青山有紀さんは、薬膳の資格を持つ料理家。特別な材料を使うわけではないけれど、彼女の料理はしっかり薬膳料理です。こんな見目麗しいサラダだって、秋におすすめしたい薬膳料理の一つ。では薬膳料理って、なんなのでしょう?
言葉の響きから想像すると、薬膳料理は朝鮮人参や苦い漢方食材を使った、おいしさより健康を追求した禁欲的な料理というイメージです。
確かに漢方食材は体に力を与えてくれるものが多いので、薬膳料理にもよく使われますが、ほとんど材料は、普通の旬の食材。四季dancyu「秋の台所。」の誌面で青山さんがつくってくれた秋の薬膳料理のメニューは、蒸しさつまいもとハムのサラダ、さんまと実山椒と生姜の炊き込みご飯、海鮮チヂミ、小松菜と明太子のナムル、牡蠣の磯部焼きなど、どれも身近な食材を使った、食欲をそそるおいしそうな料理ばかりです。
では、薬膳料理とはなんぞや。青山さんいわく、「季節や自分の体調に合わせた食材で料理をすること。普通に、おいしい旬の食材を食べること」だそうです。「医食同源というように、特別な食材を使わなくても普段食べている食材には体にとって薬となる効果があるんです」。
つまり旬のものを食べていればいいの?というと、誤りではないけれど、一つ大事なことがあります。食材にはそれぞれ薬となる効果があるので、それがなにかを知って、その効能をうまく取り入れられるように、バランスよく食材を組み合わせることが肝要なのです。食材の効果を覚えなきゃいけない、と思うとちょっとここで心のハードルが上がりますが、毎年、同じ季節は巡ってくるので、一度覚えればその知識は一生モノです。自分の体で弱いところがあれば、それに効く効能を持つ食材を知っておくだけで、普段から養生ができるようになります。個人的な体質のほか、季節によってなりやすい病気や症状に効く食材を食べ続けることで、日々の未病(病気を予防する)につながりますよ。
では、秋におすすめのレシピを誌面から一つご紹介しましょう。秋で一番大切なのは、乾燥を予防すること。夏が終わると肌がカサついたりする乾燥の自覚症状はあると思いますが、実は肌だけでなく、内臓など体の中も乾燥しやすくなります。特にデリケートな臓器である肺をいたわることが大切とされるので、肺を潤す効果のある食材を意識して取り入れましょう。
いちじく | 2個 |
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柿 | 1/2個 |
春菊 | 1/2束 |
生ハム | 1~2枚 |
オリーブオイル | 大さじ1 |
バルサミコ酢 | 小さじ1.5 |
塩 | 少々 |
黒胡椒 | 少々 |
いちじくは肺を潤す効果があり、粘膜や肌の乾燥を感じる前にぜひ取り入れて欲しい食材です。柿には体の余分な熱を取って喉を潤すほか、利尿作用、免疫力向上効果もあり。そして秋から旬を迎える春菊は、古くから漢方薬として使われるほど効能が多い食材です。独特の香りが気を巡らせ、ストレス緩和、整腸作用、生活習慣病予防などが期待できます。
春菊は手で食べやすく切り、茎は斜め薄切りにする。いちじく、柿、生ハムは食べやすい大きさに切る。
春菊をボウルに入れてオリーブオイルをかけ、手で和えてからバルサミコをまわしかける。さらに、塩少々をふって手早く混ぜる。
いちじくと柿を混ぜて器に盛り、生ハムを乗せて黒胡椒をかけて完成。
料理家。京都府京都市出身。自身の体調不良を食事で克服した経験などから、食の大切さを痛感。京おばんざいと韓国料理をベースにした飲食店「青家」のオーナーシェフ時代に、国際中医薬膳師を取得する。現在は故郷である京都に新アトリエオープン準備をしつつ、料理教室やPop Upレストラン、レシピ提供など、フィールドを広げて活動中。料理教室などの詳細は、インスタグラムにて更新しています。
写真:神林 環/野口健志