そのままでもおいしい殻付き落花生に“漬け”のひと手間をかけ、艶めきのある柔らかさに。どっさりつくっても秒速でなくなること必至。突き出しに、つなぎに、終盤のだらだら飲みに、最強の“シンつまみ”です。スパイス料理でお酒を飲む楽しさは、一度体験したらやみつき必至。“スパイスと燗”を主軸に、ジャンルフリーの酒肴で魅了する西荻窪「Spice飯店」店主・岡本大佑さんに、家庭でも簡単につくれる絶品おつまみを習いました。
店頭の看板はデッサン画のカルダモン。扉を開けると、国籍不明のスパイスの芳香がふわり。ほぼスパイス料理一色のつまみに合わせるお酒は燗推しの日本酒、ナチュラルワイン、クラフトビールの三択。すべてのお酒好き、スパイス好きにとって、西荻窪の「Spice飯店」は解放区だ。
ビールやスピリッツはともかく、ワインや日本酒にスパイスの刺激はご法度。なんていう窮屈な定説は、ここでは無用。ワンオペで店を切り盛りするオーナーシェフ、岡本大佑さんの配球は常に的確で懐深く、小気味よい。
たとえば、磯の香りが炸裂する岩海苔たっぷりの台湾風オムレツには、ミネラリーつながりでアルザスの白を。ラムに青唐辛子のシャープな辛味を練り込んだワンタンは、60℃の熱さにつけた熟成燗と。ゆるりと弧を描くスローカーブあり、縦にすとんと落ちるフォークあり。
素材の組み合わせにも、達人の緩急が利いている。ザーサイと和梨とバジル。栗と羊のチーズとクミン。湯葉とザワークラウトと。どれも、ゆるり、だらだら飲むテンポが似合う名菜揃い。さくっとつくれて奥行の深い味わい、豆皿を並べてつまんでも、翌朝のカラダに感じる軽やかさもありがたい。
この感動をわが家の食卓でも。そんなわがままに応えてくれる岡本流のスパイスレシピ全17品。つくって飲めば、楽しい晩酌タイムが待っている!
ゆで上がった落花生の殻をはずすと、ほっくり蒸された色白のピーナッツが現れる。温かいままでもおいしく、冷ましても絶品。冷蔵庫で3~4日は日持ちするので、多めにつくって冷蔵保存がお薦め。
落花生 | 300g(殻付き) |
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ウーロン茶葉 | 10g |
八角 | 2個 |
シナモンスティック | 1g |
水 | 1L |
塩 | 30g |
材料のすべてを鍋に入れて強火にかける。
沸騰したら火を弱め、蓋をして30分ゆでる(蓋をしてとろ火にかけることで蒸し煮に近い状態に。均一にゆっくりと火が入る)。
密閉容器などに移し、冷ます。
おかもと・だいすけ アジア旅行でスパイスに開眼し、東京・富ヶ谷にあるスパイス酒場「酒坊主」や、学芸大学にあるイタリアン「レインカラー」で修業。2019年に西荻窪にスパイスを使ったつまみと、燗酒やナチュラルワインを出す「Spice飯店」を開店。
文:堀越典子 撮影:竹之内祐幸