シンプルで美味しいパリの定番サラダをご紹介。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
カフェに行くと、メニューに数品のサラダが並んでいる。店の趣味で多少異なるものの、どの店もサラダに関してはそんなに大きく変わらない。シーザー・サラダ、イタリアン・サラダ、サラダ・ニソワーズ、そして、だいたいの店にこちら「サラダ・パリジェンヌ」がある。
メニューに居並ぶフランスを代表するサラダの中で、このサラダ・パリジェンヌくらいシンプルなものはない。このサラダを構成する上で重要なものはマッシュルームとハム。これらはどちらも「シャンピニオン・ド・パリ(昔、パリの地下墓所カタコンブで栽培されていたことから、この名がついた)」「ジャンボン・ド・パリ(18世紀からパリ周辺で作られていた加熱ハム。戦時中にパリの知事がハムの税金を上げ、値段が高騰したことから高級食材としてフランス中に広まった)」」を使用している。サラダ・パリジェンヌを満たす要件は、メインの具材がパリ由来であることが大事なのだ。とりわけマッシュルームは新鮮であれば生で食べることが出来るので、たいがいのサラダ・パリジェンヌは生の輪切りマッシュルームが使われている。
パリのハム「ジャンボン・ド・パリ」はブロックで売っているものをキューブ状にカットして出すカフェが多い。チーズも同じ真四角にカットされている。これに茹で卵が添えられたら、もう、サラダ・パリジェンヌと呼ぶことが出来そうだ。
ドレッシングも至ってシンプルで、マスタードとワインビネガーとオリーブオイルを和えただけ。しかし、この組み合わせで食べるサラダから、意外にシンプルな生き方を実践するパリジェンヌの気質が垣間見える気がするのはぼくだけだろうか? ファッションセンス抜群の彼女らがこのサラダにフォークを突き刺して食べる光景こそ、実はもっともパリっぽい眺めなのである。サラダ・パリジェンヌは着飾らない王道の中の王道カフェ・サラダということが言えるのじゃないか。お腹がすかない時、夏バテ気味な時に、このサラダはおすすめである。
それでは、まず材料を。
お好きな葉野菜 | 適宜 |
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ハム | 好きなだけ |
エメンタールチーズ | 好きなだけ |
マッシュルーム | 約3つ |
シブレット | (あれば) |
ラディシュ | (あれば) |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
ゆで卵 | 1個 |
★ ドレッシング | |
・ マスタード | 大さじ1/2 |
・ ワインビネガー | 大さじ1 |
・ オリーブオイル | 大さじ2 |
ドレッシングの材料を混ぜ合わせる
マッシュルームは薄くスライスする。ハムは短冊に切る。ゆで卵は縦に4分割にする。
葉野菜を並べ、マッシュルーム、ハム、ゆで卵、チーズをのせ、ドレッシングをたっぷりかけたら完成。
今回、ぼくは個人的な好みで、マッシュルームは半分を生で、半分をソテーにし、ハムは市販のスライス・ハムを普通にカットしたものを使用しました。飾りにシブレットやラディッシュのスライスを載せると、さらに、パリ感が増すので、お試しあれ。ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac