辻 仁成の“パリ・スープ”
辻 仁成の"パリ・スープ"|第十六回"栗のポタージュ"

辻 仁成の"パリ・スープ"|第十六回"栗のポタージュ"

秋には必ずつくるという満足感たっぷりの“栗のポタージュ”のお話です。作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。

秋スープを代表する栗のポタージュ

「桃栗三年柿八年、辻仁成巴里十八年」という諺がありますが、
『その辺で手に入る果物も実がなるまでに長い年月がかかるのだ、同じように何事も成し遂げようと思えばそれ相応の時間が必要。辻仁成だってだてに十八年もパリで生きてきたわけじゃない。十八年の努力の成果がこのスープにあり』
ということで、今日は秋に必ずつくる栗のポタージュについて……。

渡仏したばかりの頃は、よくシャンゼリゼ大通り界隈にショッピングに出かけ、ついでに焼き栗を食べていました。秋も深くなりますとあちこちにちょっと怪しげな栗の屋台が出まして「焼き栗」販売を始めます。秋の風物詩ですね。
コートの襟を立てて歩くような寒い日に屋台でゲットしたホクホクの栗を闊歩しながら食べるのは、実に乙なものでした。この「乙なもの」の乙には、気が利いていてちょっといいなと思わせる、という意味があります。さて、今日ご紹介する栗のスープ、毎日飲みたいとは思わないのですけど、秋になると、乙なものの代表格の一つとなり、じゃあ作ってみましょうか、と必ずなる極めて季節感に富んだ一品なのでございます。

しかし、難点もあります。
栗の鬼皮はなんとか剥けても、中の渋皮がなかなか手ごわい。女性と一緒ですね、おや、失礼、珍しいことに艶っぽい話しになってしまいましたが、そこは無理して剥こうとせず、剥き栗を買ってきてもいいですよ。

さて、今回の栗のスープは大量の栗を使いますので、どっしりとした飲みごたえがあります。ポタージュですから、肉や魚貝は入っておりませんが、三年の歳月をかけて育った栗の実の濃厚な存在感が口腔に広がり、ぼくは小食ですから、ランチであればこれにバゲットだけでもう十分な満腹感を得られます。栗のポタージュは甘いですから、デザート効果もあり、心から温まり、いえ、実にこれが「乙」なのであります。
では、早速、栗のポタージュをつくってみましょう。

栗のポタージュのつくり方

材料材料 (4人分)

300g(剥いた状態)
玉ねぎ1/2個(薄切り)
300ml
チキンブイヨン1/2個
ローリエ1枚
生クリーム100ml
ナツメグ少々
バター15g

1材料を炒める

まず、ココットにバターを溶かし、玉ねぎを炒めます。ここら辺はいつも通り、玉ねぎが透明になるまで辛抱強く炒めましょう。そこに栗を加えてください。

材料を炒める

2煮込む

水とチキンブイヨン、ローリエを加えて20分ほど煮ます。

煮込む

3ピュレ状にする

菜箸でつつくと、ほろっと栗が崩れるくらい柔らかくなっていたら、ナツメグを擦り入れ、鍋を火からおろし、ハンドブレンダーでピュレ状にしていきます。水気が足りなければ少し足しても良いですよ。

ピュレ状にする

4生クリームを加える

もう一度鍋を火にかけ、生クリームを加えて沸騰しない程度に、弱火で温め、塩胡椒で味を整えたら、はい、完成です。

生クリームを加える
完成

あっという間でしょ? 超簡単、けれども、美味しい、栗のポタージュ。オーブンで焼いたカリカリベーコンを添えるのがフランス流です。とっても美味しいですよ。ボナペティ!

文:辻 仁成 写真・協力:モーリヤック・井上 美希