湯島にある「自家焙煎珈琲 みじんこ」では、ありふれた材料でつくるにもかかわらず、これ以上ないご馳走と化したフレンチトーストが味わえる。
なんでもない材料で、特別なご馳走ができるという奇跡に、湯島で出会った。卵やパンなどは、ごく普通のものでいい。パンを切って、卵液に10分浸して、フライパンで焼くだけ。とはいえ、もちろんそれだけじゃない。みんなが驚くマジックにはタネも仕掛けもちゃんとあり、このフレンチトーストの場合は大さじ1杯の“甘酒”。チーフパティシエの近藤さつきさんが、自然な甘さを探し求めた結果見つけた隠し味だ。しかも甘さ以外にも、生地に柔らかいとろみが出るといううれしいおまけ付き。洋風スイーツを日本の伝統食品が格上げしているなんて、ご近所の天神様もきっと大喜びに違いない。
さらに、生地を魅力的に仕上げるのは甘さだけじゃない。ぎりぎりまで焦がして攻め切った、カラメルのビターな香ばしさをまとわせることが不可欠。攻めたカラメルなんてプロの技という気もするが、鉄製のフライパンなら簡単。砂糖を入れて中火にかけ、焦げるまで触らずにじっと待つのが肝心。
ちなみに近藤さんが家で愛用しているのは、家具量販店で売っている手頃な価格のスキレット。求めよ、さらばなんじにも、フレンチトーストの奇跡が与えられん!
フランスパン※ | 2枚(バタールなど太めのもの) |
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バター | 適宜(食塩不使用) |
砂糖 | 大さじ1 |
★ 卵液 | |
・ 卵黄 | 2個分 |
・ 砂糖 | 大さじ1 |
・ 甘酒 | 大さじ1(市販の濃縮タイプ) |
・ 牛乳 | 100ml |
・ バニラエクストラクト※2 | 2g |
★ カラメルシロップ | |
・ 砂糖 | 100g |
・ 熱湯 | 100ml |
※1 厚さ3cmに切る。冷凍しておけば、いつでもつくれて便利。
※2 バニラビーンズをアルコールに漬けて香りを抽出したもので、たまご臭さを消してくれる。バニラエッセンスやバニラオイル2滴でも可。
小鍋で砂糖を中火にかけて溶かす(ヘラなどでいじらないこと)。時々鍋を振り、醤油くらいの焦げ色がついたら火を止め、熱湯を少しずつ加える。カラメルが跳ねるので、ザルを鍋にのせた上から湯を加えると安全だ。泡立て器で底から軽くかき混ぜたら完成。
卵液の材料をすべてボウルに入れ、泡立て器で混ぜ合わせる。
フランスパンを電子レンジ(600W)で30秒加熱する(冷凍の場合50秒)。
2の卵液にフランスパンを浸す。片面5分ずつが目安。
フライパンにバターを薄くのばし、砂糖を満遍なく敷いて中火にかける。
2~4分ほどして、軽く煙が上がり香ばしい香りがしてくるまでカラメリゼする。
4をフライパンに並べ、残った卵液をかける。弱火でじっくり、片面2分ずつ焼く。
こんがり焼き色がつけば完成。お好みでカラメルシロップをかけて召し上がれ。
文:馬田草織 写真:公文美和
※この記事の内容はdancyu2017年4月号に掲載したものです。