dancyuなフードアクティビスト・松浦達也さんにとってのdancyu偏愛レシピは、焼きそばを129玉ひたすら炒める”大実験”の末にたどり着いたdancyu公式焼きそばだったそう。dancyu1月号「おいしいレシピ100」で掲載した「dancyuな人たちの偏愛レシピ」で登場した8品のレシピを1日ずつご紹介します。
「断言」が苦手だ。自ら断言すると「違う結果になったらどうしよう」とドキドキするし、されると「本当?」と訝りたくなってしまう。それでもなお、このレシピは3食焼きそば史上最強だ、と断言したい。ダイナミックな麺の食感、すこし大人っぽいソースの味わい、持ち味が引き出された肉やキャベツといった具の存在感――それぞれキャラの立った個が、強火にかけたフライパンの上で調和する。
dancyu式焼きそば公式レシピ開発班に投入されて、どれだけ鍋を振ったろう。数日間に渡り、129玉をひたすら炒める実験を繰り返した。実験のテーマは一玉ごとに変えた。冷蔵保存でβ化(老化)した麺をα化させてもっちり感を復活させるには、湯につけるか、電子レンジで温めるか、袋から出してゆでるか――。つくっては食べ、を繰り返した結果、正解は「ゆでる」となったが、その過程で酸化した油が浮いた鍋の激マズゆで汁を飲むという実験まで行った。ほか、具の炒め方、火加減など、無限と思えるほどの試作を繰り返し、徹底した実地検証の末に焼きそばが旨くなる要素を抽出した。まったくあれこれやり過ぎた。しかしだからこそ、このレシピを愛さずにはいられない。
市販の蒸し麺 | 1玉 |
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豚バラ薄切り肉 | 50g |
キャベツ | 70g(中1枚が目安) |
揚げ玉 | 大さじ1 |
粉ソース | 1/2袋 |
ウスターソース | 大さじ1 |
ビール | 大さじ1 |
サラダ油 | 小さじ2 |
紅生姜 | 適量 |
青海苔 | 適量 |
キャベツ、豚バラ肉は2cm幅を目安に切り、肉にごく少量の塩(分量外)をふる。粉ソースとウスターソース、ビールを混ぜておく。
フライパンにたっぷりの湯を沸かす。麺を入れ、軽くほぐれてきたら(10~30秒が目安)ザルに取る。
フライパンを強火にかけ、サラダ油と2を広げて入れる。麺はできるだけ触らず、片面に焼き目をつけていく(2分が目安・ビールでも飲みながら待つ)。麺に好みの焼き目がついたら皿に取る。キッチンペーパーなどでフライパンの表面を拭く。
豚バラ肉を一枚ずつ広げて入れたら、再度フライパンを強火にかける。動かさずに焼き、片面にこんがりと焼き目がついたら3の麺と同じ皿に取る。
肉の脂を拭かずにフライパンを強火にかける。キャベツを広げるように入れ、片面に焼き色がついてきたら、4の麺と豚バラ肉を戻す。
1のソースを加え、揚げ玉を入れる。全体をからめながら炒めて水分がとんだら皿に盛り、紅生姜を添え、青海苔を散らす。
文:松浦達也 撮影:平松唯加子