せっかく上等な食材を手に入れたなら、いつもよりちょっと高級なビールを選びたい。少し手の込んだ料理をつくり、冷えた缶をプシュッと開けるその音が、贅沢な家飲みの開始を告げる。柔らかなイカからあふれ出す旨味、そのおいしさの輪郭を彩る高級珍味・カラスミのコクに爽やかな大葉の風味。思わず笑みがこぼれてしまう満足度の高いごちそうと上質なビールで、さあ乾杯!
昨夏、伝統ある中国料理「星ヶ岡」の料理長となった山橋孝之さんは、大のイカ好き。島根県出身の山橋さんにとって、イカといえばケンサキイカだ。「毎日イカなので食傷気味でしたが、故郷を離れ、酒を飲む大人になり、あれ以上のつまみはないなと(笑)」。
そこで、山橋さんはイカにカラスミを合わせることを思いつく。「以前、食材探しに出かけた長崎で生カラスミに出合い、その旨さに衝撃を受けました。ザ・プレミアム・モルツのテイストに、これ以上ない味わいの料理になりました」とニヤリ。プレモルの風格に威風堂々と対峙する一皿の誕生である。
まずはプレモルで喉を潤す。「ふう、旨い」は至福の時間が始まる合図。さっそくイカを頬張る。味つけはほぼカラスミという贅沢さに負けない、イカのしっとりとした食感。「イカと魚卵という旨味のすごいハーモニーに、コクと旨味が深いプレモルは負けません。むしろ、おいしさを高めています」と山橋さん。プレモルの味わいが好きなのはもちろん、「乾杯から食中酒まで、緩急自在なところにプレモルの包容力を感じます」とリスペクトする。きっと明日も、大好きなイカとプレモルで乾杯だ。
中国料理の炒め時間は短い。なので、この料理のポイントは、イカの花切りに尽きる。花切りとは、美しく見せる中国料理の切り方。加熱によって食材が縮むのと同時に包丁目は花が咲くように開く。「多少炒めすぎてもイカの柔らかさをキープできますし、味のからみもいいんです」と山橋さん。“切り離さないように切る”極意は、包丁を斜め45度に傾けることという。材料の準備ができたら、フライパンに油を入れて火にかける。このとき、よく熱することが大事だ。イカの花が咲いたら器に盛り、カラスミをたっぷり。急いでビールを注がないと!
イカ | 2ハイ(今回はケンサキイカを使用) |
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大葉 | 5枚 |
A | |
・ チキンブイヨン | 1/4カップ(または鶏ガラスープ) |
・ 生カラスミ | 20g |
・ 紹興酒 | 小さじ2 |
・ 砂糖 | 小さじ2/3 |
・ 塩 | 少々 |
・ 片栗粉 | 小さじ2弱 |
サラダ油 | 大さじ1 |
ねぎ油 | 小さじ1弱 |
乾燥カラスミ | 適量(粉末) |
イカは胴体から足とワタを外し、軟骨も引き抜く。エンペラを外し、皮をむく。胴は軟骨があった部分に包丁を入れて開く。足は目の下の部分で切り離し、触腕は長さを半分に切る。さらに食べやすく切り分ける。さっと流水で洗い、水気をよくきる。
胴の表側に5mm間隔で斜め45度の切り目を全体に入れる。包丁目が交差するようにイカの向きを変え、同様に切り目を入れる。胴の上部は三角形に切り、下の部分は縦半分に切ってから、2~3等分に切る。大葉は5mm角くらいに切る。
ブイヨンやスープは、市販のスープの素少々を湯に溶いて用意。ちょっと物足りないくらいの薄味がベスト。Aの調味料をすべてボウルに入れ、よく混ぜ合わせる。
フライパンに油を入れて強めの中火にかけ、しっかり加熱する。油がゆらゆらしてきたらイカを炒める。6割ほど火が通って飾り切りしたイカの花が開いたら、合わせ調味料、大葉を入れてからめるように炒め合わせる。とろみがついて艶々してきたら、ねぎ油で香りづけする。器に盛り、乾燥カラスミをたっぷりかける。
中国料理「星ヶ岡」
【住所】東京都千代田区永田町2‐10‐3 ザ・キャピトルホテル東急2階
【電話番号】03‐3503‐0871
【営業時間】11:30~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)
【定休日】無休
文:斉藤由利子 写真:山出高士