
2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、いつもとはちょっと違った角度から「燗酒」の世界を深堀り。自由な感覚で新しい燗酒の楽しさを体験させてくれる、4人の若手燗つけ師をフィーチャーしました。3人目は経堂「つきや酒店/つきやのsumi」の柱 知香良さんです。

1997年生まれ。経堂「つきや酒店」の四代目。酒屋を営む傍ら、家族で角打ち「つきやのsumi」に立つ。元体育教師というユニークな経歴も。
世田谷区経堂の「つきや酒店」は、昭和5(1930)年創業の老舗酒販店だ。併設する角打ち「つきやのsumi」でお燗番を務めるのが、3人目の柱知香良さんである。地元住民や近くにある東京農大の学生など、およそ8割の客がご近所さんで、週末ともなれば昼から席が埋まり、柱さんに燗酒のオーダーがポンポン入る。どんなに忙しくてもこの笑顔(↑上の写真を見て!)。日本酒のポテンシャルが上がる燗つけが楽しくて仕方ないのだ。
根っからの凝り性。気がつけば、ちろりや酒器など燗つけ道具が増えていた。「この酒はどの道具を使い、何度まで上げたら美味しさを引き出せるだろうか」。細やかに検証して分析し、不明な点があれば文献や論文に当たる。
それを平易な言葉で表現し、客と共有できるようにするのが柱さんの考えるお燗番の仕事だ。もし気になる一本を見つけたら、柱さんに相談しながら道具や温度違いで徹底的に飲み比べを。60mlから燗をつけてくれるから、そんな実験めいたことも可能なのだ。
テーブルの上が空の徳利や猪口で埋まる頃には、飲んで学んだ充実感に満たされる。「ここは燗酒の寺子屋ですね」。そんな感想をこぼすと「僕、元教師なんです」と柱さん。近くにあったら、毎晩のように“通学”したい。(ラスト、Vol.4に続きます!)

酒を食材に、道具を調理法にたとえるのは髙崎さん譲り。銅のちろりは“焼き料理”。熱伝導が早くキレのよい味に。熱伝導が遅いガラスは“蒸し料理”。味わいを変えずきれいに温まる。酒の味がまろやかになる錫は“煮込み”。

文:佐々木香織 撮影:阪本勇