
肥満を予防、改善するのでは? と熱い研究が進められている「褐色脂肪細胞」。現段階で可能性が期待される褐色脂肪細胞の性質について、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
前回は、脂肪燃焼を促して熱を産生する褐色脂肪細胞が、将来の肥満の予防や解消に役立つ可能性があり、様々な研究が進められているというお話をしました。今回はその研究によってわかりつつある褐色脂肪細胞の性質について、お話しします。
褐色脂肪細胞は熱を生み出す働きを持ちます。体が寒い環境にあると、体温が下がりすぎないように熱を産生します。これをうまく利用して、体に寒さの刺激を与えることによって褐色脂肪細胞を活性化させ、脂肪を燃焼させることができるのではないか、ということが考えられます。
実際、寒冷刺激によって褐色脂肪細胞が活性化し、エネルギー消費が高まるというのは動物実験で分かっています。また、人を対象とした研究でも、一定時間の穏やかな寒冷刺激が褐色脂肪細胞の活性化に働くことが分かっています。ただ、それが長期的にどうかというのはまだ明らかになっていないですし、急激な冷えは体によくないので、そのあたりの兼ね合いも難しく、まだまだ研究には時間がかかるというのが現状です。

交感神経を刺激することも、褐色脂肪細胞の活性化につながるという報告があります。前回、褐色脂肪細胞は首や肩甲骨まわりに存在するとお話ししました。ときどき首や肩を回してみたりすることで、周囲の血流がよくなり、交感神経が活発になります。
パソコン作業などに集中すると肩や肩甲骨まわりが凝りかたまってしまいますから、おすすめの運動かと思います。ただし、首や肩を回すことでその近くにある褐色脂肪細胞が直接活性化された、という十分な根拠はないため、褐色脂肪細胞を意識して特定の部位を動かすというよりは、全身を使った運動を無理なく続けることがおすすめです。
交感神経を活発にするには、食べ物をよくかんで食べるというのも有効です。これは唾液の分泌を増やして胃腸の負担を軽くすることにもつながりますから、心がけておきましょう。
食事で褐色脂肪細胞を増やすことができるかどうかは今後の研究結果を待ちたいと思いますが、現時点で有効かもしれないといわれている食品成分がいくつかあります。
ひとつは唐辛子に含まれるカプサイシンです。脂肪の燃焼を進めてくれる成分ですし、たとえば発酵食品であるキムチなどを食べるのは、腸内環境を整える作用もあるので、体にはよいと思います。ただし、辛いものをとり過ぎれば、胃や腸に負担がかかります。大量にとればいいというものではないので、気をつけてください。
緑茶や抹茶に含まれるカテキン、コーヒーのカフェインも交感神経を刺激し、褐色脂肪細胞の活性化に関わるという研究が進められています。休憩時間に飲むなら、糖質を多く含むジュースなどではなく、コーヒーや緑茶にしておくとよいかもしれません。
また、魚の脂に含まれるDHAやEPAといった成分も、動物実験の結果などから注目されています。人間において実際に褐色脂肪細胞を活性化するのかどうかはまだわかりませんが、血液さらさら効果や脳機能の活性化など、体にいい働きをする成分ですから、食事に組み込んでおくとよいと思います。DHAやEPAは青背の魚、あじやいわし、さば、さんまなどに多く含まれます。
褐色脂肪細胞は、肥満の予防や解消に有効である可能性があります。うまく味方につければ、健康で暮らすための後押しをしてくれると大きな期待が寄せられ、研究が進められています。私も糖尿病や肥満の専門医として、今後も注目していこうと思います。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock