
食い倒れの街・大阪でふくらむおいしい料理と日本酒への思いを、懐深く受けとめてくれる魅惑の一軒を大阪駅&梅田駅の近くに発見!「鮨とSAKE 茶屋町Marry」を知れば、次の出張が待ち遠しくなる。
数多の飲食店がひしめきあう大阪駅・梅田駅周辺は、ビジネス、プライベートに関わらず、食いしん坊の旅人の心を沸き立たせる場所だ。しかしながら地下街を含めたそこは、巨大な難解ラビリンス。地元の方ですらときに戸惑うと聞くが、実際、グーグル先生の導きに頼っても、目的地になかなかたどり着けないことがある。心に余裕があれば迷うのも愉快だが、時間が限られている場合は焦って歩いて汗をかきまくり、しまいには涙目になる可能性も。その点、今回ご紹介する「鮨とSAKE 茶屋町 Marry」は、梅田駅茶屋町口から数分な上、阪急電鉄高架下の飲食店街「茶屋町あるこ」の一角に位置するため、初めてでも見つけるのは容易で、もしもの場合でも道を尋ねやすいのだ。
すっきり洒落たしつらいの店内はカウンター席が半分近くを占め、ひとり飲みにはうってつけ。席に腰を下ろしてメニューをめくれば………あら、大変。店名にある「鮨」はもちろん主役なのだが、お造り、天ぷら、焼き物、数々の酒肴などなどなどなど、魚介類を中心とした料理は実に多彩で心が千々に乱れる。さらには日本酒も、地域、味わいともにバラエティに富んでいる。加えて別紙の「旬のおすすめ」やワインリストを手に取れば、ここまで無事にたどり着けても注文迷子になるのは確実。まずは喉を潤しながら、メニューとじっくり語り合う必要がある。幸せな幕開けだ。








看板メニューである鮨の握りはおまかせもできるが、約25種類あるなかから1貫ずつ頼めるので、最初に数貫つまむのもおすすめだ。小ぶりのシャリには赤酢を使い、大阪中央市場から直送される新鮮な魚介類の旨味を引き立てつつ、穏やかなコクを感じる名残はやわらか。そして、酒を呼ぶ。鮨と並ぶ花形、串揚げならぬ「天ぷら串」も美味揃い。たとえば「とり天」には柚子胡椒ソースがかかっていたり、「もちチーズ天」には明太子がのっていたりと、ひと工夫もふた工夫もアレンジが施され、それが酒飲みの心をくすぐるのだ。
箸休めにと頼んだ卵焼きはいい塩梅の甘味が立ち、これまた酒に手が伸びる。そば店の「天ぬき」を彷彿とさせる、酢飯ナシの巻物「あて巻き」の一つである「いかうめしそ巻」は、食べた瞬間に笑顔満開になった。むっちりとしたイカの質感と甘味を梅とシソが抱く、すてきな三位一体。これだけでも酒との相性は抜群だが、海苔で巻くことによりチームの団結力と風味力が増し、ああ、もう、たまらんですよ。
というわけでなにを食べても店名にある「SAKE」が進むのだが、その選択がまた悩ましい。地元大阪の「片野桜」、京都の「月の桂」、滋賀の「七本槍」、奈良の「篠峯」といった関西勢をはじめ、一般には流通していないこの店の限定酒を含めた全国各地の銘酒が30種類。さらには季節の酒も多数。メニューには味の指南が記されているものの、決められない場合は女将の三宅真理さんやスタッフが相談し、背中を押してもらうといいだろう。飲み比べセットを頼み、酒の日本地図を一気に広げる術もある。



酒のグラスを重ねれば食欲はさらに刺激されるが、ほとんどの料理1000円足らずで、ワンコイン前後も多いのがうれしい。これならお財布も安心……と思いつつ、ほろ酔いモードになると気は大きくなる。1500円超とメニューのなかでは群を抜いて値の張る、「蝦夷あわびあて 肝ソース 舎利玉添えて」に引き寄せられた。結果から言えば、財布の紐を緩めてよかった〜!!!!あわびのやわらかな身はくにゅっと弾み、濃密な肝をからめれば、ふふふっ、日本酒に合わないわけない。旨いよっ。赤酢のきいたシャリが添えてある配慮にも感服。「これ、頼んだらアカンやつ〜」と、にわかの関西弁がこぼれたほどご機嫌になった。
なににしても魚介類をはじめとする素材の質の高さ、盛り付けの美しさ、心配りが行き届いた丁寧な仕事、そして旨し酒の数々と、随所で職人技と店の真摯な姿勢が感じられ、お手軽価格ながらハレの日気分にひたれたのが印象深かった。店内は活気にあふれ、そのざわめきに溶け込めるのが心地良いが、表にもカウンター席が設けられており、街の賑わいを耳にしながらゆるゆる盃を傾けるのもいいだろう。
そんな幸せが待つのは、夜だけでではない。丼ものや太っ腹価格のランチ限定セットが人気の昼どきもメニューは変わらず、料理や酒を楽しめるのだ。さくっと一杯……いや、都合が許されるなら、ディープにおかわりを重ねてほしい。とはいえ、肝臓も胃袋も一つきり。店を後にすれば、美味美酒の記憶とともに出会いを逸した品々が思い出されるだろう。
筆者の経験を語れば、あて巻の「胡麻ぶり巻」のイメージテイストが口中に幾度となくふくらんで悶々。さらにはウニ、イクラ、天使の海老、ズワイガニ、そして「季節のプリンネタ」がのった「通風巻」なる品も、日々を経るほどに気になっている。贅沢プリン体チーム。キケンだけど、魅惑にあふれるではないか。新大阪駅までは大阪駅、梅田駅からともに電車で5分とかからず、名残の一杯を滞在のぎりぎりまで楽しめるロケーション。茶屋町Marryでの食い倒れを、まずは目指したいと切望している。

公式サイト
https://sushitosake-chayamachimarry.foodre.jp
文:山内史子 写真:松隈直樹