日本全国出張ひとり飲み
【福岡・博多の名物・かわ焼を友にひとり飲み】焼酎がぐんぐん進む!絶品・福岡流串焼きの数々

【福岡・博多の名物・かわ焼を友にひとり飲み】焼酎がぐんぐん進む!絶品・福岡流串焼きの数々

うまかもんがあふれる福岡において、独創的な鶏皮をはじめ旅してこそ味わえる串焼きを、ひとり飲みでも気ままに楽しめるのが「博多かわ屋」だ。焼酎のお湯割りが最高に映えるおいしさを、一本、また一本、さらに一本と、幸せを噛みしめながら満喫したい。

鶏皮のイメージが愉快にくつがえる、手間暇かけた「かわ焼」

串に鶏皮をぐるぐると巻いた独特のスタイル串焼きは最近、福岡の名物として少しずつ全国的に広まっている美味の一つ。その元祖の流れを汲むのが、福岡市に複数店舗を構える「博多かわ屋」だ。博多流「かわ焼」と呼ばれる稀なる串焼きは1968年、地元民から愛された今はなき名店「焼とり権兵衛」の主人が考案した逸品だ。その流儀を受け継いで独立し、さらなる工夫と手間を重ねて「かわ屋」を誕生させたのが、創業者の京谷満幸さん。鶏の首のなかでも、薄くやわらかな喉の付け根にあたる部分の皮のみを使用し、串に巻きつけた後、秘伝のたれに漬けては炙る作業が、なんと6日間にわたり繰り返されるのだ。その間、余分な脂は落ち、旨味は凝縮されていくという。

訪れたのは旗艦店の一つ、飲食店が建ち並ぶ福岡有数の繁華街に位置する警固(けご)店。開店早々から賑わう店内でカウンターに陣取り、まずはビールとかわ焼を注文する。タレがしっかりと染みた感がある焦げ茶色の一本は、細長い皮がみちっと一体化。噛みしめれば表面はカリッ、なかはムッチリ、モッチリ、そしてトロリとろけた。ほんのり甘辛のタレがきいた旨味がじゅわあああああっと口中にあふれるものの、味わいはやさしく後味は軽い。ああ、小躍りしたくなる旨さですよ。そして、強く焼酎を呼びますよ。というわけで、「芋のお湯割り、お願いします!」。

かわ焼
幾度もの炙りと熟成を経て、引き締まった様相の「かわ焼」。席につくと無料のキャベツが出されるのは福岡スタイル。
店長の坂本稔さん
手を休めることなく焼き台に向かう店長の坂本稔さん。手前は出番を待つ大量の「かわ焼」。
焼き鳥
「ダルム」のほか福岡県の焼鳥店では、大学の医学部生が使うドイツ語が巷に根づいている。焼鳥の間にネギではなく玉ネギを挟むのも福岡流。奥は、「あまおうサワー」。
ささみのしぎ焼
ぷっくりした姿を見ただけで、おいしさが伝わってくる「ささみのしぎ焼」は、ふっくらレアな焼き加減。1皿2本。自家製のわさび醤油ダレが繊細な旨さを引き立てる。
左からコリコリした食感が小気味よいナンコツ、ぷりっと弾むぼんじり、ゼリーのごとくとろけるすじ
左からコリコリした食感が小気味よいナンコツ、ぷりっと弾むぼんじり、ゼリーのごとくとろけるすじ(豚のアキレス腱)。

料理も酒も、財布が涙ぐむお手頃価格

長い焼き台にはずらりと串が並び、テーブル席からはかわ焼20本、30本という大量のオーダーも聞こえて悶々。いくらでもいけるよね、これは。でも、ほかの串も食べたい!ひとり飲みにとって串焼きは、少しずつあれこれ食べられるのがなによりだもの。しかも基本、1本からオーダーできるのがうれしい。砂ずり(砂肝)、ハツ、ダルム(豚の小腸)、スジなど順ぐりメニューを追っていけば、口中ジューシー祭り。しかも串焼きの多くは、1本150円少々のお値段。福岡の懐の深さに泣けてくる。

ビール、芋麦米焼酎、ハイボール、ワインなどなど、多数そろう酒類もまた、200円台~500円前後が中心と、古き良き時代に遡ったかのような呑兵衛感涙の設定。加えて例えば焼酎のお湯割りなら、「お湯と焼酎の割合はゴーゴー(5対5)がデフォルト」と太っ腹対応なので、しっかりふくよかに風味が感じられる。旨味が立つ串焼きとの相性も抜群だ。福岡ならねえと興味を引かれた「あまおうサワー」も、おや、まあ、とてもラブリーなおいしさでハートを射ぬかれた。程よい甘酸っぱさが、肉や脂の旨味と絶妙に合うではないか。焼き台に向かって黙々と仕事をこなしつつ、ときにはカウンターからの注文や電話にも対応する、店長・坂本稔さんのマルチタスクぶりも、惚れ惚れしながら酒が進む眺めだ。

酢もつ
あっさり風味の「酢もつ」は、ショウガがさわやかに全体をまとめる。
店長
豚のあたりめ
豚肉を乾燥させて炙った、豚のあたりめは写真の「マヨ正油」に加え、プレーン、チーズも選べる。
ムネチー
「ムネチー」は鶏むね肉を秘技の米麹効果でしっとり。薄く儚い姿ながら、炙ったチーズの支えもあって旨さしっかり。後を引く。
にゅうめん
濃厚スープが腹にやさしくしみる「にゅうめん」には、自家製のラー油をたっぷりと。

串焼き同様にそそられる個性豊かな一品料理

串焼きも酒もがんがん進むが、一品料理もまた逃せない美味ばかり。「酢もつ」は手早く出てくるので、串が焼けるまでのアテにうってつけだ。福岡の居酒屋のレギュラー選手ながら店により個性は異なり、この店の酢もつはすっきり軽快に夜の幕開けを彩ってくれる。そぎ切りにした鶏むね肉に低温調理をほどこした、「ムネチー」はレアな食感とそのやさしい旨さに唸り、「豚のあたりめ」なる一品はひと切れだけでも濃密な旨味があふれて、なくなるのが切ないあまりちまちまつまむ。ともに、ちびちびのみ進めるには、最高の友となった。もつ鍋、馬刺し、豚足などなどなど、ほかにも魅惑のメニューは多々ありなので、胃袋に自信のある向きは前進あるのみ。串焼き街道を邁進したい方なら、次回のお楽しみに。

締めには鶏のスープがサービスで出されるが、腹に余裕があれば旨味の海であるそのスープを使った「にゅうめん」をぜひとも。細かく切った「かわ焼」を混ぜ合わせた自家製ラー油をたらりとすれば、これでもう1杯飲めちゃうんじゃない?と煩悩の嵐に包まれるだろう。

白金店が1999年、警固店は2009年に開店し、「博多かわ屋」は現在、福岡市内で6店舗を展開。いずれも海外からの観光客も注目する人気店なので、幸せな夜を確実にするなら予約が無難だ。ふらり訪ねて行く場合、行列ができている場合もあるが、それでも待つ甲斐あり。そして間違いなく、「かわ焼」のとりこになり、深い旨味の記憶にひたりながら次の福岡出張を夢見るはずだ。

外観

店舗情報店舗情報

博多かわ屋 警固店
  • 【住所】福岡県福岡市中央区警固2-16-10 吉武ビル1階
  • 【電話番号】092-741-4567
  • 【営業時間】17:00~23:00(L.O.)
  • 【定休日】水曜
  • 【アクセス】地下鉄「赤阪駅」より徒歩約15分

公式サイト
https://hakatakawaya.com

文:山内史子 写真:松隈直樹

山内 史子

山内 史子

青森県出身、紀行作家。一升一斗の「いっとちゃん」と呼ばれる超のんべえ。全都道府県、世界40ヵ国以上を巡り、昼は各地の史跡や物語の舞台に立つ自分に、夜は酒に酔うのが生きがい。著書に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)、「青森ほろ酔い旅」(ものの芽舎)など。