愛玉子(オーギョーチ)は、台湾固有の植物の種からできる不思議なデザート。水の中で種をもむと、みるみるうちにゼリー状に固まっていきます。愛玉子そのものにはほとんど味がないので(紅茶の出がらし味!?)、うす甘~いレモン味のシロップをたっぷりかけていただきます。
台湾のデザートは、潤いに満ちている。器にたっぷり注がれたシロップはうっすらと甘く、ゼリーやトッピングがたゆたう様も艶めいて、熱と湿気を帯びた南国の空気によくなじむ。
「水分がゆったりと入っていて、シロップの味がうっすら甘いのが台湾デザートの特徴。今回ご紹介したレシピも、すべてうるうる、うす甘に仕上げています」と、折に触れて台湾を訪れ、現地の味に親しんで来た内田真美さんは話す。
「愛玉子は、夜市や通りがかりの店先で気軽に買うデザート。気温も湿度も高い屋外で、つるりとした食感と程よい甘味、酸味が心地よく、台湾らしさを感じさせてくれます。店では大きな型でつくってレモンの輪切りなどをあしらったものが並べられますが、今回もそのイメージで、大きな器に盛りつけました」
台湾には青いレモンが多いので、その風味に近づけるためにシークヮーサー果汁を加えている。
水の中で種をもんでつくる、植物性のゼリー。ゼラチンでも寒天でもない独特のつるっ、もきゅっとした食感がやみつきに。つくり置きができないので、出来たてを急いで食べるのが醍醐味。種はネット通販などで入手できます。
愛玉子の種 | 20g |
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水 | 1L |
★ シロップ | |
・ 水 | 500ml |
・ きび砂糖 | 120g |
・ レモン果汁 | 大さじ2 |
・ シークヮーサー果 | 2個分 |
飾り用のレモン | 適宜 |
シークヮーサーのスライス | 適宜 |
シロップをつくる。水にきび砂糖を加えて火にかけ、ひと煮立ちさせる。粗熱が取れたら、冷蔵庫に入れてよく冷やしておく。
二重にしたガーゼを水で濡らして絞る。愛玉子の種をガーゼの中央にのせてふんわり包み、ゴムで結わく。
ボウルに1Lの水を入れ、種に水を行き渡らせるような気持ちでもむ。
5分ほど経つと種から出たエキスで水がゲル状になってくる。感触が重くなったらもむのをやめる。
4を漉して、種やガーゼの繊維を取り除く。
ボウルに入れたまま、30分~1時間ほど常温で固まるのを待つ。触ってみてぷにぷにしていたら完成。
食べる直前に冷やす。冷蔵庫に入れて冷やすと離水してしまうので、ボウルを重ねて氷で冷やす。
冷たく冷やしたシロップに、レモンとシークヮーサーの果汁を加える。
愛玉子を大きなスプーンですくって器に盛り、8のシロップをたっぷりかけて、スライスを飾れば完成。
台湾の街中では、愛玉子をストローで飲みながら歩く人も多い。そのイメージで氷と一緒にグラスに入れ、飲んで楽しむのもまたよし。台湾の青いレモンの風味を、シークヮーサーで補います。
雑誌、書籍、広告などで幅広く活躍中。台湾の食や人に魅せられ、イベントや著作を通して台湾の魅力を発信している。著書に『うちで食べる台湾式ごはん』(マイナビ)、『りんごのかんたんおうち菓子』(主婦と生活社)など。
文:本城さつき 写真:工藤睦子
※この記事の内容はdancyu2013年9月号に掲載したものです。