スープをじっくりつくる、手軽につくる
「クラムチャウダー」を貝の旨味でじっくりつくる。

「クラムチャウダー」を貝の旨味でじっくりつくる。

16世紀のアメリカ東海岸で生まれた「クラムチャウダー」。当時、貴重な栄養源だった貝の旨味が、余すことなく溶け込んだクリームスープのクラシックレシピを紹介します。前日の夜に、貝の下ごしらえをしておくのがポイントですよ。

東海岸で生まれた貝のスープ。

クラムチャウダーのふるさとは、アメリカ北東部・ニューイングランド。
今回はそのルーツに想いを馳せつつ、貝の旨味が染み渡る濃厚なクラムチャウダーをつくってみましょう。

まずは少しだけ、歴史の復習を。
1620年、イギリスからメイフラワー号に乗ったピューリタン(清教徒)がアメリカ大陸北東部の海岸に上陸しました。ニューイングランドと名づけられたこの地に、イギリス人、フランス人、ドイツ人が続々と入植して、アメリカの植民地時代が始まりました。

「クラシックなレシピをつくってみると、料理の腕が上がって同じレシピでも解釈が変わってきます」と語る有賀薫さん。
「クラシックなレシピをつくってみると、料理の腕が上がって同じレシピでも解釈が変わってきます」と語る有賀薫さん。

アメリカに上陸した人々が海辺に住みつくようになり、海岸で獲れる貝と、大陸に持ち込んだ野菜を使って寒い冬をのりきるスープをつくるようになりました。クラムチャウダーの起源は、このあたりにあるのだと思います。

今では定番の具材でもあるじゃがいもが、北米に伝わったのは18世紀。当時はもっとシンプルに貝とその場にあった野菜を牛乳で煮込んだだけのものだったのかもしれません。
貝の入った熱々のスープは、厳寒の海辺の町で体を温めてくれるご馳走だったはずです。

クラムチャウダーには濃厚なクリーム味の「ニューイングランド風」と、軽やかなトマト味の「マンハッタン風」がある。
クラムチャウダーには濃厚なクリーム味の「ニューイングランド風」と、軽やかなトマト味の「マンハッタン風」がある。

ちなみに“チャウダー”とは、具だくさんのスープのことを指します。語源はChaudiere(ショーディエール)。大鍋という意味のフランス語と言われています。もともとは、フランス移民が持ち込んだ食文化なのかもしれませんね。
コーンチャウダー、チキンチャウダーと、中心になる具によってバリエーションはさまざまです。

ジャネット・フェラリイとルイーズ・フィッツァーという、ふたりのアメリカ人コラムニストが書いたレシピ本『スープに良い日』(フレックス・ファーム)には、アメリカではチャウダーをつくって食べることが娯楽であり、その食事会が社交の場であったという興味深い話が書いてあります。
1820年代には大勢の人がチャウダー・パーティーを楽しんだそうです。大きな鍋にたっぷりとつくったチャウダーを囲んで食べる風景は、日本の芋煮会を想わせるものがありますね。

クラシック・クラムチャウダーのつくり方

材料材料 (4人分)

あさり500g
にんにく1片
ベーコン30g
玉ねぎ1/2個
にんじん1/3本
じゃがいも1個
マッシュルーム50g
白ワイン45ml
サラダ油大さじ1
薄力粉22g
牛乳300ml
バター20g
適宜
胡椒適宜
パセリ適宜
クラッカー適宜
材料

下準備

容器に水(分量外)を張り、あさりを一晩浸して砂抜きをする。その際、水500mlに対して、塩大さじ1を加える。
にんにくはみじん切りにする。ベーコン、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもはすべて1㎝角に切る。マッシュルームは薄切りにする。

下準備

1 あさりを酒蒸しにする

砂抜きをしたあさりを鍋に入れ、白ワインと水200ml(分量外)を加え、蓋をして中火にかける。鍋から蒸気が噴き出してきたら火を止める。5分、余熱で蒸し煮にした後、ザルをかぶせたボウルにあけ、貝とスープをわける。

あさりを酒蒸しにする
あさりを酒蒸しにする

2 野菜を炒める

鍋にサラダ油とにんにくを入れて中火にかけ、ベーコン、玉ねぎを炒める。玉ねぎが半透明になったら、にんじん、じゃがいも、マッシュルームを加えてさらに炒める。野菜から水分が出たら、薄力粉を加えて粉気がなくなるまで炒める。

薄力粉が焦げつかないように、鍋肌からこそぎながら炒める。小麦粉が焦げつかないように、鍋肌からこそぎながら炒める。
薄力粉が焦げつかないように、鍋肌からこそぎながら炒める。

3 煮る

1のあさりのスープに水(分量外)を加えて400mlにして鍋に入れ、じゃがいもに箸が通るようになるまで約7分煮る。

煮る

4 味を整える

あさり、牛乳を加え、塩、胡椒で味を調節する。ひと煮立ちしたら、火を止める前にバターを加えてでき上がり。

あさりを最後に加えることで、身がふっくらとした状態で食べることができる。
あさりを最後に加えることで、身がふっくらとした状態で食べることができる。
牛乳を加えたら、脂肪分が分離しないようにあまり煮立たせない。
牛乳を加えたら、脂肪分が分離しないようにあまり煮立たせない。

クラムは二枚貝という意味なので、あさりや、ハマグリ、牡蠣が入っていてもクラムチャウダーになります。スープと貝の相性は抜群なので、いろんな貝を使ってつくってみると、それぞれ違ったおいしさに仕上がって楽しいですよ。

パセリと砕いたクラッカーを散らすと、彩りと食感が良くなります。
パセリと砕いたクラッカーを散らすと、彩りと食感が良くなります。

――明日(熱々の「クラムチャウダー」を10分でつくりましょう。)につづく。

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2018年09月28日発売 / 1,404円(税込)

文:有賀薫 写真:キッチンミノル

有賀 薫

有賀 薫 (スープ作家)

1964年、東京都生まれ。ライター業のかたわら、家族の朝食にスープをつくり始める。2011年より始めた朝のスープづくりは、約3000日にわたって続けている。2018年には『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』(文響社)が第5回料理本大賞入賞。スープの実験イベント"スープ・ラボ"はじめ、スープをテーマにしたイベントを多数主催。著書に『365日のめざましスープ』(SBクリエイティブ)、『スープ・レッスン』(プレジデント社)がある。