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陳家の蒸し餃子と水餃子。
陳家の蒸し餃子と水餃子。 陳家の蒸し餃子と水餃子。

陳家の蒸し餃子と水餃子。

dancyu1991年5月号「餃子の傑作」特集に掲載された「陳立人さん、陳家流の本場の蒸し餃子・水餃子の作り方を開陳」から蒸し餃子と水餃子のレシピを紹介します。

中国の餃子は、父と母の味。

dancyu初めての餃子特集で、本場中国のレシピを披露したのは、写真家の陳立人さん。『青玉獅子香炉』で直木賞を受賞した作家の陳舜臣さんのご子息です。
餃子は中国では純粋な家庭料理。日本でたとえると味噌汁のように馴染み深く、家ごとに味の特徴があると紹介されています。

大晦日には、家族全員で、自慢の餃子をつくり、きれいに並べたりするんです。

陳立人さん
「中国では餃子の皮は男子がつくります」と語る陳立人さん。

餃子というと、にんにくやにらなどの匂いの強烈な具材を思い浮かべますが、陳さんのレシピでは、クセの少ない中国野菜を使います。調味料には魚醤に、八角やにんにくを入れて、1ヶ月~2ヶ月ねかしてつくった“秘伝のタレ”を使ったりと、自由な味付けをしています。

野菜はだいたいキャベツかハクサイ。あとはチンゲンサイとかターサイなどの中国野菜を使うこともあります。ニンニクはみじん切りにして、食べるとき、タレの中に入れるのが中国では一般的ですね。

「中身の味は好みでいろいろな種類を楽しむのが良い。それよりも餃子づくりにおいて最も大切なことは、皮である。でき合いの皮と手づくりの皮とでは、食べたときの食感がまったく違う」と綴られています。

小麦粉には強力、中力、薄力の三つがあるんですが、いろいろ試した末、ウチでは中力粉を使うようにしました。

陳さんが紹介するレシピは、両手の甲でぐるぐると生地を回し、こしを出す本場のつくり方。
市販の皮では得られない食感と、ピュッと飛び出す熱いおつゆを味わえます。
焼き餃子が一般的な日本と違って、蒸し餃子か水餃子が主流の中国に倣って、陳さんが誌上で披露したレシピは“蒸し餃子”と“水餃子”です。

蒸し餃子&水餃子

材料材料 (100個分)

餃子の皮
・ 中力粉400g
・ ぬるま湯250ml
具A(50個分)
・ 豚バラ肉200g
・ キャベツ250g
・ チンゲンサイ200g
・ 紹興酒大さじ2
・ 甜麵醬小さじ2
・ ごま油小さじ1
・ 豆豉ソース小さじ1
・ 醤油適宜
・ 生姜の搾り汁適宜
・ 塩適宜
・ 胡椒適宜
具B(50個分)
・ 豚バラ肉200g
・ ユウサイシン200g
・ ターサイ200g
・ 当帰酒小さじ2
・ 甜麵醬小さじ2
・ ごま油小さじ1
・ 豆豉ソース小さじ1
・ 水大さじ1
・ 醤油適宜
・ 生姜の搾り汁適宜
・ 塩適宜
・ 胡椒適宜

1 粉を練り合わせる

中力粉を大きめのバットに広げ、ぬるま湯を少しづつ加えながら、全体を大きく混ぜ合わせる。ひとまとまりになるまでこねる。

粉を練り合わせる
ぬるま湯の替わりに中華スープで練ると、さらに味が良くなる。
粘りのある生地
水分が粉に吸収されて、まとまるともったりとした粘りのある生地ができ上がる。

2 生地を練る

まな板に打ち粉(分量外)をして、1を移したら、手前から生地を引き上げ、体重をかけて押し出すように練り込んでいく。ときどき、音を立てるようにまな板に打ち付ける。

辛抱強く練る
辛抱強く練ることで、生地にこしが出る。
生地をまな板に打ち付ける
生地をまな板に打ち付けることで、弾力も増す。

3 生地のこしを確かめる

2の中央に穴を開けて、左右に引っ張り、両手の甲にかけてリング状に回し広げる。十分に伸びるようになれば、生地に弾力となめらかさが出ている証拠。ひとまとめにして、ラップに包み20分~30分ねかせる。

