味噌に漬けることによって水分が抜け、旨味が凝縮した金目鯛は酒の最高のお供になります。燗酒にぴったりな「魚の肴」を和食の名店「銀座 小十」の店主、奥田透さんに習いました。
奥田さんが愛用しているのは、京都の西京味噌の粒味噌タイプのもの。「漉した味噌より、粒味噌のようにボディのある味噌らしい味のほうが、魚に合うように思います」。白味噌なので塩分が立たず、味わいは甘くて上品だ。ここにみりんと酒を混ぜれば味噌床の完成。漬け込みが2日だと魚のフレッシュな味わいもまだあり、3日だと味噌の風味がしっかりと浸透する。
西京味噌 | 500g(粒味噌) |
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みりん | 75mL |
酒 | 15mL |
金目鯛の切り身 | 3切れ(タラ、サワラなどでもよい) |
金目鯛は、キッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取って、皮目に細く包丁を入れる。金目鯛やタラなどの脂の多い魚は、包丁を入れることで焼く際に余分な脂が外に出て、身が縮みすぎず安定した焼き上がりになる。サワラの場合は皮を剥ぐ。
バット全体に薄く塩をふり、魚を並べて上からも塩をふる。塩をしなくても漬けられるが、味噌床に漬けるときは、先に塩をして脱水しておくと味が浸透しやすい。塩加減は、塩焼きにして食べるときよりも少なめに。
ボウルに西京味噌を入れ、みりんの半量を入れて混ぜる。全体になじんだら残りのみりんも加えてよく混ぜる。
酒も加えて混ぜる。
この分量なら、3~4切れを漬けるのにちょうどよい。魚のほかに、鶏肉などを漬けてもおいしい。
切り身3切れが並ぶ大きさの保存容器に、味噌床の約3分の1量を満遍なく敷き、その上にガーゼを貼りつけるようにのせる。ガーゼは二重にして、容器の面積の2倍以上用意するとよい。
6のガーゼの上に魚の切り身を並べて、折り畳んだガーゼをかぶせる。
7の上から味噌床の残りをすべてのせて全体にならし、余ったガーゼをかぶせて魚と味噌床をよく密着させる。蓋をして冷蔵庫で2~3日漬け込む。
焼く前にガーゼをめくり魚を取り出す。残った味噌床は2~3回は使える。魚臭さが気になった場合は、酒少々でゆるくのばし、一度火にかけて冷ましてから使うといい。
家庭用の両面焼きグリルで焼く。グリルをよく温めてから、魚を入れる。味噌漬けは焦げやすいので、弱めの火でゆっくりと時間をかけて焼く。全体に火が通って魚の身が固まるまではあまり触らない。色良く焼けたら表側に刷毛でみりんをひと塗りして艶を出し、表面が乾いたら完成。
西京味噌の甘い香りが鼻腔をくすぐる。3日間漬け込んだ切り身はキュッと身が締まっているが、箸を入れればホロッと崩れる柔らかさ。噛めば優しい白身の旨味と味噌の味わいがじんわりと広がる。
お酒好きでもある奥田さん。一番飲むのはビールやシャンパンなどの泡ものだとか。「今回ご紹介した料理の中で、個人的には味噌幽庵焼きが一番好きです。手に入れば、ノドグロやマナガツオも絶品。泣ける旨さです」。
文:鹿野真砂美 写真:名取和久
※この記事の内容はdancyu2013年1月号に掲載したものです。