白菜と豚肉でつくりました。白菜を豚肉と出汁、醤油、みりんを入れて火にかけ、後はほったらかしで15分、すごく簡単なんです。
具材は少し異なりますが、亡き母を思い出す、優しく体にしみる味がおおよそ再現できました。
それ以来家族にも人気があり、いつしか欠かせない料理になりました。これからもずっとつくっていくつもりです。
というわけで私の一生食べ続けたい「ひと皿」は、母の味のする白菜の煮物です。
白菜 | 1/4個 |
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豚バラ肉 | 200g(薄切り) |
生姜 | 少々 |
★ 煮汁 | |
・ だし汁 | 600ml |
・ 醤油 | 大さじ4 |
・ みりん | 大さじ2 |
鍋に煮汁の材料を全ていれ、火にかける。煮立ったら火を止める。
白菜を切り、茎から順に豚肉と交互になるように①に重ね入れる。
生姜をみじん切りにし、②の上の方に散りばめる。
鍋に蓋をして、15分ほど煮込めば出来上がり。
文・写真:岡本 寿