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【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】知っておきたい食中毒のこと①食中毒の原因1位は、とにかく痛い「アニサキス」!2位は神経疾患につながる恐れありの「カンピロバクター」

【救急集中治療医は見た!食いしん坊の思わぬ落とし穴】知っておきたい食中毒のこと①食中毒の原因1位は、とにかく痛い「アニサキス」!2位は神経疾患につながる恐れありの「カンピロバクター」

食いしん坊倶楽部メンバーで医師の平松玄太郎さんが、食いしん坊ゆえに気をつけたい健康について指南してくれるこの連載。今回のテーマは「食中毒」です。まずは発生数の多い2つの食中毒から解説します。

魚介に寄生して悪さをする「アニサキス」

いかがお過ごしでしょうか。今回のテーマは「食中毒」です。

厚生労働省のデータによると食中毒発生数の1位はアニサキス、2位がカンピロバクター、3位がノロウイルス、そして4位は自然毒になります。

「アニサキス」はみなさん一度は耳にしたことがあるでしょう。実際にご自身や身近な人がアニサキスによる食中毒にかかってしまったという方も少なくないのではないでしょうか。

アニサキスとは、サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなど、魚介類の主に内臓に寄生する寄生虫です。寄生した魚介類が死ぬと、内臓から身の部分に移動してきます。

運悪く生きた状態のアニサキスを飲み込んでしまい、胃に喰らいつかれてしまうと激しい胃痛と悪心・嘔吐が生じます。腸まで流れてそこで喰らいつかれると下っ腹の激痛や糞詰まりなどを起こし、最悪の場合は腸に穴が開くことも!症状は数日で自然に治まりますが、我慢できないほど症状が強い場合は内視鏡で直接取り除くしかありません。

奥様の愛称を大声で叫ぶ芸風で有名なあの芸人さんは、ロケで鮭イクラ丼を食べた日の夜に胃痛を自覚し、胃の内視鏡をしたところ何と8匹も見つかって、除去に10時間も要したそうです。

またアニサキスに対してアレルギーを呈する場合もあり、アナフィラキシーの原因アレルゲンとしては、食物、薬物に続いて多いとされています。魚介類を食べたあとにアレルギー症状が出た際は、魚自体のアレルギー、前回お話したヒスタミン中毒、そしてアニサキスアレルギーを鑑別に挙げる必要があります。

酢締めや塩漬けは無効!刺身なら冷凍を

どの魚に多いかは年によって異なりますが、予防としては、できるだけ魚の内臓を早急に取り除くことに尽きます。身の部分は-20℃で24時間以上冷凍するか、70℃以上もしくは60℃の場合は1分加熱するとアニサキスがいたとしても死滅します。刺身として食べる場合は、目視で虫体がいないことを確認する必要があります。目視も、予防策となるので、少しだけ注意してみてください。

YouTubeやX等で検索をかけると、スーパーで売っている刺身パックの中で虫体がウニョウニョ動いている動画がいくらでも出てきます。魚をさばくことを生業にされている方は日常的に見かけるようで、血合いの部分の処理などは特に注意されるそうですが、自分で釣った魚を自らさばいて食べる一般の方は、慣れていないと注意が必要です。酢じめや塩漬けは無効で、それならばよく噛んで食べることの方が有効という声はあります。

鶏肉

生の鶏肉は要注意!「カンピロバクター」

次に「カンピロバクター」です。一般の方にとってはアニサキスやノロウイルスほど認知度は高くないかもしれませんが、ある理由により、医療従事者にとっては忘れてはいけない細菌のひとつです。その理由は最後に述べたいと思います。

カンピロバクターの原因食材は、ひとことで言うと「生の鶏肉」です。少し話が脱線しますが、日本における生肉提供のルールを“ざっくり”まとめたいと思います。

日本の生肉提供のルールをおさらい

「牛肉」に関しては、内臓を除けば肉の内部には菌はおらず、肉の表面についた付着菌のみ対応すればよいという考え方のため、レアやブルー(ほぼ生の状態)のステーキやローストビーフの提供が許されています。また特定の衛生基準を満たしていれば、ユッケや牛刺しといった生肉料理も安全に食べることができます。

「豚肉」に関しては、肉の内部にも細菌・ウイルス・寄生虫など様々な病原体が含まれているため、新鮮度やブランドに関わらず生肉は内臓を含め一切提供することができず、肉の中心部分まで75℃で1分間以上、あるいは63℃で30分間以上の加熱が必要です。昨今“レアとんかつ”が流行っていますが、肉全体がピンク色のものは上記の加熱が示唆されますが、外側が白く内側が赤いものに関しては加熱不足が疑わしいので、そのお店とは少し距離を置いた方がいいかもしれません。

「鶏肉」に関しては、法的なルールが存在していないのが現状なのですが、厚生労働科学研究報告によると食肉処理後の鶏肉の67.4%において、冒頭お伝えしたカンピロバクターの汚染が見つかっているため、豚肉と同レベルの加熱が推奨されています。ご家庭でも低温調理器が使われるようになり、私も持っていますが、牛肉に比べて豚・鶏肉では調理温度が高めに設定されているのはこのためです。飲食店などで鶏ささ身肉が湯引きされた状態で提供されているのが散見されますが、当然ながら内部は加熱されていないのでリスクとしては変わりません。ちなみに完全に生の状態の鶏刺しを食す文化がある鹿児島県と宮崎県では、独自の厳しいガイドラインが設けられているため、そこで食す分には多少のリスクヘッジに資するかもしれません。

「馬肉」に関しては、馬の体温が他の家畜よりも高いことから病原体が繁殖しにくいとされ、レバーを含めた生肉提供が認められています。

1/1000の確率で「ギラン・バレー症候群」の原因に

さてカンピロバクターに話を戻しますが、感染してしまうと2~5日と少し間が空いてから腹痛と下痢と発熱が生じ、1週間ほど続きます。プライベートな話を紹介させていただきますが、インドで生水を飲んでも平気だった私が人生で唯一食べ物に当たったと思われたのが鶏肉でした。思い当たる節があったのと発症のタイミングおよび症状の期間からカンピロバクターを疑いました。この菌の特徴としてカモメが翼を広げたような形に見えるというのがあるので、自分の便を顕微鏡で見てみたのですが残念ながら菌体を見つけることはできませんでした。しかし近所の多国籍料理店で食べた半生の鶏肉を強く強く疑いました。食べた自分が悪いのですが……。

もう一つの大きな特徴は、これに感染すると1/1000の確率でギラン・バレー症候群という手足や顔の麻痺および呼吸困難などをきたす神経疾患を合併してしまうことです。このインパクトがあまりに大きいため、医療従事者には印象に残る病原体な訳です。こんな怖い話もあるので、余計なお世話かもしれませんが、 バーベキューなどをはじめ生肉を取り扱うときは、二次汚染を防ぐため、必ず専用のトングを使うようにしましょう。そしてきちんと加熱さえすれば、問題ないのです。

次回は、食中毒発生数3位のノロウイルスについて解説したいと思います。

教える人

平松 玄太郎 先生

埼玉医科大学卒業、同大学総合医療センター 高度救命救急センター所属、同センターにて災害医長を担当。救急・集中治療専門医としてER・ICU・災害医療を生業とする傍ら、訪問診療・産業医・レースドクターなどにも従事。

編集:出口雅美(maegamiroom) 文:久保木 薫 写真:Shutterstock

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