おやつの時間ですよ。
黄金色の大学芋をとろとろの蜜でつくりましょう。

黄金色の大学芋をとろとろの蜜でつくりましょう。

秋のおやつに大学芋はいかがですか。揚げたり、蜜をつくったりとハードルが高く感じるかもしれませんが、コツさえつかめば、誰でも美しい大学芋がつくれます。お菓子・料理研究家の森崎繭香さんが陥りがちな失敗の解決策を教えます。

大学芋の悲劇。

「“大学芋”と聞くたびに必ず脳裏に浮かぶのは、母がつくってくれたべっこう飴風の大学芋です!」
お菓子・料理研究家の森崎繭香さんは想い出を振り返ります。
「蜜がカチカチですごい硬かった記憶があるんです。それはそれでおいしかった気もするんだけど、お店で買う大学芋は綺麗な黄金色に揚がっていて、蜜が絶妙なとろとろ加減なんですよね」
大学芋はさつまいもを油で揚げて、蜜を絡めるので、おやつの中でも一風変わったつくり方。SNSなどを通して、森崎さんの元には大学芋にまつわる悩みが寄せられるそうです。
うーん、正しい大学芋のつくり方ってなんでしょう。まずは、よくある悲劇の報告から分析していきましょう。

注意報①蜜の絡んでない大学芋は、もはやただの芋である。

沢山つくった大学芋、翌日も楽しみたい!
ところが翌朝、冷蔵庫を開けると絡んでいた蜜はすべて落ちきっており、意気消沈。芋の食感はモソモソ。大学芋はつくりたてじゃないと蜜が絡んだ状態にならないの?

大学芋
2日目の大学芋は蜜がサラサラ。再びさつまいもと蜜が絡み合うことはない……。

注意報②歯にくっついて離れない。おかん風カチカチ大学芋。

最も報告の多い悩みが、蜜の粘度が高すぎるカチカチ大学芋。森崎さんのお母さんがつくったべっこう飴風大学芋もこのグループ。さつまいもと蜜を絡めるときに煮詰めすぎたのが原因かなのか、レシピの配合自体が不幸の始まりか?

大学芋
蜜の濃度が高すぎると、ひとつまみ食べたいだけなのに糸を引いて何個もくっついてきてしまいます。

注意報③目を離した隙に丸焦げ!揚げすぎ大学芋。

油で揚げてつくる大学芋。慣れない調理で「こんがり」をはるかに通り越し「お焦げ」のステージに上がってしまったという声も珍しくありません。
蜜を絡めて、黒胡麻を混ぜたら、どうにかなるかも……という淡い期待は捨てましょう。焦げ付いてしまったものは、どうにもならないのです。

丸焦げ大学芋
まるで冗談のような真っ黒さ。他人事ではありません!たった数分の判断と揚げ油の温度を間違えるだけで黄金色とは程遠い姿になってしまいます。

黄金色の芋にとろとろの蜜が絡む秘密。

大学芋のよくある失敗の原因が知りたくて、寄せられた声のもと実際に再現してみた森崎さん。
「まずは大学芋に必要不可欠なとろとろの蜜。醤油に砂糖と味醂を加えて煮詰めるだけのシンプルなレシピがありますが、時間が経つと蜜のとろみはすっかりなくなってしまいます。翌日もとろとろの蜜が絡んだ大学芋を楽しみたいのなら、水飴を使いましょう!」

スーパーでもよく見かける水飴ですね!
でもなんで水飴が蜜のとろとろを保ってくれるんですか?
「水飴に含まれるデキストリンという成分が活躍してくれるんです。水飴を精製するときに含まれるデキストリンには粘性と保水性の特徴があって、和菓子づくりでもツヤ出しや、保湿のために使われることがあります。蜜にとろみをつけて長く保たせるには水飴は絶対必要です」

ただし、水飴を入れるときは、気をつけなければならないことがあります。
「水飴を入れた蜜を煮詰めるときは、火を止めるタイミングが重要です!蜜がぶくぶくしたら、火を止めること。煮詰めすぎた水飴の蜜を芋に絡めると、注意報②のカチカチ大学芋になってしまいますよ」

大学芋

とろとろな蜜のつくり方はわかりました。
森崎さん、さつまいもを上手に揚げるコツはあるのでしょうか。
「さつまいもは水分が少ない食材です。揚げ油の適切な温度調整ができないと、あっという間に丸焦げになってしまいます!」
森崎さんは注意を促します。
「美しい大学芋を揚げるためのコツは、二度揚げすることです。最初は160度でじっくり中まで熱を通して、180度でもう一度揚げましょう。高温で表面だけをカラッと揚げることで、さつまいもが黄金色に仕上がります」
揚げ油の温度を見極める方法を交えながら、森崎さんが失敗しない大学芋のつくり方を披露します。
とろとろの蜜をつくるコツを踏まえて、黄金色に輝く大学芋をぜひつくってみてください。

