目が覚めるような酸味が魅力のレモンカードは、午後のひとときにぴったりの味。ビビットカラーは、おやつの場をパッと華やかにしてくれます。材料はたったの4種類。手づくりの香りを、ぜひ味わってください。
クリームのようにとろとろな口当たりで、ジャムのような甘味とレモンの香りが爽やかなイギリス生まれのおやつ。その名も“レモンカード ”。
パンやスポンジケーキと一緒に食べると、きゅんっとした酸味が口に広がります。
日本ではまだまだメジャーではありませんが、イギリス人にとっては子供の頃から馴染みのある、アフタヌーンティーに欠かせないおやつ。
レモン風味なことはわかるけど、“カード”って一体どういう意味なのでしょう。
「カードは“凝固した”という意味。果汁とバターと卵と砂糖を混ぜてクリーム状にする、いわばフルーツバターのようなものです」と、お菓子・料理研究家の森崎繭香さんが教えてくれます。
「レモンカードの甘酸っぱくて、爽やかな味わいにイギリスの人々はメロメロ。卵が高騰した戦時中は、代わりに野菜のピューレを練り込んでつくったほどの国民食なんです」
イギリス人が、レモン好きだったとは。フルーツの名産国といった印象はないですよね。
「レモンがあまり取れなくて貴重なものだったからこそ、先人たちが知恵を絞って、その風味や味わいを保存しようとしたのですね。なるべく長持ちするように、イギリスでたくさんつくられている乳製品や卵と合わせることで、レモンカードが定着したのでしょう」
英国流の保存食というと、なんともお洒落な響き。
「イギリスには日本よりも柑橘を使ったお菓子がいっぱいあります。レモンメレンゲパイや、レモンドリズルケーキなど、もしかしたら一度は食べたことがあるのではないでしょうか」
お菓子屋さんでレモンパイ、レモンケーキとして売られているものですね。それなら見覚えがあります!
レモンカードをつくれるようになれば、おやつづくりの引き出しもグンっと増えそうです。
「レモンカードのつくり方はとっても簡単。レモンとバターと卵と砂糖があればすぐにでき上がります。バターと国産レモンが手軽に手に入る日本で馴染みがないのが、本当に不思議だし、もったいないですよね」
今回、森崎さんが披露するのは、湯せんで温めながらつくるクラシックなレシピです。
「気をつけることは、湯せんするときの温度。高すぎるとバターが分離してしまいます。低すぎても仕上がりがなめらかになりません。材料をボウルで合わせたら、ぐるぐると大きく、絶え間なく混ぜ続けるのがおいしくつくるコツですよ」
卵 | 1個 |
---|---|
グラニュー糖 | 50g |
レモンの絞り汁 | 50g |
無塩バター | 50g |
レモンの皮 | 1個分(すりおろし) |
バターは1cm角に切っておく。レモンは果汁を搾り、皮の黄色い部分をすりおろしておく。70〜80度の湯を温める。
レモンは断面にフォークを刺しながら搾ると、面白いように果汁が沢山出ますよ。
ボウルに卵を割り入れて、黄身と白身がすべて混ざるまで泡立て器で溶きほぐす。グラニュー糖を加えて混ぜる。
1にレモン果汁を加え、混ぜ合わせてからバターを入れる。
バターを1cm角に切るのは、溶けやすくするため。塊のまま加えると溶けるのに時間がかかり、レモンの香りもとんでしまいます。
用意していた湯にキッチンペーパーを浮かべ、その上からボウルをのせる。泡立て器で混ぜながらバターを溶かし合わせる。
口当たりをなめらかにするために濾して、レモンの皮を加えて混ぜ合わせたらでき上がり!
濾して、レモンの皮を加えると、まろやかで風味が強いレモンカードができ上がりますよ。
「酸味はレモン由来なので、いつも同じ味わいに仕上げるわけではありません。国産レモンを使うと酸味が穏やかなので、マイルドに仕上がります」
何度もつくるうちに好みの味をつくれるようになるのも、手づくりレモンカードの愉しみ方です。
森崎さんからひと言。
「まずはおおらかにつくってみるべし!」
1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。
文:長嶺李砂 写真:公文美和