生地のこしを確かめる
輪を回し広げ、糸を手繰るようにしてねじる。伸ばしてすぐに切れてしまうようなら、練りが足りていない証拠。

4 生地を切り分ける

生地の中央に穴を開けてリング状に広げ、打ち粉をまとわせながらまな板の上で細く伸ばしていく。直径2cm~3cmの太さにして1.5cm~2cmの長さに切る。

打ち粉はたっぷり
まな板にくっつかないように打ち粉はたっぷりと用意する。
生地を切り分ける
あめ玉をつくるような要領で、生地を切っていく。

5 生地の形を整える

4をひと切れずつ両手で丸め、平らになるように指で軽く押しつぶす。麺棒を使って、ふちが薄くなるように丸く伸ばす。乾燥しないように打ち粉をして、保存する。

生地を丸める
生地に触れる指やまな板に、打ち粉をたっぷりまぶしておくと、皮がくっつかない。
生地の形を整える
形はだいたい丸くなれば大丈夫。生地のふちが薄いと具材を包みやすくなる。

6 具Aをつくる

豚バラ肉を小さく切り分け、包丁でたたくようにして形がなくなるまで細かくする。キャベツとチンゲンサイはみじん切りにする。

細かくたたいた豚バラ肉
挽き肉ではなく、細かくたたいた豚バラ肉を使うと断然おいしい。
野菜はたっぷり
具に野菜はたっぷり加える。中国野菜はクセのない、旬のものを使うと良い。

7 具材を混ぜ合わせる

たたいた豚バラ肉をボウルに入れ、塩、胡椒を加えて混ぜる。みじん切りにしたキャベツ、チンゲンサイも加え、粘りが出てくるまで練り合わせる。紹興酒、甜麺醤、ごま油、豆豉ソース、醤油、生姜の搾り汁を加えて練り混ぜる。

調味料はひとつずつ入れる
調味料はひとつずつ入れ、よく練ってから次を入れるようにする。
陳家秘伝のタレ
「最後にこれ」と陳さんが加えたのは、陳家秘伝のタレ。醤油少々で代用するしかない。

8 具Bをつくる

豚バラ肉を細かく刻んで、包丁で形がなくなるまでたたく。ターサイ、ユウサイシンはみじん切りにする。

ターサイ
ターサイはアブラナ科の野菜で、白菜やチンゲンサイの仲間。葉は厚みがあり、茎は細くシャキシャキとした食感。
ユウサイシン
ユウサイシンは、日本でいう菜の花。細く刻んで具に混ぜることで、ほんのりとした苦味が加わる。

9 具材を混ぜ合わせる

たたいた豚バラ肉をボウルに入れ、塩、胡椒を加えて混ぜる。みじん切りにしたターサイ、ユウサイシンを加えて、粘りが出てくるまで練り合わせる。当帰酒、甜麺醤、ごま油、豆豉ソース、醤油、生姜の搾り汁をひとつずつ加えてよく練り混ぜる。最後に大さじ1の水を加えて混ぜる。

当帰酒
当帰酒とは、セリ科の漢方薬を漬けた焼酎。少し渋みがある味わいで、具に加えるとコクが出る。
水分を含ませる
水分を多く含ませることで、食べたときに皮の中からたくさんのスープが溢れ出す。

10 具を包む

小さじ1の具を皮の中心に乗せて、ふちに水(分量外)をつける。半分に折り、手前の皮にヒダをつくるように片側に寄せながら包んでとじる。打ち粉をしたバットの上に包んだ餃子を並べていく。

具を入れる
具を多く入れすぎると、包むときに中身がはみ出してくるので要注意。
皮を閉じる
皮を閉じたら、ひだの部分が外れないように指で押さえてしっかり止める。

11 蒸し餃子をつくる

中華鍋の半分まで水を入れ、強火で沸かす。中華鍋より直径3cm小さいせいろに間隔をあけて餃子を並べる。沸騰したら、蓋をした中華せいろを乗せる。強火で5分間蒸す。

蒸し餃子
蒸し餃子の皮は少し厚めが良い。白菜を敷いて蒸すと、皮に甘みが移ってさらにおいしくなる。

12 水餃子をつくる

鍋にたっぷりの湯を強火で沸かし、餃子を静かに入れる。餃子が浮いてきたら、中火にして1分間ゆでた後、軽く水気を切りながら皿に乗せる。

餃子が鍋底にくっつかないように
餃子が鍋底にくっつかないように気をつける。
ゆで餃子
湯にごま油を数滴たらすとくっつき防止になる。

教える人

陳立人

陳 立人

1952年、兵庫県生まれ。幼少の頃、父のカメラを借りて写真に興味を持つ。大学卒業後、出版社の写真部に勤務する。1973年からシルクロードをテーマに写真を撮り始め、1979年にフリーとななった後は、世界中のチャイナタウンを撮り始める。母と外祖母がつくる台南、高雄の家庭料理を小さいときから手伝い、料理づくりにも興味をもつ。

親子でつくる
本誌では最後に、こう綴られている。「親子でつくると格別だ」。

写真:佐藤直也