
東京から東海道線で揺られること一時間余り。歴史ある温泉地・湯河原がいま、おいしいもの×旅に加えて、「ロカボ」をキーワードに盛り上がっている。山や海に囲まれ、豊かな自然があるからこそ味わえる、“引き算”のおいしさを編集部員が体験しました。
「いま、湯河原では“ロカボ”でおいしく楽しめるのでぜひ来てください!おいしくて健康的な一日を過ごせますよ」と熱く語るのは東京と湯河原で二拠点生活を送るフードナビゲーターの柴田香織さん。そこで、編集部員のオリシキデが湯河原で朝食、昼食、夕食とおまけに間食までを体験してきました!
ロカボとは、極端に糖質を制限するのではなく、
湯河原にいる間は、常に“リブレ2”という血糖値測定器を装着。リアルタイムで自身の血糖値の変化を見られる機械で(恐ろしい)、湯河原での食事ではどのように変わったかをリポートします。

湯河原でもひときわ長い歴史を誇る名旅館、「石葉」。ロカボ仕様の朝食は、正直まったく“低糖質である”という制約を感じなかった。旅館の朝食らしい端正なおかずが並び、炊き立てご飯の香りがふわりと立ち上る。
ただ、料理長である森田仁さんに話を聞いてみると数々の工夫がしっかりと垣間見えた。
たとえば、ご飯は普段使用している甘味の強いミルキークイーンの白米の替わりにコシヒカリの玄米にしていることで、食物繊維の量や咀嚼する回数を増やすことができ、血糖上昇を抑えている。牛の時雨煮は煮汁に使用する砂糖をラカントで代用。ラカントは、ウリ科植物の羅漢果(らかんか)から抽出された天然甘味料で、糖質を抑えて甘味はそのまま。ロカボには最適な調味料だ。
「寒い時期の定番」だという湯豆腐は、昆布でだしをひいて、さらに醤油をだしで少し割ることで塩味を抑えている。




続いて出てきたのは、だし巻き、焼き物、炊き合わせ。
だし巻きは地元の山惠園という養鶏場のたまごを使用し、鰹だしによる香りと旨味が朝の胃袋に心地よい。焼き物は地元の真鶴や伊豆、伊東で獲れる旬な魚を地元の鮮魚店で干物にしてもらい、食べやすいように骨は一切残していない。炊き合わせはひろすと大根。地元の人気豆腐店「十二庵」の豆腐を使用したひろすは、煮干しのだしで味の輪郭をはっきりさせている。
いずれも地元食材の持ち味を生かし、味つけを抑えることでむしろそのよさを引き出している。満足感の高さは、だしを主軸にした引き算の調理法から。単なる低糖質では得られないだろう充足感が広がっていた。
通常、食べた食材の血糖値は30分から一時間後に反映される。普段は食前と食中で30mg/dLほど上昇していたところ、アプリで血糖値を見てみると、「石葉」の朝食では食中もほとんど上昇せず、一時間後には平時と同じぐらいまで下がっていた。早速ロカボの凄さを実感した。

今や言葉としてすっかり定着したロカボ。ただ低糖質である、こと以上の魅力はどのように出していくのか。
「ロカボだけじゃない、付加価値がこれからは大事になってくると思います。ここでしかないロカボ、みたいなものが体験として意味が出てくる。湯河原でいえば、歴史ある街並みに代表する日本的情緒、泉質の優れた温泉、そして地の食材ですね」
代表の小松秀彦さんは、そう話しながら続けた。「この旅館でいえば、さらに静謐と贅沢、という一見真逆のような組み合わせが魅力にもつながってくるんじゃないかと思います。食でいえば、シンプルで料理を引き立てる器と料理の細部をケチらないこと。この両方が揃うから、人は惹きつけられるんだと思います」。
常に変わらずそこに在り続ける“石”と、季節によって移ろい変わりゆく“葉”という相反するものの調和に由来する「石葉」らしい、他では味わうことのできない朝食だった。
撮影:阪本 勇 文:折敷出 陸(編集部)