言わずと知れた老舗洋食レストラン「煉瓦亭」のオムライスは、包むのではなく混ぜるという独特なスタイル。そんな唯一無二のオムライスのつくり方を習いました。
「実はオムレツより簡単です」。料理長の大澤正季さんはニッと笑い、勢い良くフライパンにボウルの中身を注ぎ込む。ザザッ、トントントン、と小気味よくフライパンを振ること30秒。“元祖オムライス”の出来上がり。
創業明治28年。銀座の老舗洋食屋「煉瓦亭」の元祖オムライスは、たまごにご飯を混ぜ込んだ独特なスタイル。
「明治33年頃のことです。新人の練習を兼ねて焼いたオムレツとご飯が当時の賄いの定番でした。調理場はいつも忙しく、隅で立ちながら食べるような毎日。いっそオムレツにご飯も混ぜて焼いてしまえば洗い物も少ないから、と試したのが始まりです。それがお客様の目に留まり、ご要望が多く正式メニューになりました」
四代目店主の木田浩一朗さんは話す。
卵ご飯の外側をそうっと焼き固めただけの半熟オムライスは、リゾットのような柔らかい口当たり。甘辛の醤油味に意表を突かれるが、誰にとってもなじみ深い美味しさだ。レシピは極めて手軽ながら、120年もの間客を魅了する。老舗の凄みを感じる一皿なのである。
卵 | 4個(LLサイズ) |
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合挽き肉 | 100g(牛豚同量) |
玉ねぎ | 1/8個(20g)(粗みじん) |
マッシュルーム | 20g(薄切り、缶詰) |
グリーンピース | 20粒 |
温かいご飯 | 400g |
サラダ油 | 大さじ4 |
醤油 | 大さじ1 |
砂糖 | 大さじ1 |
塩 | ひとつまみ |
白胡椒 | 4ふり |
★ 仕上げ用 | |
・ ケチャップ | 適量 |
・ パセリ | 適量 |
フライパンに油大さじ2を中火で熱し、挽き肉と玉ねぎを入れて炒める。玉ねぎが透き通り、肉がパラパラにほぐれてきたら、砂糖、醤油を入れる。水分をとばしながら1分ほど炒め、ボウルなどに取り出す。
別のボウルに卵を割り入れ、マッシュルーム、グリーンピース、塩、白胡椒、1を入れる。
温かいご飯を入れ、ご飯粒、一粒一粒に卵液がしっかりからまるように手早く混ぜる。
フライパンに油大さじ2を強めの中火で熱し、少し煙が出たら、3の半量を流し込む。フライパンを揺すりながら、菜箸で外側から内側へ10回ほどかき混ぜる。
フライパンの手前を持ち上げ、片側に寄せる。オムレツをつくる要領で、フライパンの柄をトントンと叩き、縁のカーブを利用して形を整える。オムライスが一回転したら、皿に盛りつける。同様にして残りの半量もつくり、仕上げにケチャップとパセリを添えて完成。
文:渡海碧音 写真:飯貝拓司
※この記事の内容はdancyu2017年4月号に掲載したものです。