ビストロの肉料理のおいしさを、サンドイッチにぎゅっと詰め込んでみたら、さあどうなる?単に具材を挟むだけ、重ねるだけでは終わらない、ガストロノミックな“肉サンド”の秘蔵レシピをここに。東京・神楽坂にある大人気のビストロ「BOLT(ボルト)」のオーナーシェフの仲田高広さんが手ほどきします!
人気フレンチ居酒屋の店主にして、“肉マエストロ”の異名もとる「BOLT」の仲田高広シェフ。骨付き肉からジビエ、十八番の内臓料理まで幅広いスペシャリテをもち、自身も肉サンドを豪快に頬張る姿が様になりそうな体躯と風貌の持ち主だ。サンドイッチといえば、料理修業で滞在したフランスの思い出と直結する食べ物でもあるという。
「好きでよく食べていたのは、ハムとチーズだけなのに、とてつもなく旨いバゲットサンド。あれこれ具を挟まない、シンプルなのがおいしいと思います。なんなら、“パンと肉だけ”でもいいくらい(笑)」
というわけで、この度は“肉縛り”のがっつり系サンドイッチを提案していただくことに。ビーフ、ポーク、チキン、ラムのオールスターキャストが揃い踏み、見た目は圧巻の肉肉しさ。にもかかわらず、味わって重く感じるということがない。単調さもない。生野菜のような副素材を個体でポンと挟む代わりに、ワイン煮込みの玉ねぎジャム、長ネギのピュレ、焼き茄子のペーストをしのばせるなど、コンディモンとしての野菜づかいに飽きさせない工夫がちりばめられているためだろう。
フレンチの技法をベースとしながらも、味付けは和風あり、エスニックあり、そのハイブリッドもありのフリースタイル。豚とバナナ、サラミと砂糖漬けの和菓子のような意表を突く組み合わせも。そして、どれもこれもがビールやワインを呼ぶ仕立てこそ、まさに“BOLT流”だ。
「組み合わせるパンの種類によって、具材との一体感や食感が変わるのも、サンドイッチならではの面白さですよね」と、楽しそうにパンを選ぶ仲田シェフ。土台にもフィリングにも采配が冴えわたる渾身の肉サンド15選、ぜひ腕まくりでお試しを!
肉好きのアドレナリンを全開にする、ロゼ色の肉の断面の美しさ!赤身肉のコクとジューシーな肉汁、玉ねぎの甘味を存分に引き出した自家製ジャム、マスタードの辛味とパンの香ばしさが口内調味で一体に。衣がサクサクの揚げたても絶品だが、1日置いてなじませると、しっとりとまとまって別の美味しさに。
牛肉※ | 200g(厚さ2cmのステーキ用) |
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食パン | 2枚(1.5cm厚さ) |
塩 | 少々 |
黒胡椒 | 少々 |
強力粉 | 適量 |
溶き卵 | 1/2個分 |
パン粉 | 適量 |
揚げ油 | 適量 |
バター | 小さじ1(食塩不使用) |
★ 玉ねぎジャム | 大さじ2(つくりやすい分量) |
・ 玉ねぎ | 1個分(薄切り) |
・ サラダ油 | 小さじ1 |
・ 赤ワイン | 150ml |
・ 醤油 | 小さじ2 |
・ 塩 | 少々 |
フレンチマスタード | 小さじ1 |
粒マスタード | 小さじ2 |
※もも、サーロインなど好みの部位でOK。
玉ねぎは繊維を断つ方向で薄切りに。繊維を断つと火の通りが早く、玉ねぎの甘味が出やすく、口当たりが滑らかになるメリットも。
鍋にサラダ油を熱し、玉ねぎ、塩を入れて強火で炒める。水分が出てきたら火を弱め、クタクタになるまで炒める。
②の鍋に赤ワイン、醤油を入れ、混ぜながらペースト状になるまで煮詰める。
水分が減ってピュレ状になったら完成のサイン。粗熱が取れたら保存容器に移す。
牛肉の両面に塩、片面に胡椒をふる。
強力粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、170℃に熱した油で1分半ほど揚げる。揚がったら網の上に2分以上置き、休ませる。
食パンは両面をトーストし、2枚の片面にバター、玉ねぎジャム、フレンチマスタードを塗る。
⑦の1枚に⑥をのせ、玉ねぎジャムを塗り、粒マスタードをのせ、もう1枚で挟む。かるく手で押さえてなじませ、4等分に切ったら、ピクルス(材料外)を添えて完成。
1981年生まれ。東京都出身。調理師学校卒業後、東京・銀座にあるフレンチの名店「マルディグラ」や、「レスプリミタニ」(閉店)で修業。その後フランスでの修業を経てオーストラリアへ。メルボルンのレストランやビストロなどで計6年間経験を積む。帰国後、東京・赤坂の居酒屋「まるしげ夢葉家」で修業し、2017年、居酒屋的感覚で自由にフレンチが楽しめる店「BOLT」を東京・神楽坂に開店。9席のカウンターは、毎晩食いしん坊の大人たちで満席だ。
文:堀越典子 撮影:海老原俊之