失敗しない大学芋のつくり方

材料 材料 (2人分)

さつまいも 2本
水飴 50g
大さじ1
醤油 小さじ1
黒胡麻 小さじ1
揚げ油 適宜
材料

1 さつまいもを切る

さつまいもは表面をよく洗って皮つきのまま乱切りにし、10分ほど水にさらす。

さつまいもを切る
水にさらすことでさつまいものアクを抜きます。

2 さつまいもを揚げる

さつまいもを水にさらしている間に鍋へ揚げ油を注ぎ、160度まで熱する。菜箸を一度濡らしてから水気を拭き取り、油の中へ入れて温度を確かめる。さつまいもの水気をキッチンペーパーでしっかり拭き取り、鍋に入れる。5分揚げてから、取り出す。

揚げ油
揚げ油の中へ入れた箸の周りに、泡がゆらゆらと揺れるくらいが160度。菜箸から出た泡が元気よく水面に向かってきたら高温の証拠。あっという間にさつまいもは焦げてしまいます。
さつまいもを揚げる
さつまいもを揚げる
黄色い実の部分が、ぷく~っと膨らんだら、中まで熱が通った合図です。油から引き上げましょう。

3 さつまいもを再び揚げる

揚げ油を180度まで熱する。菜箸を一度濡らしてから、水気を拭き取り、油の中へ入れて温度を確かめる。再びさつまいもを入れて、2分ほどで引き上げる。

さつまいもを再び揚げる
菜箸をもう一度濡らして水気を拭き取り、揚げ油の中へ入れる。箸から、真っ直ぐに泡が上がってくれば180度。
再び揚げる
再び揚げる
さつまいもを二度揚げることで、中はしっとり外はカリッと揚がります。

4 蜜をつくる

鍋に水飴、水、醤油を入れて弱火にかける。ぶくぶくと煮立ってきたらすぐに火を止める。

蜜をつくる
蜜をつくる
ゴムべらなどで水飴を溶かしながら煮立てます。
蜜をつくる
蜜がぶくぶくしたら、火を止めましょう!

5 蜜を絡ませる

揚げたさつまいもを鍋に入れて蜜と絡め、黒胡麻も加えて混ぜたらでき上がり!

蜜を絡ませる
蜜を絡ませる
蜜を絡ませる
黄金色にカラッと揚がったさつまいもに、とろとろの蜜が絡んだ大学芋は家でもつくれます!秋のおやつにめし上がれ。

大学芋のバリエーションが広がる切り方。

さつまいもは切り方を変えるだけで見た目はもちろん、蜜との絡み方が変わって味わいも変わります。基本をマスターしたら、アレンジして楽しんでください。

皮を剥いてから乱切りにすると、よりソフトな食感に。
食べやすいスティックタイプ。全体的に蜜がよく絡みます。甘党の人におすすめ。
皮付きのまま、輪切りに。芋らしくてかわいい見た目です。

教える人

森崎繭香

森崎繭香

1976年、横浜生まれの八王子育ち。お菓子・料理研究家/フードコーディネーター。料理教室講師、パティシエを経て、フレンチ、イタリアンの厨房で経験を積み、独立。書籍、雑誌やWEBへのレシピ提供、ラジオ・テレビ出演など幅広く活動中。身近な材料を使った自宅でもつくりやすいレシピを心がけている。2019年には、人と犬が一緒に食べられる無添加おやつとごはんのオンラインショップ「one's daily」をオープン。著書に『型がなくても作れるデコレーションケーキ』(グラフィック社)、『小麦粉なしでつくる たっぷりクリームの魅惑のおやつ』(日東書院本社)、『米粉で作る うれしい和のおやつ』(立東舎)。最新刊は『はじめてでもおいしくできる! おうちおやつ』(文化出版局)。

――つづく。

文:長嶺李砂 写真:公文美和

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長嶺 李砂(ライター・編集者)

1984年、青森県十和田市生まれ。子供時代の夢だったパティシエになるも紆余曲折、今は主に書籍を手がける編集者。食や暮らしにまつわる企画に関わることが多い。『スパイスでおいしくなるand CURRYのカレーレッスン』(立東舎)、『2LDK、5人家族。』(光文社)、『5つの味つけ黄金比』(学研プラス)、『おつかれさまスープ』(学研プラス)などの編集に携わる。東京都・若林にある青森の地酒と郷土料理の店『酔処みね』で、木曜日に働いています!