器を引き立たせるレシピ
季節感溢れる食材で体に優しい"菜飯、おぼろ豆腐の吸い物"

季節感溢れる食材で体に優しい"菜飯、おぼろ豆腐の吸い物"

彩りと食感のみずみずしさに季節を感じる青菜は、その時々で小松菜やからし菜などもお薦め。お吸い物と合わせてほっこりと疲れた体を癒します。器と料理の組み合わせを提案する店「カモシカ」を主宰するオカズデザインさんに、器の紹介と、その器を引き立たせる、目にも舌にもおいしいレシピを教わりました。

Last lesson 白の器

白の器
白の器とは?
粉引や白釉、白磁など、技法や表面の仕上げ、釉薬の違いによってさまざまなバリエーションがある。古来、ヨーロッパ、日本に限らず世界中に存在してきた器の色なので、好みの白を探求する人も多い。簡素な業務用の器の白は使いやすく、李朝の凛とした深い白は美しく、ヨーロッパの気品のある白は華やか、というように、それぞれに魅力がある。

初心者にとって手に取りやすく、玄人にとっても使いやすい万能な器と言えば?その答えは白。多くのレストランで使われているように料理を引き立ててくれる存在であり洗練の空気をつくり出してくれる色でもあります。そんな白の器だからこそ、盛りたい料理とは?〈オカズデザイン〉が改めて、白に向き合いました。

器と料理の店〈カモシカ〉を営む〈オカズデザイン〉によるこの連載も丸2年。思わず料理を盛りたくなるような器と、器からインスパイアされて生み出された料理をご紹介してきました。連載最終回となる今号のテーマは、初心に返るべく、白の器。なんといっても、洋食から和食まで幅広い料理を受け入れてくれるような懐の深さが魅力です。

「白は基本だけど奥が深い色ですよね。初めての作家さんの器を買うとき、まずはクセのないプレーンな白を買ってみようということも多いです」と〈オカズデザイン〉。主張の少ない色だからこそ、たとえばちょっと変わった形や使ったことのないサイズだとしても、食卓にしっくりなじむのかもしれません。

また、白とひと口に言っても、マットな質感のモダンな白から、ぽってりと温かな白、柔らかな乳白色、艶やかで透明感のある白まで、さまざまな表情があります。

「表情の違う白はもはや別の色と言っても過言ではありません。『白い器はすでに持っているからいいわ』と言っていたお客さまが、〈カモシカ〉で器を見てその違いを知り、欲しくなったということもありました。私たちは時間をかけて育っていくものが好みなので、使い込むうちに風合いが増す粉引や、貫入に色がしみ込みやすい器をたくさん持っています。でも光沢のある硬質な磁器も、盛る料理によって魅力がぐんと増すことがわかってきたので、白だけでも相当な数の器が揃ってしまいました」

どんな料理でも引き立ててくれる色だけれど、白い器に白い料理を盛ってみたり、鮮やかな春野菜を合わせてみたり、楽しみ方は無限大。食器棚を見渡してみて目に入った白の器を、今日は使うと決めましょう。そしてこのページの中から、合う料理を選んでつくってみてください。きっと器の新しい魅力と、料理の楽しさを再発見できるはず。

凛、とした白い朝餉

余計なディテールをいっさい排した、潔いくらいシンプルな白磁のお碗。ずっと前から持っていながらも、実は出番が少なかったんです。でも今回、春らしい菜飯をつくろうと思ったときに、ふと思い浮かんだのがこちらでした。清潔感のある白いお碗に、刻んだ青菜のみずみずしいグリーンがよく映えて、とってもおいしそうに見えるでしょう。合わせた汁椀はもちろん漆でもいいけれど、白で揃えると清々しい気持ちに。抹茶碗として販売されていたものですが、汁椀に見立てて使うのもいいですよね。

“菜飯”のつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

季節の青菜200g(小松菜やからし菜など)
小さじ1(粒が細かい海塩)
炊きたてのご飯200g

1青菜の下準備

青菜は太いものがあれば根元に十字に切り込みを入れてからよく洗い、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。バットに入れ、塩を全体にふる。

2青菜を半日置く

30分ほどしたら裏に返し、体重をかけて手で全体をぎゅっと押す。汁気ごと冷蔵庫に入れ、半日置く。

3青菜をご飯と混ぜる

水気をしっかり絞ってから細かく刻み、炊きたてのご飯と混ぜる。

“おぼろ豆腐の吸い物”のつくり方

材料材料 (つくりやすい分量)

だし500ml(鰹と昆布)
おぼろ豆腐好きなだけ
適量

1だしを温める

ひきたてのだしを鍋に入れ、塩で調味し、弱火にかけて温める。

2豆腐を温め、盛りつける

おぼろ豆腐を玉杓子などで食べたい分だけすくい、そっと1に入れる。豆腐が温まったら器に盛る。

完成

教える人

オカズデザイン

2000年、吉岡秀治・吉岡知子が結成。“時間がおいしくしてくれるもの”をテーマに、書籍や広告のレシピ制作・器の開発・映画やドラマの料理監修などを手がけている。2008年より東京都杉並区にて、器と料理の店「カモシカ」を不定期でオープンし、作家の器の展示や季節の保存食の販売をはじめ、食にまつわる企画を開催。『二菜弁当』(成美堂出版)など著書多数。

この記事は技あり!「四季dancyu 春のレシピ」に掲載したものです。

四季dancyu 春のレシピ
四季dancyu 春のレシピ
A4変型判( 120 頁)
ISBN:9784833481175
2022年3月15日発売 / 1,100円(税込)

文:藤井志織 写真:伊藤達也