とにかく暑い、こんなときに食べたいシンプルなサラダです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
猛暑が続くフランス(日本はもっと暑いらしい)、パリは40度近く、茹であがりそうである。ここまで暑いと、食欲がわかない。冷たいものを摂取し、身体を少しでも冷やしたくなる。そこで、今日はイタリア料理の前菜(アンティパスト)に必ず出てくる野菜のグリルを、それだけを、頂くことにした。イタリア料理の前菜だけれど、フランス人も大好きで、メイン料理のガルニチュール(付け合わせ)として、よく出されている。ぼくはそのまま食べるのが大好きだ。しかし、邪道だけれど、素麺を茹でて冷やし、やはりオリーブオイルを回し掛けし、野菜のグリルと一緒に食べることもある。バルサミコ酢が、冷やし素麺と相性が抜群なのだ。今回はサラダなので、素麺の写真は控えさせて頂いたけれど、フランス人編集者や作家仲間が真夏に遊びに来たことがあり、思い付いてつくって出してみたら、これが思った以上に受けた。プロセッコとか、スプマンテなど泡系のライトの飲みものとよくあうのだ。清涼感のある気楽な一皿と言えよう。
そもそも、イタリアって、フランスなどで出てくる生野菜がふんだんに使われたサラダ(サラダ・パリジェンヌとか、サラダ・ニソワーズ)みたいな一皿があまりない。気のせいかもしれないが、焼き野菜とか茹で野菜の付け合わせばかり。ミラノのカフェで、キノコサラダというのがあったので、珍しいから頼んだら、キノコのソテーであった。生野菜が食べたい人は、「インサラータミスタ(ミックスサラダ)をください」と注文しなければならない。そうすると、野菜の葉っぱだけが載っている実にそっけないものが出てくる。客たちはオリーブオイルを回し掛けて食べている。ドレッシングで葉っぱを濃厚に味付けしてしまう文化はない。素材を生かすために茹でたり、グリルしたりして、そのまま食べている。そういうシンプルさ、ぼくはかなり気に入っている。まさに、夏野菜の冷たいグリルサラダなどは、その代表料理と言えよう。
そういえば、パリのカフェで「サラダ・イタリアン」というのをよく見かけるが、注文すると、やはり、野菜サラダの上に野菜のグリルとパルマ産の生ハムが載っているものが出てきた。
ともかく、パリは息苦しいくらいに暑いので、冷たい夏野菜のグリルサラダを今日は作って、涼むことにしよう。簡単なので、一緒に、作ってみませんか。
好みの野菜 | 適量(なす、ズッキーニ、パプリカなど) |
---|---|
にんにく | 1片 |
ローリエ | 1枚 |
バルサミコ酢 | 大さじ1 |
オリーブオイル | 約100ml |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
夏野菜を好きなカタチにざっくり切る。
お皿に野菜を並べ、オリーブオイルを少しふりかけてから、しっかり熱したグリルパンで焼いていく。にんにくも一緒に焼く。グリルの香ばしさが野菜の味を引き立てる。しっかりとグリルの焼き目がついてきたらオッケー。
焼き上がった野菜からお皿に取り出し、保存容器などに入れ、バルサミコ酢とオリーブオイル、塩、胡椒を加えてしっかりなじませ、仕上げにローリエを加え冷蔵庫で冷やす。
器に盛りつけて完成。
キンキンに冷えた夏野菜を美味しいパンと白ワインでどうぞ。あ、素麺でもいいですよ、邪道ですけど……。
モツァレラや生ハムなどと併せれば熱い日にぴったりな夕食の一皿になります。ボナペティート!!!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac