私の行きつけ~住む町の旨い店案内~
【知りたい、軽井沢エリアの行きつけ⑤】軽井沢で生まれた想像の上をいく唯一無二の焼鳥ワールド『鳥嵩』~アマゾンカカオ・太田哲雄さんの紹介

【知りたい、軽井沢エリアの行きつけ⑤】軽井沢で生まれた想像の上をいく唯一無二の焼鳥ワールド『鳥嵩』~アマゾンカカオ・太田哲雄さんの紹介

その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2026年夏号では、「ラ・カーサ・ディ・テツオ オオタ」や「マードレ」を営み、アマゾンカカオを使った料理やスイーツが大人気の太田哲雄さんに軽井沢エリアのとっておきを案内してもらいました。

目印はドアの横の小さな表札だけ。雰囲気は隠れ家ながら、予約は半年先まで一杯という人気店が、軽井沢駅から車で7分ほどの「鳥嵩」だ。開店したのは2020年だが、今や軽井沢の別荘族御用達。この店を目指してわざわざ東京などから訪れる人たちも多いという。

表札
店頭のこの表札が目印。

店主の土屋慶典さんは修業経験をもたず、ホテルの和食から赤提灯の居酒屋まで幅広く経験するなか、独学で焼鳥の技術を培ってきた。
「地元の軽井沢で腕を磨いた土屋さんは、いわば “地産地消”の職人。東京に出なくても成功できる素晴らしいロールモデルです」と太田さん。
その情熱の根底にあるのは焼鳥への愛なのかと思いきや、土屋さん曰く、「実は鶏肉は苦手なんです。だからこそ、自分がおいしいと思える調理法を探究し続けています」

土屋さん
土屋さんは軽井沢の隣、御代田町生まれ。「東京での修業経験がないことをコンプレックスに感じた時期もありますが、今ではむしろよかったと思っています」
カウンター越しに歓談する太田さん(左)と土屋さん
カウンター越しに歓談する太田さん(左)と土屋さん。仕事の話や軽井沢界隈の情報交換をよくするとか。

コースで繰り出される焼き鳥は紛れもなく日々の探究の成果だ。「一品一品に驚きがあり、創意工夫を感じます」と太田さんも太鼓判を押す。
たとえば、鶏の皮はあえて焼かずに香味野菜と茹でて臭みや脂っこさを除去。薄切りの大根とともにポン酢で食べれば、ピュアな甘味が広がる。土屋さんおすすめの信州の地酒 “山三”との相性もバッチリ。
甲斐路軍鶏を使ったもも肉の焼き方も意表をつく。1枚を丸めて串を打ち、時々休ませながらじっくり炭火にあてるから、噛む度に香ばしさとジューシーさが渦を巻く。

つくねのだし
コースは1万5,000円。序盤に登場する “つくねのだし”は、甲斐路軍鶏のもも肉とむね肉を包丁で叩いてふわふわのつくねに。合わせる野菜は季節で替え、この日は茗荷を加えて清涼感を演出。
鶏の皮と冷やさないトマト
右の“鶏の皮”はいわゆる鶏皮ポン酢ながら上品な味わい。左は口直しの“冷やさないトマト”と茹でブロッコリー。どちらも松本産で風味が鮮烈だ。日本酒はワイングラスで提供され、幻の酒米といわれる“金紋錦”で醸した “山三 純米吟醸”はグラス1,200円。
もも肉
もも肉は塊で焼くのが基本。皮はパリッと香ばしく、内側の身はしっとりジューシーに仕上がる。正肉は甲斐路軍鶏だが、内臓は八ヶ岳名水赤鶏のものを選んでいる。
もも肉
もも肉は切り分けて器に盛り、添えるのは山葵でなくおろし生姜。爽やかな風味が濃厚な肉の味わいを引き締める。

「コースの〆は鶏だし茶漬けが定番ですが、そこに至るまでいかに食べ疲れせずにおいしく召し上がっていただくかを考えて緩急をつけています」と土屋さん。モットーは「次の日も食べたくなる味」。予約が殺到するのも当然だろう。

案内する人

「ラ・カーサ・ディ・テツオ・オオタ」オーナーシェフ 太田哲雄さん

「ラ・カーサ・ディ・テツオ オオタ」オーナーシェフ 太田哲雄さん

長野県白馬村生まれ。イタリア、スペイン、ペルーで通算10年以上の経験を積む。2019年から軽井沢に拠点を構え、レストランのほか食堂兼売店「マードレ」を運営。アマゾンで出合ったカカオの普及にも力を注ぎ、自身でも多彩なスイーツを開発。

店舗情報店舗情報

鳥嵩
  • 【住所】長野県北佐久郡軽井沢町大字長倉628-5
  • 【電話番号】0267-42-1666
  • 【営業時間】 17:00~、19:00~(各時間一斉スタート・完全予約制)
  • 【定休日】水曜 不定休あり
  • 【アクセス】JR「軽井沢駅」より車7分
文:上島寿子 写真:鈴木泰介
上島 寿子

上島 寿子 (文筆家)

東京生まれで、銀座の泰明小学校出身。実家がビフテキ屋だったため、幼少期から食い意地は人一倍。洋酒メーカー、週刊誌の記者を経て、フリーに。dancyuをはじめ雑誌を中心に執筆しています。