体が温かいものを欲するようになる季節、はまぐりのだしとキノコのほっこりする美味しさが日本酒やワインを誘います。京都の料理研究家・大原千鶴さんは、お酒に合う季節のおつまみをつくります。この連載では、お酒を愛する大原さんがご自分でも「このあてでこんなお酒を呑みたい」と思う、季節のおつまみを紹介します。
11月に入って京都も朝晩ぐんと冷え込み、体も温かいものを欲するようになってきました。連載初回にご紹介するのは蛤と大黒しめじの旨味たっぷり、味つけいらずの酒蒸しです。
酒蒸しはよくおつくりなる料理と思いますが、はまぐりをふっくら仕上げることがポイントです。貝は口が開いてから火にかけたままにしていると身が痩せて硬くなってしまうので、開いたら順に取り出し、しめじを炊いたところに戻してやるようにします。はまぐりのおだしだけで十分美味しいですが、これに大黒しめじを加えたら、さらに旨味が増します。他のキノコでも代用でき、しいたけやエリンギ、奮発して松茸でも。土鍋でつくる場合は、煮詰まりやすいので水を適量加え、おだしがなくならないようにします。味つけはほぼ蛤の塩分だけで完成し、足りなければ塩を加えてお好みの味に調えてください。
純米吟醸とよく合い、おだしが美味しいのでこれだけでも呑めてしまいます(笑)。ワイン党の方でしたらワインで蒸して、バターやニンニクを加えても。
はまぐり | 3個(130g) |
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大黒しめじ | 3~4個(100g) |
酒 | 大さじ2 |
塩 | ひとつまみ程度 |
柚子 | 適量 |
はまぐりはタワシでこすって洗う。大黒しめじは軸の硬い部分を切り落とし、半分に切る。
鍋にはまぐりと酒を入れ、中火にかけて蓋をする。はまぐりの口が開いてきたら、取り出す。はまぐりの煮汁が沸いているところにしめじを加え、時々上下を返しながら煮る。しめじがしんなりとしたら味をみて、足りないようであれば塩で味を調え、はまぐりを戻し入れて火を止める。
好みでスライスした柚子を添える。
京都・花脊の料理旅館「美山荘」が生家。小さな頃から自然に親しみ、料理の心得を学ぶ。現在は家族五人で京都の市中に暮らし、料理研究家としてテレビや雑誌、講習、講演など多方面で活躍。シンプルなレシピに定評があり、美しい盛りつけにもファンが多い。着物姿のはんなりとした京女の印象とは対照的に、お酒をこよなく愛す行動派。レシピはお酒を呑んでいる時に思いつくのが一番多い。
文:西村晶子 撮影:福森クニヒロ