dancyu本誌から
「ヴァッカロッサ」の野菜スープ|dancyuな人たちの偏愛レシピ⑤

「ヴァッカロッサ」の野菜スープ|dancyuな人たちの偏愛レシピ⑤

ワインと鮨とパスタと甘いもの好きな現役編集部員が、偏愛するレシピは「ヴァッカロッサ」の野菜スープ。何度も漉してつくる透明感なスープは、弱った体を元気にしてくれます。dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」。そこで登場した8品のレシピを1日ずつご紹介します!

今日はとことん飲むぞ! という日につくりたくなる

とにかく清らかなスープです。材料はトマトと玉ねぎと塩だけ。液体が揺らぐような火加減をキープしながら4時間煮るだけなのですが、この間に分子レベルが変わったの?と思うくらい、飲むと体にスルスルとしみ込むなめらかさになります。素材からエキスだけをやさしく抽出した味は、加えていない食材の風味も感じる複雑味があり、ふとした瞬間に思い出す美味しさ。

いつも以上にお酒を飲んだ後や食べすぎたときに、このスープのおかげですっきりと。すべてをリセットする力があるのです。だから“今日は飲むぞ!”という日に、体をいたわる気持ちを込めて、仕込んでおきます。そして「あ~美味しい」と感じられたら、自分の体はまだ健全と安心するわけです。出来上がるまでに時間はかかりますが、健康維持のため、晩酌とセットでつくり続けたい。

材料材料 (つくりやすい分量)

トマト大1/2個(桃太郎(中2個))
玉ねぎ大1と1/2個
4L
小さじ1/2(2.5g)

*大鍋があればトマト大3個、玉ねぎ大3個、水8L、塩小さじ1(5g)の分量でつくれるのでお薦め。仕上がりは約2.5L。

1下ごしらえ

トマトは縦半分に切り、ヘタを切り取る。玉ねぎは皮をむき、ひげ根だけを切り落とし、縦半分に切る。先に切れ端を味見して、えぐみが強ければ、外側の緑色の部分を切り取る。繊維に沿って7mm幅に切る。

下ごしらえ
適度に熟していて、甘味、酸味のバランスのとれた大玉がベスト(小玉だと煮くずれしやすい)。熟して甘すぎたり、酸味が強かったり、味の突出するものは向かない。

2鍋に玉ねぎを入れて、火にかける

鍋(今回は直径24cmの寸胴鍋を使用)に水を注ぎ、玉ねぎを入れてから、強火にかける。蓋はしない。

鍋に玉ねぎを入れて、火にかける
鍋は、口が広いと水分がとびやすいので、口の狭い小さめの寸胴鍋で煮るのが理想。

3トマトを入れる

くつくつと沸騰し始めたら火を弱め、トマトの断面が上にくるようにして、そっと鍋に入れる。続けて塩を加える。

4煮る

小さな泡がふつふつと立ち、表面に浮いた具が躍らない温度をキープしながら、4時間ほど煮る。水分の量が1/3になったら火を止める。

煮る
火力が強すぎて、トマトが裏返って断面が下向きになっていたり、煮くずれしたりすると、トマト味の強いスープになってしまう。アクを取ったり、かき混ぜたりする必要はないが、鍋の状態だけは常にチェックし、火加減を微調整しながらじっくり煮ていこう。

5スープを漉す

まずはボウルにザルを重ね、レードルでスープの上澄みをすくって漉す。ザルで漉したスープは、さらしを通して再度漉す。

スープを漉す
上澄みをすくうときは、具を潰さないように十分に注意する。スープの中には、目に見えない細かい果汁や繊維が入っているので、ザルで漉してからさらしで漉したほうが、結果的に早く漉し終わる。クリアなスープに仕上がるように、丁寧に作業しよう。

6繰り返し漉して、完成

残った具とスープはザルを重ねたボウルに静かに移して漉す。さらしで再度漉したら、5のスープと合わせて完成。仕上がりは約1L。

繰り返し漉して、完成
水分がよく落ちるようにザルを振ったり、レードルで押したりせずに、自然に落ちてきた水滴だけを使う。

7飲むだけの量を温める

小鍋に飲む分量のスープを温める。ワッと沸いた瞬間に火を止めて味見をし、足りなければ塩(分量外)で調える。口当たりがよい、少し熱めの風呂くらいの温度で味わう。

飲むだけの量を温める
味が変化してしまうので、沸かしすぎに注意する。仕上げの塩は、味つけというよりも、心地よくサーッと舌の上を通りやすくするためにつける塩味。盛りつけるときも、できれば茶漉しを通して器に注ぎ入れると完璧。
完成
渡邊雅之シェフは、この透き通る野菜スープを「リストラーレ」と命名。近々冷凍販売も行なう。

店舗情報店舗情報

ヴァッカロッサ
  • 【住所】東京都港区赤坂6-4-11
  • 【電話番号】03-6435-5670
  • 【営業時間】11:30~13:00(L.O.) 18:00~21:00(L.O.) 月曜と第1・3水曜は夜のみ
  • 【定休日】日曜 祝日
  • 【アクセス】東京メトロ「赤坂駅」より3分

文:石出和香子(編集部) 撮影:今清水隆宏