dancyuな酒と食のライター・鹿野真砂美さんの偏愛レシピは、「懐石 小室」にならった黒豆だといいます。年の瀬の忙しないときでも、つくり続ける理由は何と言ってもおいしいから! dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」。そこで登場した8品のレシピを1日ずつご紹介します!
編集部に在籍時代、取材の立ち会いで店にお邪魔し、この黒豆を教わってから、わが家のお正月に欠かせないものになった。豆を米のとぎ汁に一晩浸し、木灰を溶かした水で数時間ゆで、流水にさらし、一粒ずつ皮が破れた豆を取り除く。さらに蒸し器にかけ、薄い蜜から徐々に濃い蜜に漬け替えながら、4日がかりでようやく完成する、ふっくらつやつや、上品な甘さの黒い宝石。これでも短縮版で、店では1週間かけて仕上げるそうだ。最初の一回は、レシピの試作のつもりでつくったけれど、一度食べたらもう戻れない! 家族や、おすそ分けした友人たちからも、「今年もあれ、つくるよね?」と催促がやってくると、年末の多忙もなんのその。毎年、クリスマスはわが家の黒豆の仕込み開始日。ジングルベルを聴くと、よし、やるぞ! と気合いが入るのだ。
黒豆 | 1kg |
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水 | 8L |
木灰 | 200g |
A | |
・ 水 | 2.5L |
・ 中ざらめ糖(中ザラ糖) | 2.25kg(750gずつ3回にわける、店では中ざらめ糖を使用) |
濃口醤油 | 25ml |
黒豆は米のとぎ汁につけて一晩置く。とぎ汁を使うと、豆特有の日向臭い匂いが取れる。
鍋に木灰を溶かして漉した水、1を入れて強火にかける。沸騰すると20~30分間は盛大に泡が出るので、泡をすくい取りながら中火で約3時間、豆が柔らかくなるまで煮る。
一粒食べてみて十分に柔らかくなったら火からおろし、5時間置いてから、水が澄んでくるまで流水をかけ流す。
バットに布巾を敷いて豆を並べ、割れたものや崩れたものなどを取り除く。そのまま一緒に煮ると蜜が濁る原因にもなるので注意しよう。
蒸し器を火にかけ、蒸気が上がったら、選り分けた豆を布巾ごと入れて30分蒸す。蒸すことで余分な水分がなくなり、さらにふっくら仕上がる。
蒸している間に、鍋にA(中ザラ糖は750g)を入れて火にかけ、かき混ぜながら十分に溶かし、蜜をつくる。
5が蒸し上がったら、熱いうちに6に投入し、1日目の作業は終了。
翌日、豆を崩さないように取り出して、蜜をいったん布巾またはペーパータオルで漉す。漉した蜜に前日と同量の中ザラ糖を入れて火にかけ、十分に溶かしてから豆を戻し入れ、ひと煮立ちさせてから一晩置く。さらりと薄味に仕上げたい場合はここで醤油20gを加えて完成にしてよい。
さらに翌日、同様に漉した蜜に中ザラ糖750gを入れて火にかけ醤油25gを加え、豆を戻してひと煮立ちさせて完成。冷めたら密閉容器などに汁ごと入れ、冷蔵庫で保存を。
文:鹿野真砂美 撮影:古市和義