めくるめく食欲の秋。丸々と太って、実がねっとり柔らかくなった里芋はいかがですか?旬の時季を迎えた里芋を煮物にしか使わないなんてもったいない。料理研究家の植松良枝先生が里芋の魅力を存分に味わえるレシピを披露します。
秋冬の根菜類の旬は割とゆっくり訪れますが、里芋は9月、10月に入るとどんどん店頭に並んできます。秋めいてくると里芋の季節だという想いになりますね。
里芋を求めるときは、泥付きのものが良いでしょう。しっとりとして、黒く粘土質な香りの土がついているものだと、滑らかでねっとりとしたおいしい里芋であることが多いです。
泥がついてなくて、皮がヒビ割れしてしまっているものは、乾燥によって実が硬く変化してしまっているので注意しましょう。
里芋を買ってきたら使う前にぜひしてほしいのが、たわしでしっかりと洗って表面を乾かすということ。
「今晩、煮物が食べたいから」と買ってきた里芋を慌てて洗い、濡れたまま皮を剥いて煮物をつくっても、あまりいいことはありません。湿り気を帯びてぬるぬるとして剥きにくいこともありますが、土臭さが抜けないというか、どこか土っぽい味わいの煮物になってしまいます。
とくに里芋の味を存分に楽しめるような淡い味わいの煮物をつくりたいのであればなおのこと。
里芋は、気持ちと時間に余裕を持って買ってほしいい野菜なのです。
和食のイメージが強い里芋ですが、皮ごとローストすると垢抜けた西洋野菜料理にも使えます。
里芋の皮を食べるというと「え?まさか」と思われるかもしれませんが、パリッと焼けた里芋の皮は一食に値する大地の味わいです。
すべてぺろっと食べるもよし、バランスをみて実だけを口に運んでもよし。
ぜひお試しいただきたいです。
里芋につけるソースにはパセリとビネガーを効かせたサルサヴェルデを添えます。
和食では里芋に柚子みそなどをつけて食べるので、塩気が強めで旨味たっぷりなサルサヴェルデは、味噌に匹敵する相性のはず。思った通りパリッと香ばしく焼けた皮と合わせても、とてもおいしく食べられます。 里芋と一緒に豚肉のローストをしっとりと焼き、サルサヴェルデのソースで食べてもよし、皮付きにんじんや蓮根なども一緒にローストして生ハムなどを添えて盛り合わせるのはいかがでしょうか?
さあ、まずは里芋のローストだけのシンプルな食べ方を覚えて、里芋の季節の到来を喜ぶ食卓を!
里芋 | 8個 |
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イタリアンパセリの葉 | 15g |
ゆで卵の黄身 | 1個分 |
アンチョビフィレ | 3枚 |
ケイパー | 大さじ1 |
にんにく | 小1片 |
白ワインビネガー | 大さじ2 |
オリーブオイル | 大さじ4 |
たわしなどで里芋の表面についている泥をこすり落としながらよく洗い、ザルに広げて直射日光が当たらない風通しの良い場所で半日干す。
オーブンを200度に予熱する。日陰干しした里芋の上下を切り落とし、耐熱皿にのせて予熱したオーブンで30~40分ほど焼く。
里芋をオーブンで焼いている間に、サルサヴェルデをつくる。イタリアンパセリは葉だけを摘んで、みじん切りする。アンチョビ、ケイパー、にんにくもすべてみじん切りして、ゆで卵の黄身は包丁の腹で形がなくなるまで潰す。刻んだ材料をすべてボウルに入れ、白ワインビネガー、オリーブオイルを加えて混ぜ合わせる。
オーブンに入れた里芋の中心部に竹串を刺し、スッと通れば取り出す。
キッチンバサミで里芋の真ん中の皮に少し切り込みを入れてからふたつに割って皿に盛り付ける。サルサヴェルデを添えてでき上がり!
――つづく。
文:植松良枝 写真:宮濱祐美子