辻仁成の“パリ・サラダ”
辻 仁成の"パリ・サラダ"|第二十二回"タイ風牛肉のサラダ"

辻 仁成の"パリ・サラダ"|第二十二回"タイ風牛肉のサラダ"

パリではおなじみの、タイの美味しいサラダをご紹介。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。

パリ経由、タイ風牛肉のサラダ

ぼくはタイを舞台に『サヨナライツカ』という小説を書いたことがある。なので、一時期、タイに通い詰めた。自称「タイ料理通」なのである。

ところが、なぜか、パリには本格的なタイ・レストランが多くない。なので、時々、タイ料理を食べたいと思うのだけど、これが、タイで食べるような本格的なタイ・レストランを見つけるのに一苦労した。むしろ、ベトナム料理の方が充実している。なぜなら、フランスはかつてベトナムの宗主国だったからである。

ただ、それほど美味しくはないパリのタイ・レストランのトップメニューに必ず記載されているサラダがある。サラダ・ド・ブッフ(牛肉のサラダ)なるものである。

これが実にうまいのだ。しかし、ぼくがタイを旅していた頃、この牛肉のサラダなるものにお目にかかることは稀であった。パリ在住のタイ人に訊いたら、牛肉が高価だからね、庶民には手が届かないんだ、とのこと。なるほど、それでサラダ・ド・ブッフは海を渡り、ここ、パリでエキゾチックな要素が花開くことに。フランス人にとって、この柔らかい牛肉のレア感がたまらなかったのである。

ということで、今日は、このパリではおなじみ、「タイ風牛肉のサラダ」をご紹介したいと思うのである。

タイ風牛肉のサラダのつくり方

材料材料 (2人分)

牛赤身肉200g(塊、ステーキ用)
サラダ菜少々
もやしひとつかみ
きゅうり1/4本
コリアンダー4本
ミント2本
適量
胡椒適量
レモングラス1本
★ ドレッシング
・ 紫玉ねぎ1/8個
・ 赤唐辛子1本(生、小口切り)
・ にんにく1片(粗みじん)
・ ライム汁大さじ2
・ サラダ油大さじ2
・ ナンプラー大さじ2
・ 砂糖小さじ1と1/2
ピーナッツ少々(飾り用)
材料

1牛肉の下準備

肉に塩、胡椒をし、刻んだにんにくとサラダ油大さじ1(各分量外)をからませ、30分ほど常温で置いておく。

牛肉の下準備

2レモングラスに火を通す

小さなフライパンに小口切りにしたレモングラスと水を大さじ2入れ、沸騰して水がなくなるまで火を入れる。

レモングラスに火を通す

3ドレッシングをつくる

小さな容器に、②とドレッシングの材料を入れ、よく混ぜておく。

ドレッシングをつくる

4牛肉を焼く

フライパンをよく熱し、肉を一気に焼く。にんにくが焦げてしまうので、マリネしていたサラダ油とにんにくを別の皿に取り除いてから、強火で両面をさっと焼く(両面で1分くらい)。

牛肉を焼く

5牛肉を休ませる

肉を取り出し、アルミホイルに包んで少し休ませる。

6カリカリ・ガーリックをつくる

④のフライパンに、マリネに使ったサラダ油とにんにくを入れ、余熱でカリカリ・ガーリックをつくっておく。

7皿に盛る

皿にサラダ菜、軽く湯がいたもやし、小さめに切ったきゅうりを並べ、その上に⑤の肉を薄切りにして並べる。

8仕上げる

③の具だくさんのドレッシングをたっぷりかけ、ザクザクと切ったコリアンダーとミントを散らし、最後に⑥のカリカリ・ガーリックと砕いたピーナッツをふりかけたら、タイ風牛肉のサラダ=サラダ・ド・ブッフの完成である。

完成

「サヨナライツカ」なんて言わないで、ぜひ、皆さんで仲良く、よく混ぜ混ぜしてから、はい、ボナペティ!

文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac