公邸料理人を訪ねて
在ルーマニア日本大使館で働くシェフの休日。現役の公邸料理人に密着したYouTube動画第2弾リリース

在ルーマニア日本大使館で働くシェフの休日。現役の公邸料理人に密着したYouTube動画第2弾リリース

世界を舞台に料理で日本の外交を支える「公邸料理人」。今回は、なんと、在ルーマニア日本国大使公邸で活躍する深瀬健さんのリアルな暮らしに密着。後編では、深瀬さんが異国の地で休日をどう過ごしているのかをレポートしています。ブカレストで暮らす楽しさ、また、苦労を赤裸々に伺いました。

休日は、緑豊かな街で深呼吸。異国では暮らしすべてが経験値に

在ルーマニア日本国大使公邸で働く公邸料理人、深瀬健さんを訪ねた動画の第二弾が公開されました。第一弾では、国を代表する「食の外交官」として、円滑な外交をサポートするために厨房で真剣に調理に向き合う姿を追いましたが、今回のテーマは深瀬さんのオフタイム。他にはない環境で働く公邸料理人は、一体どのような休日を過ごしているのかを追うことで、改めてこの職業の魅力に迫ります。

前日の会食を無事に終え、張り詰めた緊張感から解放された、週末のとある日。
深瀬さんの日常的な休日の過ごし方が知りたいというお願いに応えていただき、dancyu編集部の杉下春子がその一日に同行しました。待ち合わせ場所は、ブカレストの中心部にそびえ立つ「国民の館(議事堂宮殿)」です。この建物は、世界で最も重い超巨大建造物で、予約をすれば一般の内部見学も可能な有名なブカレストの観光地の一つです。

現れた深瀬さんと共に、情緒あふれるオールドタウン(旧市街)へと歩きました。古くから市民に愛される教会や、色鮮やかな民芸品が並ぶ土産物屋、そして深瀬さんがプライベートで大切にしているお気に入りの場所などを巡りながら、なかなか聞くことのできない公邸料理人としての働き方について語っていただきました。

ブカレストのシンボル、国民の館(議事堂宮殿)。ルーマニア議会の議事堂であり、一部観光施設となっている。
ルーマニアに来てよく散歩するようになったという深瀬さん。緑が心地よい。
在ルーマニア日本国大使館広報文化担当書記官、三又拓武さん。ルーマニア語が堪能な、深瀬さんの頼りになる味方。
旧市街にある大主教教会。ルーマニア正教の教会で、市民の憩いの場。
旧市街の土産物屋には、ルーマニアの名産が並んでいる。

日本とは勝手が違うため、ルーマニアでの仕事は常に想定外の連続だといいます。しかし、深瀬さんはそれを苦労とはとらえていないそう。「どこにいても想定外のことが起こるのは当然のこと」と、しなやかに受け止めている様子。その語り口から、第一弾に登場された片江駐ルーマニア日本国特命全権大使をはじめ、現場を共にする現地スタッフたちへの信頼が伺えます。トラブルに直面しても、皆で協力すれば乗り越えられる、そんな自信が垣間見えました。

話をしながら街中を抜けて、深瀬さんがよく休日に訪れるというヘラストラウ公園へ。この公園の隣には、ルーマニア統一などを記念して建設され、1936年に現在の姿になった凱旋門が建っています。公園の売店で、クラティテと呼ばれるルーマニアのクレープを購入してランチ代わりにしながら、さらにルーマニアでの生活について話を聞いていきました。普段の休日は、緑豊かな公園でのんびりすることが多いそうです。ブカレストの市内は、ともかく緑が豊か。中心部にも広い公園がたくさんあるほか、街並みにも大きな街路樹が至るところに緑を広げています。歩いているだけで十分リラックスできる、素敵な街です。
また、日本のレストランと比べてオンとオフがはっきりとしていて、休みがとりやすいのも公邸料理人の魅力。少し長めに休みを取って、近隣国などに行くことができます。深瀬さんもこの取材の数日前にロンドンへ行ったばかりだったそう。次の目的地はドイツの予定、いずれはパリに、と目を輝かせていました。

ルーマニアのクレープ、クラティテ。中はチョコレートがたっぷり塗られている。生地も厚くて食べごたえ満点。
ヘラストラウ公園の中の湖の前で一休み。日本にいた頃は、休日はゲームをするなどで過ごしていたが、ルーマニアに来てから散歩が増えたそう。

現地スタッフは赴任してくるシェフの頼もしい先輩

頼もしい厨房のスタッフたち。右からアンドレイさん、ティティアナさん、アニショアラさん。ゲストの前ではプロの顔になるが、厨房の中では皆ほがらかで楽しそうに仕事をしていたのが印象的。

今回の動画では、大使館での会食を共に支える3人の現地スタッフ(バトラー)へのインタビューも敢行しています。登場するのはティティアナさん、アンドレイさん、そしてアニショアラさんの3名です。大使館勤務歴28年という大ベテランのティティアナさんは、深瀬シェフの印象について「非常に勉強熱心である」と、高く評価していました。また、これまでに9人もの公邸料理人と共に仕事をしてきたというアンドレイさんも、数々のプロを見てきた経験から深瀬シェフに厚い信頼を寄せています。そしてアニショアラさんも、チームの座長としての深瀬さんの細やかな気配りに満足している様子が伝わってきました。
現地スタッフとのやり取りは英語です。深瀬さんは日常会話については英語が話せますが、ずば抜けて語学に堪能であるということよりも、きちんと思いやりを持って働くことからチームワークが生まれていると感じました。

余談ですが、アンドレイさんは「一つだけ深瀬さんに不満がある」とのこと。それは「絶品のチョコレートケーキを、毎日焼いてくれないこと!」。実はルーマニアは世界一のチョコレート消費国と言われるほど、チョコレートを愛する国。アンドレイさんも例に漏れず大好きなのですが、とりわけ深瀬シェフがつくるチョコレートケーキは彼の好物なのだとか。そんな微笑ましい不満が出るほど、良好な関係なのだと伺えるエピソードでした。

ブカレスト1のビアレストランで、「ノローク(乾杯)!」

さて、夜は、旧市街にある、1879年創業のレストラン「Caru' cu bere(カル・ク・ベレ)へ。「ビールの荷車」という意味です。建物は美しいネオゴシック建築。中はお客さんでにぎわい、民族衣装を着た店員さんが大きなビアジョッキを次々と運んでいきます。
ルーマニア人はビールが大好き。「URSUS(ウルスス)」「SILVA(シルバ)」といった銘柄が有名です。ワインも特産品なのですが、日本への流通がそこまで多くないので日本ではなかなか見かけることはまだ少ないかもしれません。ツイカ、パリンカといった蒸留酒も名産です。

店には深瀬さんの友人が集まっていました。深瀬さんのように日本から駐在で来ている人、ルーマニアに住んでいる日本人、また現地の友人やそのパートナーなどさまざまです。ルーマニアの名物、サルマーレ、ミチ、ママリーガなどの料理を頂いていると、店はダンスタイムに。「カル・ク・ベレ」では、ルーマニアの伝統的なダンスを踊るダンサーのショーとともに、お客さんも輪に入って踊ります。たくさん食べて飲んで笑って、素敵な休日の様子を見ることができました。

ルーマニア1有名なレストラン「カル・ク・ベレ」の1階。美しい内装にうっとりする。
店名にあるようにビールが名物。店内醸造のビールを頼む客がほとんど。
ビールでノローク!
定期的に始まるルーマニアの伝統的なダンス。ここで踊れるダンサーは一握りのエリートだという。
盛り上がってくると、ダンサーが店内を回り、お客さんの手をとってフロアへ。この日は深瀬さんが指名されて一緒にダンス!
挽き肉を成形して焼いたミチ。皮の無いソーセージのようなもので、マスタードをたっぷりつけていただく。
こちらは、サルマーレ。ロールキャベツに近いがキャベツは酢漬けにしたものを使うので酸味がある。
チョラン・ク・ヴァルザ。豚のすね肉をカリッと焼き上げたもの。ルーマニア人は豚肉をよく食べる。

ラストは凱旋門の上に登り、ブカレストの街並みを眺めながら深瀬さんの今後のキャリアについて伺いました。公邸料理人は今年から制度が改正され、原則の任期が2年になり、大幅に待遇の改善がされました。2年のルーマニア生活の後は、そこから延長するのか(1年ごとの延長が可能)、また、別の異国の地を探すのか。深瀬さん自身の今後の結論はまだでていませんが、最後に公邸料理人という仕事について、どう思うか伺いました。
「公邸料理人はとてもやりがいのある仕事です。日々、楽しみながら新しい挑戦ができます。料理人であれば選択肢の一つとして、知らないのはもったいない。若い方にもぜひ知っていただき、トライして欲しいと思います」

インタビューの舞台となっている素敵なブカレストの街並み、料理など美しい映像も見ごたえあり。ぜひ動画でご確認ください。

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文:杉下春子(dancyu編集部) 写真:近藤俊介