この季節ならではの、軽やかなサラダです。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。パリに住んで20年の辻さんによる、美味しさと思い出の詰まった“パリ・サラダ”のレシピです。
白アスパラを食べるようになったのは、渡仏後のことです。最近は日本でも白アスパラが普通に買えるようになりましたが、昔、ぼくが日本にいた時分はまだまだ一般的な野菜ではありませんでした。なので、渡仏直後のぼくはその珍しさから、春になると好んで「ホワイトアスパラのオランデーズソースがけ」を注文したものです。
オランデーズソースは卵で作るソース。実はホワイトアスパラと卵の相性が抜群なのです。ポーチドエッグがのっかっている茹で白アスパラもよく見かけます。ところが、年齢的な問題もあるのでしょう。毎年、毎回、濃厚なオランデーズソースと白アスパラという組み合わせも辛くなってまいりました。フランス人の友人らも、年配の人やカロリーを気にする女性も、同じことを言います。
そこで、あっさり食べたい方々はヴィネグレットがけを選ぶようになるのです。このヴィネグレットと白アスパラの相性も抜群なのです。アプローチが違うだけで、ここまでバリエーションが出るのも、白アスパラがどのような絵画でも描ける魔法の無垢なキャンバスだからでしょう。
ということで、今日は、あっさりとしているけれど、だからこそ毎日食べたくなる辻家定番の「春がときめくホワイトアスパラのサラダ」をお届けしたいと思います。
印象派の絵画を思わせる美しい一皿になります。その中心にはもちろん白アスパラが鎮座しておりますが、彩を添えるのはラディッキョ、そして卵のミモザ。ラディッキョのパープルカラーとミモザの白と黄色の混ざりあう色彩感が、美味しさをそそりますね。まさに、印象派の絵画のような一皿となりますよ。
それでは、さっそく、一緒に作ってまいりましょう。
まずは材料です。
ホワイトアスパラ | 4本 |
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レモン | 1/2個 |
卵 | 1個 |
ルッコラ | 少々 |
ラディッキョ | 少々 |
バルサミコ酢 | 大さじ1 |
マスタード | 小さじ1/2 |
オリーブオイル | 大さじ2 |
パルメザンチーズ | 適量 |
塩 | 適量 |
胡椒 | 適量 |
くるみ | 適量 |
黒胡椒 | 適量(ホール) |
まずはホワイトアスパラの皮をむきますが、これもまさに芸術的なむき方になります。ピーラーを使いますけど、下2、3cmのところで、不意にひっかかる場所があります。そこまでピーラーをおろしていきます。硬い部分でピーラーが止まると、短いスカート、もしくは、バレエのチュチュのようなものが硬い芯を囲む形で広がります。綺麗ですよね。表面の皮は、しっかりとむいていかないと、筋が残り、食べるときに歯にひっかかることがあります。もったいないと思わないでピーラーを通すときはしっかりと根元の止まるところまでおろしてください(写真をご参考に、根元の硬いところは使えませんから、ピーラーが止まるところを目指しましょう)。
鍋にたっぷりめの湯を沸かし、塩もたっぷり、レモンを搾り、レモンの皮も一緒に入れてアスパラをゆでます。約15分したら先の尖ったナイフでアスパラを刺し、すっと入ったらオッケー。ゆで上がったアスパラをキッチンペーパーの上に出し、水気をきります。
ゆで卵をつくり、白身と黄身に分け、漉し器でミモザをつくります。
小さなボウルにバルサミコ、マスタード、オリーブオイルを入れて塩、胡椒で味を調え、よく混ぜる。
お皿にルッコラ、3等分に切ったアスパラ、ラディッキョ、パルメザンチーズを画家になったような気分でセンス良く並べ、ヴィネグレットソースをかけ、上からミモザを飾って、あればくるみなどを散らし、粗挽き黒胡椒をガリガリとかけたら完成となります。
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac