中国おかずの大定番「回鍋肉(ホイコーロー)」。今回は神楽坂の名店「梅香(メイシャン)」に、絶品回鍋肉をつくるためのコツを習ってきました。
回鍋肉(ホイコーロー)は麻婆豆腐や青椒肉絲(チンジャオロースー)と並ぶ、中国おかずの人気者。豚肉とキャベツに甘辛の味噌味がからんだ食欲をそそる味わいでおなじみだが、実は本式回鍋肉はちょっと違う。「キャベツを使うのは日本式。豚肉も日本ではいきなり薄切り肉を使ったりしますが、本当は豚の皮付き塊肉をゆでて薄く切ってから炒めるんです」と、回鍋肉の故郷・四川に何度も足を運んでいる「梅香(メイシャン)」(東京・神楽坂)の山村光恵シェフ。
そもそも中国語で“回”とは「帰る」「戻す」の意。つまり、本来の回鍋肉は「一度調理した肉を鍋に戻す」料理なのだ。「あらかじめ塊でゆでることで豚肉の旨味が凝縮するし、炒める際も手早く香ばしく仕上がります。ひと手間ですが、ずいぶん違いますよ」
さらには、ゆでた豚肉も野菜も“2段階炒め方式”を推奨。一度目はそれぞれにベストの食感を引き出すよう時間差をつけて材料を投入。ここでほぼ火を通し、二度目の炒めで味つけをして一気に仕上げる。これで味も食感もビシッと決まった仕上がりになるのだ。
今回は豚肉のおいしさが際立つスタンダードな“肉食”バージョンをご紹介。
実際に使うのは200gだが大きめの塊のほうが旨味が逃げないので、ゆで豚肉は500~600gでつくるのがお薦め。冷蔵庫で約3日間保存可。回鍋肉のほかにもさまざまな料理に活用できる。
豚バラ肉 | 500~600g |
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長ねぎ | 約8cm |
生姜 | 1片 |
キャベツ | 1/8個 |
ピーマン | 1個 |
豆板醤 | 大さじ1と1/2 |
豆豉 | 小さじ1弱(大豆を塩漬けにし、発酵させて乾燥させたもの。味噌のコクと独特の風味、まろやかな塩気がある) |
砂糖 | ひとつまみ |
紹興酒 | 小さじ1 |
サラダ油 | 適量 |
鍋に豚肉、長ねぎ、生姜を入れ、肉がかぶるくらいの水(分量外)を注ぎ入れて、強火にかける。沸いたら弱火にし、コトコト沸くくらいの火加減を保つ。
途中、アクが浮いてきたらその都度すくい取る。豚肉の表面が水面より出てしまうようなら湯を足し、20~30分ゆでて、取り出す。
ゆで汁は炒める際に使うので、漉しておこう。
豚肉が常温に冷めたら、約200gを取り分けて厚さ2~3mmに切る。長ければ、食べやすい長さに切ろう。
キャベツは芯を切り除いて約5cm角に切り、一枚ずつばらしておく。
ピーマンは縦半分に切り、ヘタと種を除く。さらに縦に五~六つに切る。
中華鍋か深めのフライパンを煙が立つくらいまで強火でから焼きし、冷たい油1/2カップを流し入れて、玉杓子で全体に回してから油をオイルポットなどに戻す。
すぐに7の鍋を中火にかけて油大さじ2を入れて鍋底に回し、4の豚肉を一枚ずつ広げて並べ、強火にする。
10~15秒そのまま加熱したら、玉杓子かヘラで全体をざっと混ぜながら炒める。
9にキャベツ、ピーマンを順に加えて、大きく混ぜながら炒める。ここも必ず強火で!焦げつきそうになったら、3のゆで汁を約大さじ1加えて全体に回して炒めよう。
全体に油が回ってキャベツがツヤツヤになったらバットなどに取り出す。
11の鍋に油大さじ2弱、豆板醤を入れて強火にかけ、焦げつかないよう玉杓子かヘラで混ぜながら炒める。
豆板醤の香りが立ったら、ゆで汁大さじ1を加えて混ぜて強火にし、11の下炒めした材料を戻し入れ、全体を混ぜ合わせながら炒める。
豆板醤が全体に回ったら、豆豉、砂糖、紹興酒をその都度混ぜながら順に加えて手早く炒める。紹興酒の水分がとんで、全体の色合いが均一になったら出来上がり!
東京・神楽坂にある四川料理店「梅香」を営むオーナーシェフ。四川にも何度も足を運び、本場の味を研究している。
文:遠藤綾子 写真:工藤睦子
※この記事の内容はdancyu2013年4月号に掲載したものです。