“韓国風味噌鍋スープ”をつくるときに大切なこととは?作家、ミュージシャン、映画監督など幅広く活躍をしている辻仁成さんは、本誌の連載「キッチンとマルシェのあいだ」でも書いているように、多彩で美味しい料理をつくります。その辻さんは「パリはスープの宝庫」と言います。パリに住んで18年の辻さんによる、やさしいご馳走“パリ・スープ”のレシピです。
今から18年前、パリに移り住んだばかりの頃、和食と言えば高級料理で、中心部、オペラ地区まで行かないと日本人シェフが作る本格和食はなかなか食べられませんでした。一方、中華レストランと韓国レストランは市内各所に名店が点在しており、とくに韓国レストランは安くて美味く、中華味噌よりも韓国味噌の方が日本人的には口にあうことから週一の割合でお気に入り韓国レストランに通っておりました。
江國香織氏との共著『冷静と情熱のあいだ』が韓国でもベストセラーになっていて、また、韓国作家ゴン・ジーヨン氏との共著『愛のあとにくるもの』もヒットしたことを受けて、ぼくが原作者だとバレてから、味噌をもらったり、デザートくれたり、頼みもしないメインディッシュが毎回サービスされたり、結構好待遇を受けたものです。そのせいで韓国料理にも精通するようになりました。
最初に覚えた「ケイサンソチョセヨ」は「お会計お願いします」という意味ですが、ぼくの発音が受けて、大いに盛り上がりました。その時、通っていた店のシェフに教わったのが、韓国味噌鍋、テンジャンチゲです。習ったというか、「これとこれを入れて煮込め」と言われて味噌を手渡されただけですが、その特製味噌のおかげで、結構簡単にプロの味を再現することが出来ました。笑。テンジャンチゲが味噌チゲ(鍋)、スンドゥッブが豆腐チゲのことで、ぼくはどっちも好きなので、豆腐と味噌を使った、いいところどりの辻家我流韓国風味噌鍋を作るようになります。
大事なことはただ一点。韓国唐辛子粉を使うことですが、日本の唐辛子、一味などは超辛すぎてこのスープには向きません。日本の明太子もこの韓国の唐辛子粉を使用しているらしいですね。辛くなく風味豊かなので、煮物には最適です。まず、大事なのは、この韓国唐辛子粉を見つけること。それもマイルドなものを探すこと。これさえあれば、美味しい韓国風味噌鍋スープが出来ること請け合いです。この寒い季節、本当に重宝する身も心も芯から温まるホットなスープでありながら、この連載の主題、まさに食べるスープの真骨頂でもある韓国風味噌鍋スープ、さあ、一緒に作ってみましょう!
★ スープペースト | |
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・ 胡麻油 | 大さじ1 |
・ 韓国粉唐辛子 | 大さじ1/2(辛いのが好きな方は唐辛子の量を調整してください) |
・ おろしにんにく | 小さじ1/2 |
・ 鶏がらスープ | 小さじ1 |
・ 醤油 | 大さじ1/2 |
・ 砂糖 | 小さじ1 |
・ 日本酒 | 小さじ1 |
大根 | 5cm |
豚薄切り肉 | 100g |
合わせ味噌 | 大さじ1 |
あさり | 10個 |
えのき | 1房 |
絹豆腐 | 1丁 |
だし汁 | 500mL |
ねぎ | 適量 |
卵の黄身 | 1個(生) |
胡麻油 | 適量 |
小さなボウルにスープペーストの材料をすべて入れ、混ぜておきます。
お鍋でだし汁をつくります。今回はだしパックを使用し、500mlほどをつくりますよ。
さて、まず大根に火を入れてください。大根が柔らかくなってきたら豚薄切り肉を加え、スープペースト大さじ1を入れよく混ぜます。
先の具に火が通ったら味噌大さじ1を溶かす。
豆腐、えのき、あさりを加え、よく煮立て、最後に卵の黄身を落とし、ねぎをふりかけ、胡麻油をサっと回し掛けすれば、完成となります。具の種類や量はお好みで調整してください。ぼくは我流ですから、野菜も、肉も、貝はその時あるものでつくっちゃいます。マシッソヨー、ボナペティ!
文:辻 仁成 写真・協力:Miki Mauriac