サラダは野菜だけでないのです!辻さんが悶絶したサラダをご紹介。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
諸説ありますが、Saladという英語、仏語にするとsalade(サラド)となる。イタリア語のsalare(サラーレ)は「塩をかける」という意味の動詞だけれど、ローマ人は、オリーブや大根などの野菜を塩漬けや、油と酢などで保存していた。それがフランスに渡ってsaladeになった?
なんと、1335年のことである。日本では「15世紀にミラノからフランスにサラダが伝播された」とする説が定着しているが、フランスの文献によるともっと古く、14世紀にはフランス人はサラダを食べていたことになる。もっとも、15世紀初頭になって、いわゆる、現代の野菜サラダが一般化した。ものには歴史がある。
サラダは、塩をかけて野菜を食べたら美味しかったことから、イタリア人が「サラーレ!」と驚いて「サラダ」という料理が生まれたのじゃないか、とぼくはいつも納得しながら、サラダをバクバク頬張っている。
ということで、サラダの素材が野菜だけではないことは、語源からも理解することができた。卵サラダ、ポテトサラダ、タラマサラダ、タイ風牛肉サラダ、フルーツサラダなど、野菜以外の素材でつくられたものもサラダと呼ばれている。無理やり、ぼくは、この連載の守備範囲を広げようとしているのであろうか?植野編集長からお叱りを受けそうだが、サラダの語源も分かったことだし、多少、サラダとの向き合い方が変わり、食に対する私たちの視野も広がるのではないか。
ということで、あまりにサラダと見た目が違うので驚き、悶絶したサラダがポルトガルにある。ぼくはこれまでに数回、ポルトガルを旅行した。10年以上前、欧州最西端のロカ岬にたどり着いた時、その辺は有名なシーフードレストランが林立する観光地域であったが、どこのレストランにも必ずこのポルトガル風タコのサラダ「salada de polvo」があった。
ゆでダコをカットし、玉ねぎとパセリをオリーブオイルであえただけのサラダなのだけど、これがこれが、シンプルイズベスト、実に、うまかった。どうやら、夏のサラダらしい。そこで、ぼくは冬でも美味しく食べられるように、タコをグリルしてみたのだ。これが、やらなければわからなかった、さらに美味しくなったのである。ということで、自慢のポルトガル風タコのサラダを今日は、皆さんに、ご紹介させて頂く。オブリガード!
ゆでダコ | 1本(足) |
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ミニトマト | 適量 |
紫玉ねぎ | 8枚程度(スライス) |
にんにく | 1/2片(みじん切り) |
イタリアンパセリ | 大さじ2(みじん切り) |
レモン汁 | 大さじ1 |
オリーブオイル | 大さじ3 |
塩 | 適量 |
黒胡椒 | 適量(ホール) |
フライパンにオリーブオイル大さじ1を入れ、にんにくを加え火にかけオイルに香りを移す。にんにくはボウルに取り出し、にんにくの香りがついたオイルでタコを焼く。両面にしっかり焼き色がついたら、黒胡椒をガリガリと挽いてかけ、フライパンから出し、置いておく。
にんにくを取り出したボウルにイタリアンパセリ、レモン汁、オリーブオイル大さじ2、塩、胡椒を加えよく混ぜ、ドレッシングをつくる。
②のボウルに①のタコを好みの大きさに切って入れ、和える。
器に紫玉ねぎを並べ、真ん中にタコを盛りつけ、周りに残ったドレッシングをかけたら完成。ミニトマトがあれば半分にカットし飾ると華やかに仕上がるので、お試しあれ。
夏の定番だが、冬でも美味しいポルトガル風タコのサラダ、もちろん、白ワインとの相性、最高なのである!!!
さ、ご一緒に、ボナペティ!!!!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac