dancyu本誌から
「懐石 小室」の黒豆/dancyuな人たちの偏愛レシピ④

「懐石 小室」の黒豆/dancyuな人たちの偏愛レシピ④

dancyuな酒と食のライター・鹿野真砂美さんの偏愛レシピは、「懐石 小室」にならった黒豆だといいます。年の瀬の忙しないときでも、つくり続ける理由は何と言ってもおいしいから! dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」。そこで登場した8品のレシピを1日ずつご紹介します!

習ってから10年間つくり続けている黒豆

編集部に在籍時代、取材の立ち会いで店にお邪魔し、この黒豆を教わってから、わが家のお正月に欠かせないものになった。豆を米のとぎ汁に一晩浸し、木灰を溶かした水で数時間ゆで、流水にさらし、一粒ずつ皮が破れた豆を取り除く。さらに蒸し器にかけ、薄い蜜から徐々に濃い蜜に漬け替えながら、4日がかりでようやく完成する、ふっくらつやつや、上品な甘さの黒い宝石。これでも短縮版で、店では1週間かけて仕上げるそうだ。最初の一回は、レシピの試作のつもりでつくったけれど、一度食べたらもう戻れない! 家族や、おすそ分けした友人たちからも、「今年もあれ、つくるよね?」と催促がやってくると、年末の多忙もなんのその。毎年、クリスマスはわが家の黒豆の仕込み開始日。ジングルベルを聴くと、よし、やるぞ! と気合いが入るのだ。

材料材料

黒豆1kg
8L
木灰200g
A
・ 水2.5L
・ 中ざらめ糖(中ザラ糖)2.25kg(750gずつ3回にわける、店では中ざらめ糖を使用)
濃口醤油25ml

1豆を一晩浸水する

黒豆は米のとぎ汁につけて一晩置く。とぎ汁を使うと、豆特有の日向臭い匂いが取れる。

豆を一晩置く

2煮る

鍋に木灰を溶かして漉した水、1を入れて強火にかける。沸騰すると20~30分間は盛大に泡が出るので、泡をすくい取りながら中火で約3時間、豆が柔らかくなるまで煮る。

3豆を取り出す

一粒食べてみて十分に柔らかくなったら火からおろし、5時間置いてから、水が澄んでくるまで流水をかけ流す。

4選別する

バットに布巾を敷いて豆を並べ、割れたものや崩れたものなどを取り除く。そのまま一緒に煮ると蜜が濁る原因にもなるので注意しよう。

選別する

5蒸す

蒸し器を火にかけ、蒸気が上がったら、選り分けた豆を布巾ごと入れて30分蒸す。蒸すことで余分な水分がなくなり、さらにふっくら仕上がる。

蒸す

6蜜をつくる

蒸している間に、鍋にA(中ザラ糖は750g)を入れて火にかけ、かき混ぜながら十分に溶かし、蜜をつくる。

7蜜に浸す

5が蒸し上がったら、熱いうちに6に投入し、1日目の作業は終了。

蜜に浸す

8再度蜜に浸す

翌日、豆を崩さないように取り出して、蜜をいったん布巾またはペーパータオルで漉す。漉した蜜に前日と同量の中ザラ糖を入れて火にかけ、十分に溶かしてから豆を戻し入れ、ひと煮立ちさせてから一晩置く。さらりと薄味に仕上げたい場合はここで醤油20gを加えて完成にしてよい。

9三度浸して、完成

さらに翌日、同様に漉した蜜に中ザラ糖750gを入れて火にかけ醤油25gを加え、豆を戻してひと煮立ちさせて完成。冷めたら密閉容器などに汁ごと入れ、冷蔵庫で保存を。

鹿野さんアレンジ
黒豆をゆでた後、割れたり皮が破けてしまった豆を選別しますが、その豆は塩とオリーブオイルをかけてその晩のワインのつまみにしています。最終的に蜜がたっぷりと出来上がるので、完成して瓶に詰めると、必ず蜜だけが余るのですが、もったいないので、わが家では砂糖の代わりとして、おせちのお煮しめや、伊達巻きづくりに使ったり(すごくしっとり仕上がる!)、大みそかにすき焼きを食べるときに割り下に入れたりして消費するのが定番。黒豆はそのまま食べるのはもちろん、バニラアイスにのせたり、パウンドケーキに入れたりして、いろいろと楽しめますよ。とはいえ、掲載のままの分量だとかなりの量が出来上がるので、自家消費だけなら最初から半量以下の分量でチャレンジしても十分かもしれません。
完成
多めにつくったほうがふっくら炊き上がる。口当たりもしっとり。やさしい甘さが酒に合う。

店舗情報店舗情報

懐石 小室
  • 【住所】東京都新宿区若宮町35‐4
  • 【電話番号】03‐3235‐3332
  • 【営業時間】12:00~13:00(最終入店)、18:00~20:00(最終入店)
  • 【定休日】日曜、祝日
  • 【アクセス】都営地下鉄「牛込神楽坂駅」より4分、JRほか「飯田橋駅」より10分

文:鹿野真砂美 撮影:古市和義

鹿野 真砂美

鹿野 真砂美 (ライター)

1969年東京下町生まれ。酒と食を中心に執筆するフリーライター。かつて「dancyu」本誌の編集部にも6年ほど在籍。現在は雑誌のほか、シェフや料理研究家のレシピ本の編集、執筆に携わる。料理は食べることと同じくらい、つくるのも好き。江戸前の海苔漁師だった祖父と料理上手な祖母、小料理屋を営んでいた両親のもと大きく育てられ、今は肉シェフと呼ばれるオットに肥育されながら、まだまだすくすく成長中。