
その町の住人が長く通う店こそ、愛される名店に違いない。dancyu2026年夏号では、軽井沢で「ラ・カーサ・ディ・テツオ・オオタ」「マードレ」を営み、アマゾンカカオを使った料理やスイーツが大人気の太田哲雄さんに軽井沢エリアのとっておきを案内してもらいました。
最寄り駅はしなの鉄道中軽井沢駅で、軽井沢駅からも車で10分ほど。中山道沿いに立つ「ゆうすげ」はこの界隈では珍しい川魚料理の専門店だ。


暖簾をくぐれば、入り口にはいくつもの水槽がズラリ。岩魚などの川魚がひらひら舞い踊り、その一角は水族館さながらだ。
「調理前の姿を見てほしくてつくりました。お子さんが喜んでくれますね」と話すのは三代目店主の荻原良寿さん。

それらの活け魚は刺身、なめろう、塩焼きと食べ方も選べるが、太田さんのイチ押しは小ぶりでスリムな川魚、はやのから揚げ丼。パリッと揚げたはやに甘辛いタレが絡まり白飯と相性抜群だ。
「僕が生まれた白馬でははやを食べる習慣はなく、長野県内でも食文化が違うことを実感しました」と太田さん。
ちなみに、一品料理のはやのから揚げには塩味もあり、繊細な白身をシンプルに味わえる。これもまたオツな味で、酒のつまみにも絶好だ。



太田さんのもう一つのオススメには味噌で煮る鯉こくもある。
「これもまた佐久地方の郷土料理。正月や冠婚葬祭に欠かせないそうで、このあたりのスーパーでは鯉の切り身が普通に並んでいます。特にこの店の鯉こくはふっくらとしておいしいんです」(太田さん)。

こうした川魚料理のほかに手打ち蕎麦も人気があり、原料の蕎麦の実は裏の畑で自家栽培。地域に根付く食文化を守り継ぐ姿勢に太田さんは熱いエールを送っている。


長野県白馬村生まれ。イタリア、スペイン、ペルーで通算10年以上の経験を積む。2019年から軽井沢に拠点を構え、レストランのほか食堂兼売店「マードレ」を運営。アマゾンで出合ったカカオの普及にも力を注ぎ、自身でも多彩なスイーツを開発。
文:上島寿子 写真:鈴木泰介