
2026年日本酒dancyu「出会えてよかった!心ふるえる酒」特集では、dancyuを長年支えてくれている酒のプロや愛飲家の皆様に、個人的な推し酒をジャンルレスに聞いてみました。いずれも「ぜひ飲んでみて!」と推薦者が熱く語ってしまうチャーミングな酒ばかり。今回は、武笠陽一さん(「坂戸屋」店主)の偏愛酒、「丹澤山 麗峰」をご紹介します。
日本酒ファン、なかでもお燗を愛する“燗酒党”の中で知る人ぞ知る、特別な一本が「丹澤山 麗峰(れいほう)」です。燗酒に対する価値観そのものを変える力があると言ってもいい。
蔵元である「川西屋酒造店」露木雅一さんとの出会いは25年前。当時、私は家業の酒販店「坂戸屋」を継いだばかりで知識も経験も乏しく、最初は何度も門前払いをされましてね(笑)。それでも必死に食らいつき、薫陶を受ける中で、次第に燗酒の面白さ、奥深さにドハマりしていきました。

露木さんと小田原の寿司店で、燗つけした「丹澤山 麗峰」を酌み交わしたときの衝撃は、今も忘れられません。潮汁のだしの旨味と見事に溶け合う。だしに合うということは、すなわち和食全般に合うということ。華やかな冷酒は単体で楽しむには魅力的ですが、料理を選ぶこともあります。対して、「丹澤山 麗峰」はどんな料理にも寄り
添い、旨味の相乗効果で全体を底上げしてくれる。そして、最後は見事なまでにすっと引く。これこそが食中酒だと悟りました。
適温は55℃が目安ですが、自分好みの温度を探るのもお燗の醍醐味。私はちろりで60℃まで上げ、そこに小さじ1ほどの“冷や”を差します。体温になじんで心地よい酔いと香りが広がりますよ。お燗の魅力を知る入り口としても、これ以上ない一本です。(談)


構成:鈴木美和 撮影:阪本 勇