長崎の美味は、ちゃんぽんだけにあらず! 魚、野菜、肉と、豊かな自然が育む良食材が目白押しの長崎県。まだ見ぬご馳走を求めて、長崎県の3つのまちを旅しよう。最後に訪れたのは佐世保市。旅の目的にしたい、ちょっと変わった“肉い”お店を発見。好奇心旺盛なシェフがマニアックなジビエを食べさせてくれる「ビストロさやま」と、月の前半だけ営業をする、料理がやたらおいしい立ち呑み酒場「pool」。独特な佐世保ムードを感じる、長崎旅の最終章だ。
軍港都市として発展した歴史を持つ佐世保市は、異国情緒が漂うまちの雰囲気が魅力。港町なので魚がおいしいのはもちろんのこと、レモンステーキや佐世保バーガーといった、アメリカと日本が融合した肉の食文化もユニークだ。
山を越えた隣の平戸市との境に、ジビエ好きが足繁く通うビストロがある。「ビストロさやま」は、大阪のフレンチで17年間修業した佐山和貴シェフの店。昼も夜もおまかせフルコースで、地場食材をふんだんに使った本格的なフレンチが味わえる。


周りに飲食店は数軒というロケーション。都会のレストランで戦ってきた佐山さんにとってこの場所は「圧倒的に自由」だったという。その自由さが、佐山さんの料理人としての好奇心を予想外の方向に開眼させる。
「ここなら自分の好きに料理ができるし、こんな辺鄙な場所まで来て、普通の料理が出てきても面白くない。そう思って日々やっていたら、いつの間にかジビエにのめり込んでいたんです」
そう、佐山さんがたどり着いたのは“ジビエ”。平戸の山では猪がとれるので、ロティにして地場産の野菜を添えた美しいメインディッシュに仕上げる。臭みはなく、じっくり火入れした肉はとても柔らかい。脂身は融点が低いので、口の中でまろやかに溶けていく。

秋にかけては海外からもジビエを仕入れ、ほかでは食べられない料理を披露。
「上級編は熟成させた雷鳥。スコットランドから輸入して、羽付きで2カ月ほど熟成させるんです。かなりパンチがありますが、常連さんは喜んでくれました」
まだまだ食べてみたいジビエがあると目を輝かせる佐山さん。マニアックなシェフの探求は続きそうだ。


「佐世保の人はオープンで、立ち呑みが上手なんです。観光の方でもすぐに仲良くなれますよ」。賑わうアーケード街からすぐの場所にある「pool」は、月の前半だけ開く立ち呑み店。店主のゆうきさんが腕をふるう料理と、心地よい会話を求めて、食感度の高い人々が集う新世代の酒場だ。ちなみに月の後半は、パートナーの故郷である湘南で暮らしているという。そんな二拠点生活を実践する飲食店というのも、なんだか新しいなぁと思う。

料理はどれも、アテというには贅沢なほど手が込んでいる。じっくり煮込んだ豚の角煮を塊のままのせた魯肉飯、皮からつくる焼き餃子に手づくりのソーセージ。ラー油やかつお節オイルなどの調味料もほぼ自家製だからか、どれも旨味が優しく感じる。「自分にしかできない料理を生み出したくて」と、回鍋肉に新じゃがを使うなどのセンスにも拍手。飲み物は立ち呑みらしく瓶ビールもいいし、果物を使った自家製サワーが季節で変わるのがまた楽しい。


週末は15時から営業しているので、店の前の公園で遊ぶ子どもたちの声をBGMに昼呑みするのも最高だ。「プールに浮かぶ感覚で、心地よい時間を過ごしてほしい」とゆうきさん。さっそくサワーを片手に、フレンドリーな常連さんの仲間入りをさせてもらおうかな。

異国文化が入り交じり、さまざまな表情を見せてくれる長崎。今回はそんな長崎県各地の深部に根づく、“土着”の食と人に触れる旅だったように思う。プリプリの白身魚に雲仙の野菜、陽気な佐世保の人たちとの会話がもう恋しくなってきた。
一般社団法人長崎県観光連盟
※お店の最新営業情報は、各店舗へお問い合わせください
ビストロさやま
【住所】長崎県佐世保市鹿町町下歌ヶ浦免989
【電話番号】0956‐77‐5858
【営業時間】11:30~21:00(閉店)
【定休日】月曜
pool
【住所】長崎県佐世保市島瀬町10‐19
【電話番号】なし
【営業時間】17:00~22:00(L.O.)、土日は15:00~
【定休日】毎月16日~月末
文:井上麻子 撮影:大塚淑子