dancyu1991年8月号に掲載された「庄野真代さんが、チレ(唐辛子)の効いたメキシコ料理エンチラーダに挑戦」を紹介します。歌手の庄野真代さんがメキシコレストラン「ラ・カシータ」オーナーシェフの渡辺庸生さんからエンチラーダのつくり方を教わります。
1948年、兵庫県神戸市生まれ。京都外国語大学在学中、レストランでアルバイトをして料理に興味を持ち、大学を中退。食の世界へと進む。1974年にメキシコへ渡り「Hacienda De Los Morales」「Meson Del Caballo Bayo」で2年間修行。帰国後、1976年に「ラ・カシータ」を東京・渋谷公園通りにオープン。1987年に代官山の旧山手通りに店舗を移す。著書に『本格メキシコ料理の調理技術 タコス&サルサ』『魅惑のメキシコ料理―メキシコ料理の調理技術のすべて』(共に旭屋出版)がある。
1991年8月号に登場したのは、シンガーソングライターの庄野真代さん。
庄野さんは、1976年に『ジョーの肖像』でデビュー。1978年にリリースした『飛んでイスタンブール』は累計売上枚数60万枚を超え、その年の紅白歌合戦に出場しています。
1980年には歌手活動を休止し、世界一周の旅に出て、28ヶ国132の都市を渡り歩き、2年後に帰国した後は、歌手、作家として多方面で活躍しています。現在は歌手活動と共にNPO法人国境なき楽団の代表理事も務め、世界中で音楽を通して人の心を繋げる活動に尽力しています。
当時の誌面には、「ラ・カシータ」オーナーシェフの渡辺庸生さんから、メキシコの伝統料理であるエンチラーダを教わる姿が収められています。
庄野さんが「ラ・カシータ」で挑戦するエンチラーダは、トルティージャを使ったメキシコ料理。サルサ・ロハスというトマトと玉ねぎのピリッと辛いソースをかけて食べます。本場メキシコのトルティージャは、日本で定着しているポテトチップスのように固いものではなく、しんなりとした生地で、焼けたトウモロコシの粉が香ばしい味わいが特徴だそうです。
「ラ・カシータ」のトルティージャは、渡辺シェフお手製の生地伸ばし器を使って生地を伸ばし、仕上げは熱した鉄板で焼き上げますが、家庭ではフライパンで焼けば大丈夫。焼くときのポイントは、途中で膨らんできた生地をフライ返しで押さえること。生地の中の水蒸気を押し出すことで、2枚にはがれるような本格的な生地が焼き上がるそうです。
ソースとしてかけるエンチラーダには、アルボルという鷹の爪に良く似た唐辛子を使います。メキシコ料理では、30種類ぐらいの唐辛子を料理によって使い分けるのだとか。
アメリカ経由で日本に伝わったエンチラーダは、ソースをかけた後にオーブンで焼いていますが、本来は、トルティージャにソースをかければでき上がりなのだと、記事には綴られています。
トウモロコシの粉 | 300g |
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石灰 | 小さじ1/5 |
塩 | 小さじ1/3 |
水 | 320ml |
ボウルに入れたトウモロコシの粉に石灰と塩を加えて、水を少しずつ足しながら混ぜ合わせる。耳たぶくらいの固さになるまで生地を練る。
手のひらでピンポン玉よりやや小さめに生地を丸めて、クッキングシートを敷いた板で挟み、円形に伸ばす。
玉ねぎ | 1個 |
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にんにく | 4片 |
鷹の爪 | 20g |
トマト | 2個 |
サラダ油 | 小さじ1 |
玉ねぎは縦半分に切り、さらに横半分に切って、やや厚めのせん切りにする。にんにくは皮をむいて、薄切りにする。鷹の爪を水100ml(分量外)に浸しておく。トマトの皮を湯むきするために、大きめの鍋に湯を沸かし、ボウルに冷水を用意する。
鍋にサラダ油を入れて中火にかける。玉ねぎと、にんにくを鍋に入れ、玉ねぎから水分が出るまで炒める。鷹の爪を浸しておいた水と共に鍋に加え、玉ねぎに生っぽさが残っているうちに火を止める。
トマトのへたを取り除き、反対側に十文字に浅く切れ目を入れる。沸騰した湯にトマトを入れ、切れ目の皮がめくれ上がったら、湯から引き上げて冷水に移す。皮をきれいにむいたら、1cm角のザク切りにする。
ザク切りにしたトマトと1をミキサーに入れて、鷹の爪が粉々になるまで約6分回す。
3を鍋に移して、強火にかける。ふつふつと沸騰してきたら、弱火にしてアクを取りながら約30分煮込んで完成。
鶏もも肉 | 400g |
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玉ねぎ | 1個 |
にんじん | 適宜 |
セロリ | 適宜 |
ゴーダチーズ | 適宜 |
塩 | 小さじ1 |
ラード(分量外)を揚げ物用の鍋に入れて160度に温めておく。玉ねぎ1/2個をせん切りにして、ボウルに入れた水にさらしておく。
鍋に鶏もも肉、玉ねぎ1/2個、適当な大きさのにんじんとセロリを入れ、食材が浸る程度の水と塩小さじ1を加えてから中火にかける。鶏肉に完全に火が通るまで、アクを取りながら10分間ゆでる。ゆで上がった鶏肉は水気を取り、皮を取り除いてから、手で細かく裂く。
フライパンでトルティージャ生地を中火で焼く。生地の縁が黄色くなって、少しずつめくれてきたらひっくり返す。しばらくすると、生地がプクッと膨らんでくるので、もう一度裏返す。フライ返しで生地を軽く押して、中の水蒸気を抜くようにして焼き上げる。
焼き上がったトルティージャを160度に熱したラードにくぐらせる。トルティージャの上にほぐした鶏肉を20g乗せて、中身がはみ出さないようにしっかりと巻き込んで、三日月形にまとめる。
皿にトルティージャを3つ並べ、上からサルサ・ロハスをたっぷりとかける。ソースの上に粗くすりおろしたゴーダチーズと、水にさらしておいた玉ねぎを散らせばでき上がり。
完成したエンチラーダを食べる前に、メキシコの代表的な酒テキーラを使ったカクテル、マルガリータを渡辺さんが披露します!
テキーラ | 60ml |
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ライムジュース | 12ml |
ホワイトキュラソー | 8ml |
レモン | 2枚(輪切り) |
塩 | 適宜 |
写真:佐藤直也