
前回に引き続きテーマは「疲労」。疲労のメカニズムや回復のヒントに続き、疲労に負けないための栄養素や成分、食材、食生活のポイントなどを食いしん坊倶楽部メンバーで医師の三浦雅臣さんにうかがいました。
疲労回復のもうひとつの対処法は食事です。前述の通り、脂質や糖質を多くとり過ぎたり、食生活が不規則になったりすると、疲労感につながりやすくなります。食べ過ぎ、飲み過ぎに注意しながら、日々の食事を整えていきましょう。注目すべき栄養素は、主にエネルギー代謝に関わるビタミンB群です。中でもビタミンB1、B2、B6、B12の4つが重要な働きをします。
「ビタミンB1」は、エネルギー源として不可欠な糖質の代謝に関わります。アルコールを飲む人は特にビタミンB1の消費が多いので、ふだんからしっかりとるようにしましょう。豚肉、うなぎ、たらこ、納豆、豆腐、玄米、ナッツ類などに多く含まれます。にんにくやにら、ねぎ類に含まれるアリシンという成分と合わせると、働きがよりアップします。
「ビタミンB2」は糖質、脂質、たんぱく質の代謝に必要な栄養素。エネルギー産生や細胞の再生を助けます。レバーや牛乳など乳製品、卵、アーモンドに多く含まれます。
「ビタミンB6」はたんぱく質の代謝に関わり、筋肉や血液の生成をサポートします。まぐろ、かつお、レバー、鶏肉や、バナナ、赤パプリカ、にんにく、ピスタチオなどに豊富です。
「ビタミンB12」は、血液の赤血球の生成を助け、貧血を防ぐ働きをします。貝類やレバー、肉、魚、卵、乳製品に豊富な栄養素で、のりなどにも多く含まれます。
これらビタミンB群は水溶性なので、まとめてたくさんとるのではなく、こまめにとることで、より疲労回復効果が期待できます。頭でわかっていても習慣化が必要ということです。ぜひ日常的に心がけてください。
「ビタミンC」も疲労回復に効果的です。前回、体内に活性酸素が増加することが疲労の一因になるとお話ししましたが、ビタミンCは抗酸化作用を持ち、活性酸素の害から身を守る働きをします。また鉄の吸収やコラーゲン合成にも関わり、エネルギーを体内で生産するためのクエン酸回路にも重要な役割を果たします。「クエン酸」そのものも一緒にとるとより効果的です。ビタミンCはピーマンやブロッコリーなどの野菜やキウイフルーツ、柑橘類などの果物に多く含まれます。クエン酸はレモン、酢、梅干しなどすっぱい食品に豊富に含まれています。
「ファイトケミカル」(「10年後の自分に差をつける!第7の栄養素」も大事です。紫外線や害虫、乾燥などから身を守るために植物自らがつくり出した機能性成分の総称で、抗酸化作用などが期待されるものもあります。日頃からファイトケミカル豊富な野菜を幅広く取り入れることを意識するとよいでしょう。

「タウリン」はアミノ酸の一種で、体内の解毒作用を担う肝臓の機能をサポートして疲労の解消に働く可能性があります。栄養ドリンクなどの含有成分として聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。近年は、細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアとの関係も研究されており、疲労対策の観点からも注目されています。牡蠣、たこ、いか、ほたてなどの魚介類に多く含まれています。
このほか筋肉や神経の働きに関わる「カリウム」も疲労回復に働く栄養素のひとつです。野菜に多く含まれるので、ふだんから野菜をしっかりとることを心がけましょう。野菜はカリウムのみならず、前述のファイトケミカルを多く含みますので、野菜たっぷりの食事が疲れにくい体作りにつながるといえます。青汁や糖類を多く含まない野菜ジュースなども手軽でおすすめです。
ここにあげたような栄養素がとれて、疲労回復に効く理想的な食事をお教えしましょう。それは「生姜焼き定食」です。せん切りキャベツを添えた豚肉の生姜焼きに、ごはんと野菜入りのみそ汁を組み合わせると、基本となる3大栄養素、糖質・脂質・たんぱく質に加えて、ビタミンB1(豚肉)、アリシン(玉ねぎ)、ビタミンC(せん切りキャベツ)、ファイトケミカル(野菜)がとれるうえ、生姜の保温効果で血流もよくなります。1週間の疲れが出てくる金曜日のランチなどにいかがでしょうか。
私は疲労を感じたら、好きな牛タンと野菜をたっぷり食べて、のんびりと入浴し、早めに寝るようにしています。
その日の疲れはできるだけその日のうちに解消して、すっきりとした目覚めとともに1日を始めていただきたいと思います。

東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科 助教。2014年東京大学医学部医学科卒業。2021年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了・卒業。糖尿病や肥満症を専門に、最近では老化や睡眠、味覚についても探究を深める日々。
編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock