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千葉「はば海苔雑煮」&新潟「新発田の鮭親子雑煮」&福井「若狭小浜の黒糖雑煮」

千葉「はば海苔雑煮」&新潟「新発田の鮭親子雑煮」&福井「若狭小浜の黒糖雑煮」

お雑煮ワールドの世界の入り口をくぐってしまったら最後、お雑煮の奥深い世界にハマってしまうことは必定です。まさにその深みにハマった粕谷浩子さんが著した『お雑煮マニアックス』より一部を抜粋してご紹介。みんなの「普通」がそれぞれ違っていて、並べてみるとなんて個性的、魅力的なんでしょう。今回は千葉、新潟、福井という海辺の街に伝わるお雑煮レシピ、3種類が登場します!

千葉の「はば海苔雑煮」で磯の香りをたっぷり堪能

はば海苔雑煮

「はば海苔雑煮」のつくり方

材料材料 (2人分)

角餅2個
だし400ml(鰹、昆布)
はば海苔1枚
アオサ適量
鰹節適量
醤油大さじ1
少々

1はば海苔をあぶる

玉ねぎは、くし形切りにする。はば海苔とアオサはフライパンであぶる。あぶった後に手でパラパラにもみほぐす。

2雑煮をつくる

だしを火にかけ、醤油と塩で調味する。

3餅を焼き仕上げる

餅を焼き、お椀に入れる。2に注ぎ最後にはば海苔とアオサ、鰹節をかける。

漁師町ならではのさわやかな海苔のお雑煮
千葉県内もいわゆる江戸雑煮に近い関東雑煮圏内で、すまし仕立ての汁の中に青菜や鶏肉が入ったお雑煮が主流。
しかし、今回ご紹介している九十九里地区のように個性的なお雑煮も存在します。

「はば海苔」は、いわゆる海苔とはまったく異なるので、一度食べてみないとなかなか味が想像できないかもしれませんが、もともとは地元の漁師さんたちがアサクサ海苔の代用品として食べていたとのこと。
だから市場にはほとんど出回ることなく地元で消費されていた、まさにご当地食材。
ちょっと不恰好だけど、磯の香りが強く野趣にあふれています。
海苔とは言っても、むしろこれは薄い昆布でしょ?と言いたくなるような塩気の多いパリパリした食感で、磯の香りも食感も昆布に近いです。

アオサといっしょにふりかけて鰹節をかけると、とてもさわやかな風味で、地元の方が「これがないと正月ではない」、と言われるのもわかる気がします。

鮭とイクラで新年を祝う、新潟の「新発田の鮭親子雑煮」

新発田の鮭親子雑煮

「新発田の鮭親子雑煮」のつくり方

材料材料 (2人分)

角餅2個
だし400ml(昆布)
塩鮭1切
鶏もも肉1/4枚
大根3cm
にんじん3cm
糸こんにゃく1/3袋
ぎんなん4個
かまぼこ2切
ごぼう1/3本
醤油大さじ1
イクラ適量

1具材を切る

大根、にんじんは短冊切りに。ごぼうはささがきにして水にさらしてあくを抜く。塩鮭、鶏肉、糸こんにゃくは適当な大きさに切る。

2つゆをつくる

だしに1とかまぼこを入れて、あくをとりながら煮る。醤油をいれる。

3イクラを半ゆでする

別の鍋でイクラの表面がうっすら白くなるまでゆでる(半ゆで)。

4餅を焼き、盛りつける

餅を焼き、2と3、ぎんなんといっしょにお椀に盛りつける。

長~く延びた地形に沿って、お雑煮も変化
新潟県は東西に長く延びた形です。
なんと端から端まで250km以上あるそうです。
くわえて沿岸部と山間部との文化の違いもあり、さまざまなタイプのお雑煮が存在します。

新潟市や今回ご紹介している下越地域の新発田市では、鮭とイクラの親子雑煮が主流。
新発田市はイクラをキラキラ光る生のままにせずに、あえて軽く火を通して半ゆでにし、中身がトロリとした状態で食べるのが特徴です。
新発田は毎年1月に「全国雑煮合戦」が行われている、お雑煮に熱い町でもあります。

県内のお雑煮のバリエーションは数えきれないほどたくさんありますが、上越地域では、鮭はあまり入れません。
短冊切りにした野菜の入った具だくさんのお雑煮であることは県を総じて同様ですが、山菜などが加わったものになります。

中越地域ではタンパク源として鶏肉・豚肉・鮭が入り混じり、まるで東西食文化の経過を見るようで面白いです。

福井の「若狭小浜の黒糖雑煮」は味噌汁に黒糖!?

若狭小浜の黒糖雑煮

「若狭小浜の黒糖雑煮」のつくり方

材料材料 (2人分)

丸餅4個
だし400ml(昆布)
田舎味噌大さじ2弱
黒砂糖適量

1だしで餅を煮込む

だしで餅を柔らかくなるまで煮込む。

2味噌を加える

田舎味噌を加えて調味する。

3仕上げる

お椀に盛りつけ、最後に黒砂糖をどさりとかける。

まるで「甘い味噌汁」みたいなお雑煮
だしで餅を煮て、味噌を加えて、以上!
「えっ?以上、ですか?」とたずねたくなりますが、潔いまでに具材が入っていません!
ただ味噌汁に餅を入れて、最後に黒砂糖をどさりとかけるだけ!

何でこういうお雑煮になったかと言うと、これも江戸時代の物流の花形「北前船」の影響なんです。
小浜の港に「北前船」が貴重な砂糖も運んできてくれたのです。
正月くらいは砂糖を食べたい、という庶民の思いが味噌汁に砂糖どさりの理由のようです。

ほかの地域のお雑煮を見ても、上に飾るのは鰹節だけ、またはかぶたけ、など非常に具が少ないです。
お隣の石川県も具が少ないのですが、福井県は味噌仕立てなので、まさに味噌汁といったいでたち。
海に面していて魚がとてもおいしい県にもかかわらず、お雑煮に魚介類はあまり入っていません。

ーー明日につづく。

お雑煮マニアックス
お雑煮マニアックス
B5変型判( 104 頁)
ISBN:9784833475624
2016年11月28日発売 / 1,100円(税込)

文:粕谷浩子 写真:大塚七恵

粕谷 浩子

粕谷 浩子 (お雑煮研究家、料理研究家)

1972年生まれ。株式会社お雑煮やさん代表。お雑煮の魅力に取りつかれ、日本各地の雑煮事情を知るべく、銭湯でおばあちゃんたちに聞き込みを開始。レシピを聞き出し、あわよくばご馳走してもらいながら情報収集を続けている。夢は、日本のみならず世界にお雑煮マーケットをつくること。