自他ともに認めるラーメンマニアかつ、レコード番長の異名を持つ人気DJ須永辰緒さんが、ラーメンレシピとともに、そこに込めたテーマや思いをもとに組んだ音楽のプレイリストをご紹介する連載「須永辰緒のMUSIC&RAMEN」。第二回は「澄み切った清々しさ」をテーマに、透明感溢れる清らかな一杯をご紹介します。
今回作るラーメンは限りなく透明に近い透明を目指します。元ネタは例によってラーメン漫画ですが、レシピは無いので推察で作ります。メインはトマトの搾り汁です。
かつてスペインにエル・ブジという、世界一予約の取れないレストランがありましたがそこで供された数多くのイノベーティブ創作料理の中に「透明なトマトのエスプーマ」がありました。
さて唐突に話は日本酒に変わります。
日本酒の一番搾りとも言われる「あらばしり」をご存知でしょうか?工程により「あらばしり」「中取り」「責め」と分かれています。文字面だけを見ると何かのプレイみたいですがそれは忘れてもらうとして、その「あらばしり」は上槽の過程で圧力をかけずに醪(もろみ)自身の重さで自然と流れ出た酒のこと。(以上ネット文献参照)
その要領でトマトを醪に見立てると辛抱強く丸一日かけポタポタと貯めた絞り汁は透明になります。
ここでエル・ブジの件に戻りましたね?そうやって長い時間かけて抽出した透明なトマトジュースは驚くほどフレッシュで旨味が凝縮しています。
はい、この時点で優勝確定!と言える美味さです。
トマトの旨味はグルタミン酸です。本来は加熱した方がより旨味が際立つようですが、フレッシュなグルタミン酸のジュースをキンキンに冷やすという贅沢を採用することで、より味の澄み切ったラーメンが出来上がりました。
そこに寄りそう今回の選曲のテーマは「秋冷のロマンス考」としました。
世界同時進行で温故知新を踏まえつつ現代的解釈を加えたネオソウルや新世代のジャズアラウンドが人気です。季節柄ということで雲が高く澄み切った秋によく似合うアナログでアコースティックな演奏やピュアなボーカルもの、加えて人の温もりや繊細さをプラスします。こういう並びで聴くジェームス・テイラーも新鮮。人恋しい季節になりました。
※プレイリストの再生にはSpotifyのアカウントが必要です。
中華麺 | 2玉(中細麺) |
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★ だし | |
・ 水 | 4リットル |
・ 桜エビ煮干し | 5g |
・ 干し椎茸 | 5g |
・ 昆布 | 合わせて10g(利尻昆布、真昆布) |
・ 鰹厚削り節 | 50g |
・ 混合節 | 25g |
・ 干し貝柱 | 10g |
・ アゴ出汁 | 2パック(追い出汁) |
唐辛子 | 2本 |
★ トマトのしぼり汁 | (つくりやすい分量) |
・ トマト | 2個 |
★ 醤油だれ | (つくりやすい分量) |
・ 白醤油 | 500cc |
・ みりん | 100cc |
★ 白玉 | (つくりやすい分量) |
・ トマトのしぼり汁 | 適量 |
・ 白玉粉 | 適量 |
・ あおさ | 適量 |
味玉 | 2個 |
三つ葉 | 適量 |
すだち | 適量 |
水4リットルにだしの材料を入れ、前日から一晩水出ししておきストックとする。つくる際にはそのストックから適量(2人分を作る場合600cc〜700cc)をつかう。
トマトをブレンダーで撹拌し、ボウルの上にザル、布巾をのせその上に注ぐ。圧力を加えず、トマト自身の重みで滴る汁をためる。
醤油だれの材料を混ぜ合わせる。
白玉の材料を練り合わせ、楕円形に成形する。鍋に湯を沸かし、成形した白玉を入れる。1分ほどゆで、白玉が浮き上がってきたら、氷水に移し締める。
盛る器を冷蔵庫に入れ、十分に冷やしておく。
麺を表示通りの時間で茹で、すぐに冷水で締める。
③(40cc)を⑤で冷やしておいた器に入れ、①(300cc)と②(100cc)の順に加える。⑥の麺を入れて、④、三つ葉、味玉、すだちをトッピングして完成。
文:須永辰緒 写真:竹之内祐幸