
人間ドックや健康診断でコレステロール値が高いとか、中性脂肪が高いと指摘されたことはありませんか?全然太っていないのになぜ……?と思った人もいるかもしれません。今回は、脂質異常症とはどんな状態なのか、放っておくとどんなリスクがあるかなどについて、食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
「脂質異常症」とは、2007年までは「高脂血症」と呼ばれていました。血液中の脂質は「コレステロール」「中性脂肪」「リン脂質」「遊離脂肪酸」の4つがありますが、中でも血液中の「コレステロール」のうちのLDL(悪玉コレステロール)や、「中性脂肪」が基準値より高い、もしくはHDL(善玉コレステロール)が低い状態のことを脂質異常症といいます(基準値については「受けっぱなしにしていない?健康診断②食いしん坊が特に注目したほうがいい項目はどれ?」を参照)。
「コレステロール」は主に肝臓で合成される脂質で、本来は細胞膜の材料になったり、ホルモンや胆汁酸の合成にも関わったりするなど、体にとって欠かせない物質です。一方、「中性脂肪」は体を動かすエネルギー源として使われたり、体温を保つ役割も担っています。
ちなみに肥満とは「中性脂肪」が血液中ではなく、体の脂肪組織に過剰に蓄積した状態のことで、BMI(体重kg ÷ 身長m²)が25以上になると肥満と判定されます。肥満は脂質異常症の原因の一つですが、肥満だからといって必ずしも脂質異常症であるとは限りませんし、逆に脂質異常症だからといって、肥満であるとも限りません。
「コレステロール」は水に溶けないため、そのままでは血液中を移動できません。そこでHDL、LDLというリポたんぱくに包まれて血液中を流れていきます。LDL(Low-Density Lipoprotein)は、肝臓に蓄えられた「コレステロール」を全身に運ぶ働きを持ち、HDL(High-Density Lipoprotein)は余分な「コレステロール」を肝臓に戻す役割を担います。「コレステロール」が荷物で、LDLは配送業者、HDLは回収業者というイメージです。
血液中にLDLや「中性脂肪」が増え過ぎたり、HDLが不足したりすると、血管に余分な「コレステロール」が蓄積し、動脈硬化を引き起こします。LDLが悪玉コレステロール、HDLが善玉コレステロールと呼ばれるのはそのため。LDL:HDL(LH比)が2.0以上になると危険水域です。
動脈硬化が進行すると、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など、命をおびやかす病気を招く可能性があります。しかし動脈硬化には自覚症状はありません。健診などで脂質異常症を指摘された場合は、放置せずに生活習慣を見直したり、必要に応じて医療機関を受診したりすることが大切です。
脂質異常症はLDLや「中性脂肪」が高い状態か、HDLが低い状態のどちらか、とお話ししましたが、実際にはいくつかのタイプがあります。例えばLDLと「中性脂肪」両方が高いタイプ、LDLのみが高いタイプ、「中性脂肪」のみが高いタイプ、あるいはこれらにHDLが低いのが組み合わさっているタイプなどです。自分がどのタイプに当てはまるのかを把握しておくことは、適切な対策を講じるうえで大切なことです。健康診断などの結果に書いてあるので、AだBだの判定だけでなく、どの数値が問題なのかもしっかりチェックしてみてください。
脂質異常症になってしまう原因はいくつかありますが、まず大きく関わるのが食習慣です。脂っこいものの食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎ、甘いもののとり過ぎなどが、LDLや「中性脂肪」の増加につながります。またHDLは、運動不足や内臓脂肪が多いタイプの肥満で低下しやすいことが知られています。女性は閉経後に女性ホルモンの分泌が低下することで、LDL値が上がりやすくなります。

一方で、やせているのに脂質異常症を指摘される人もいます。その背景には、遺伝的な要因が関係している場合があります。もともとLDLを作りやすい、HDLを作りにくい体質を受け継いでいたり、食生活をはじめとする生活環境が似ていることが多く、同じような病気になりやすいという傾向もあります。
中には生まれつきLDLが血液中に多くたまってしまう「家族性高コレステロール血症」という病気もあります。ちょっと「コレステロール」が高いといわれたけれど、やせているから、まだ若いから安心と思わず、家族歴にも目を向けることが大切です。実は私も家系的に高コレステロールの親戚が多く、自分にもそうした体質があるかもしれないため、日頃から気をつけるようにしています。
次回は脂質異常症の予防、改善に役立つ食生活や運動習慣など、具体的な対策についてお話ししたいと思います。

ジョスリン糖尿病センター リサーチフェロー。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業、2023年東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock