料理家・フードコーディネーターの尾身奈美枝さんが毎回、余った食材をおいしく食べきるレシピを提案します。冬のごちそうといえば“すき焼き”。翌日まで楽しむワザを伝授します!
新年会などで人が集まることが多いこの季節。そんなときは、冬野菜がおいしいうちに楽しみたい“すき焼き”の出番!実は尾身家のすき焼き事情はちょっと異なるようで……。
「うちの夫、私が仕事で留守にしているときによく“ひとりすき焼き”をやってるんですよ。でも、いつもお肉も野菜も余らせてます。みなさんの家でも、ついたくさんつくりすぎて、食べきれずに残ってしまうことが多いんじゃないかしら」
そう、悩みのタネは、鍋の中でクタクタに煮込まれた具材たち。白かった白菜も焼き豆腐も、いつの間にか濃い茶色に!特に割り下で煮る関東風のすき焼きの場合、煮詰まってすっかり味が濃くなって、そのまま食べるとちょっとイマイチ。
「残った具材の中にうどんを入れてシメを楽しむのが定番だと思うんですが、もうお腹がいっぱい!っていうことも多いですよね。そんなときは無理せずに、翌日までとっておいてください。牛肉の旨味がしっかりしみて茶色くなっていれば、それこそ“シメたもの”です(笑)」
残り物には福がある!?この茶色く煮込まれたすき焼きを、尾身さんはどんな“ロサない”料理に生まれ変わらせるのか……。
尾身さんがつくってくれたのは“石焼ビビンパ”。しっかり味がしみたすき焼きとご飯を混ぜて、ナムルとキムチ、卵を彩りよくトッピング。残り物のすき焼きからは想像もつかない、華やかで見栄えのする一品の完成だ。
「旨味たっぷりのすき焼きの煮汁が、調味料としていい仕事をしてくれるんです。しかも、熱したすき焼き鍋が石焼ビビンパの器の代わりになって、カリカリのお焦げがおいしく出来上がります。春菊や長ねぎも冷蔵庫に余っていると思うので、それもナムルにしてトッピングしちゃいましょう!」
このビビンパ、すき焼きで残った材料を徹底的に使いきれることに感動!シャキシャキのナムルやキムチ、カリカリに焼けたご飯、甘辛い牛肉やしいたけなどのハーモニーもまた、ベストバランス。ぜひ、翌日の定番レシピにしてほしい!
残ったすき焼きの具材 | 適量(肉は必ず加え、しいたけは薄切りにする) |
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残ったすき焼きの煮汁 | 50ml |
キムチ | 適量 |
生卵 | 1個 |
温かいごはん | 400g |
胡麻油 | 大さじ1 |
★ にんじんナムル | |
・ にんじん | 50g(4~5cm長さの細切り) |
・ 塩 | 1~2つまみ |
・ 白こしょう | 少々 |
・ おろしにんにく | 少々 |
・ 胡麻油 | 小さじ1 |
★ 長ねぎナムル | |
・ 長ねぎ | 40g(縦半分に切って斜め薄切り、水にさらす) |
・ 塩 | 1~2つまみ |
・ 白こしょう | 少々 |
・ おろしにんにく | 少々 |
・ 胡麻油 | 大さじ1/2 |
★ 春菊ナムル | |
・ 春菊 | 40g(葉の部分を4cm長さに切る) |
・ 塩 | 1~2つまみ |
・ 白こしょう | 少々 |
・ おろしにんにく | 少々 |
・ 胡麻油 | 小さじ1 |
にんじんは電子レンジ(500W)で30秒ほど加熱し、調味料で和える。長ねぎは水気をしっかりきり、調味料で和える。春菊も調味料で和える。
すき焼き鍋に胡麻油適量(分量外)をひき、中火にかける。温まったらごはん、残ったすき焼きの具材を入れて混ぜ(豆腐はくずれてもOK)、すき焼きの煮汁をまわしかける。
ごはんがほぐれてすき焼きの具材と混ざったら均一にならし、木ベラで鍋肌に押し当てて焼きつける。ほどよく焼きつけたら混ぜ、再び焼きつける。
全体に水分がとんで味がなじんだら、胡麻油をまわしかけて、お焦げができるように再び焼きつける。
ごはんが香ばしく焼けたら火を止め、ナムル、キムチ、生卵をのせ、仕上げにもすき焼きの煮汁大さじ1~2(分量外)をかける。
すき焼き鍋が熱いうちに食卓に運び、全体をよく混ぜて、鍋の熱で卵に火を通してから食べる。
料理家・フードコーディネーターとして、テレビ番組を中心に、新聞・雑誌など様々なメディアに出演。料理番組の金字塔『料理の鉄人』の裏方を務め、「フードコーディネーター」 という職種を世に広め、定着させた先駆け的存在でもある。
「きょうの料理」 (NHK)「あさイチ」(NHK) などの番組に多数出演。“エコ”をテーマとした新しいレシピ提案を発信し続けている。
文:大沼聡子 撮影:海老原俊之